女性が十代で結婚してしまうのが珍しくなかった明治時代、
当時の女学校には、
「卒業面 (そつぎょうづら)」と云う言葉があったのだそうだ。
当時の校長先生の話。
「美人相の娘は、たいてい卒業までに嫁に貰われてしまいますが、
無事卒業してしまふ女は、
醜婦に限られたやうな有様だったので、醜い顔の事を卒業面と言ったものでした。」
なぜ、こんなことを書いたかと云うと、
ベストセラー小説「モンスター」を読んで、
この言葉が紹介されている十年程前に出た本書を思い出したから。
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「美人論」 井上章一著
明治期の「美人罪悪論」から、
昨今では「すべての女性は美しい」と転回する、美人・不美人をめぐるレトリック。
この背景にある倫理の変容を徹底調査。
「ブス」はタブーなのか。
面喰いを愚かとさげすむ正義の正体とは。
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順序が逆になったが、
その面白さから、「読み出したら止められなくなる」こちらもご紹介。
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「モンスター」 百田尚樹著
田舎町で瀟洒なレストランを経営し、町中の男を虜にする絶世の美女・未帆。
彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。
周囲からバケモノ呼ばわりされ友達もできない悲惨な日々。
追われるように移り住んだ「美女の街」東京。
そこで整形手術に目覚めた未帆は、
手術を繰り返して完璧な美人に変身を遂げるが・・・。
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「美人論」からもうひとつ紹介してみる。
そう言へば、昔の新聞記事は、女性のことをかならず美人と書いたものだ。
女の水死体と書くところを、かならず美人の死体発見なんて書いていた。
少年のころ、私は若い女性が、
「死んであたしも美人になろうかしら」と言ふのを聞いたことがある。
自分みたいな不美人でも、
水死かなんかすれば新聞で美人にしてもらへるといふ意味である。