漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

美人論とモンスター

2012年01月24日 | 

女性が十代で結婚してしまうのが珍しくなかった明治時代、
当時の女学校には、
「卒業面 (そつぎょうづら)」と云う言葉があったのだそうだ。

当時の校長先生の話。

「美人相の娘は、たいてい卒業までに嫁に貰われてしまいますが、
 無事卒業してしまふ女は、
 醜婦に限られたやうな有様だったので、醜い顔の事を卒業面と言ったものでした。」

なぜ、こんなことを書いたかと云うと、

ベストセラー小説「モンスター」を読んで、
この言葉が紹介されている十年程前に出た本書を思い出したから。
   
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「美人論」 井上章一著

 明治期の「美人罪悪論」から、
 昨今では「すべての女性は美しい」と転回する、美人・不美人をめぐるレトリック。

 この背景にある倫理の変容を徹底調査。

 「ブス」はタブーなのか。
 面喰いを愚かとさげすむ正義の正体とは。

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順序が逆になったが、
その面白さから、「読み出したら止められなくなる」こちらもご紹介。

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「モンスター」 百田尚樹著

 田舎町で瀟洒なレストランを経営し、町中の男を虜にする絶世の美女・未帆。

 彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。
 周囲からバケモノ呼ばわりされ友達もできない悲惨な日々。

 追われるように移り住んだ「美女の街」東京。

 そこで整形手術に目覚めた未帆は、
 手術を繰り返して完璧な美人に変身を遂げるが・・・。

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「美人論」からもうひとつ紹介してみる。

 そう言へば、昔の新聞記事は、女性のことをかならず美人と書いたものだ。
 女の水死体と書くところを、かならず美人の死体発見なんて書いていた。

 少年のころ、私は若い女性が、
 「死んであたしも美人になろうかしら」と言ふのを聞いたことがある。

 自分みたいな不美人でも、
 水死かなんかすれば新聞で美人にしてもらへるといふ意味である。





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