漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

○大井子水論にて初めて大力を顕はす事

2014年08月08日 | ものがたり

○大井子水論にて初めて大力を顕はす事

きのうの続きです。

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くだんの「高島の大井子(おおいこ)」は、田など多く持ちたりけり。

ある年、田に水を引くころ雨少なければ
村人、水を引く順を争い、
水論の末、大井子が田には、水を割り当てざりける時、

太井子、夜にしのびて

表の広さ、
六・七尺四方(2m四方)ばかりなる大石持ち来たりて、

田の水路へ横ざまに置きて、
我が田ばかりへ来て、人の田へ行く水を塞き止めければ、

大井子の田、思い通りに潤いにけり。

翌朝、村人ども、これを見て、驚きあきれる事かぎりなし。

石を引きのけんとすれば、
百人ばかりしてもかなうべからず、


無理にも人寄せれば、田みな踏み荒らされて、稲すべて損ずべし。

これはいかがせんものと村人集まりて談ずるにせんなし。

「今はただ」とて、
村人、太井子に許しを乞いて、

「今より後は、思う通りに水を引かせたまうべし、
 故にこの石のけたまえ」と、云いければ、

「では、然るべくに」とて、また夜にかくれて引きのけてけり。

その後は、長く水論する事なくて、田がかわく事なし。

これぞ大井子が力あらわし初むる初めなりける。

くだんの石、太井子が水口石とて、かの郡今だあるなり。




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