漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

山のあなた

2016年05月13日 | ものがたり

抜けるような青さの広がった今朝の空、
はるか北の方を見やると、霞をまとった六甲の山々が藍色に連なっている。

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   「山のあなた」

「幸せは 遠い遠い山の向こうにあるんだよ」と 誰かが言った。
それを聞いて私は友を誘い、山の向こうを目指した。
やっとのことに山を越え、最初の村で出会った里人に、
「幸せはどこにありますか」と尋ねたら、その人が教えてくれた。
「幸せはもっともっと向こう、あの山の彼方さ」と。
私はがっかりしてしまい、とぼとぼと帰って来た、涙ながらに。

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落語家の三遊亭圓歌さんがまだ歌奴を名乗っていたころ、
新作「授業中」の中、

ズーズー弁の先生が赴任してきて、
吃音の子に「山のあなた」の詩を読めとあてる。

「つぎ、その後ろ」
「や、や、やまやま、山のあなあなあな」
「狸だね、なんで穴ばっかり探すんだ」
「先生、そいつはダメだよ、吃りです」
「いいからその先さ 読め」
「・・・あなあな、あな、・・・あなた、もう寝ましょうよ」
「寝ましょうよだけ 何でスッと出るんだ、このヤロ」

このネタが大うけ、全国的にヒットした。
子供の頃の私は、まず歌奴でこれを知り、成長してから詩の方を知った。

元々はカール・ブッセと云うドイツ人の詩で、上田敏の訳だそうです。
では以下に、その文学性の香り高く高尚な訳詞を。


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 【山のあなた】 

山のあなたの空遠く
「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。

噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。

山のあなたになほ遠く
「幸(さいはひ)住むと人のいふ。

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※「尋(と)め→たずね」




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