漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

エキマエ盛衰譚

2017年10月30日 | せけんばなし
私がいま住む町に来たころ、
「エキマエ」とは商店街のことだった。

駅前の通りには、
個人商店がびっしりと並び、いつも買い物客であふれていた。

「あころは、朝シャッターを開けたら、
 もう、お客が何人か立っていて、開店を待っていたものだよ」

これ、肉屋や魚屋の話ではない、
のちになって、メガネ屋の主人が昔を懐かしんで言ったコトバなんである。

そのころは、高度成長が始まり、
仕事や教育を求めて、地方から都会へと、人々がなだれ込んでいた時代なのですね。

やがて個人商店の時代から
大規模店舗の時代となり、

駅前には五つも六つもの、
ショッピングセンタービルが乱立する時代となった。

主役は変われど、
まだまだエキマエは、買い物客の集まる中心地だったのです。

ところが、やがて、
人々の「買い物の足」がクルマになりだすと、

その大規模店舗が郊外に移り出し、
エキマエは本来の意味の「駅の前」に戻った。

変わって目立ちだしたのが、
競うようにそびえたつ、一等地に並ぶ銀行の店舗ビル、

さらにバブル景気が全盛となり、
証券会社やサラ金と云った金融業店舗がエキマエの代名詞となり、

その金融店舗が控えめとなり、
一等地に開業医の掲げる「クリニック」と云う看板が増えだしたのは、

バブルがはじけての、何年かノチから。

バスの便や地の利の良い駅前に病院が乱立したのは、
つまりは、地方都市の中核をなす住民たちが老いだした証拠だったんでしょうね。

大手銀行でも、
収益力も考えて、

時代の電子マネー化で、
店舗への来店客が減ったことを受け、

各地の駅前にある
「支店と人員を減らす計画が進行中」と云う今朝の新聞記事を読みながら、

エキマエの次なる主役は?と思った時、
「まさか、養老院銀座になるのではあるまいな」と思い浮かび、

しばし沈黙、
「まんざら無いハナシでもなさそうだ」、気が付いて、

苦く笑った今朝のひととき、なのでアリマシタ。






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