漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

諭吉の海舟批判

2009年07月11日 | Weblog
きのうの続き。

様々な業績が評価されてか、
一万円札に起用され、
今や「国の顔」とも云えるポジションにある福沢諭吉ですが、

その彼が、
勝海舟や榎本武揚など、
旧幕府から明治の顕官に達した人々を、痛烈に非難したことも知られている。

その著作、「痩せ我慢の説」では、
一応は、
海舟の江戸開城談判の功を評価しながらも、
その武士としての精神に、厳しい批判を向けている。

その部分を、意訳して抜き出してみる。
  
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勝海舟氏の尽力を以って、江戸城を解き、
よりて、殺人散財の禍(わざわい)を免(まぬが)れたるその功は、

奇にして大なりと云えども、

一方より觀察を下すときは、
敵味方 相対して、いまだ兵を交えぬ内より、

自からの勝算なきを早々に悟りて、
謹慎するが如き、
表面には、「官軍に敵対することに云々」の 口実ありと云えども、

その内実は、

徳川政府がその幕下たる、
わずか二.三の強藩に、敵対し戦うの勇氣なく、

勝敗をも試みずして 早々と降參したるものなれば、

三河武士の精神に背くのみならず、

我日本國民に固有する瘠せ我慢の大主義を破り、
以って、立国の根本たる士氣を弛(ゆる)めたるの罪はのがれられず。

「一時の兵禍を免かれたる」と、
「万世の士氣を傷つけたる」と、その功罪、どちらが勝るや。

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ほかにも批判しているが、
一番の眼目は、「武士の精神に反する」と云うに有ろうかとおもう。

処で、
福沢の批判に対し、勝や榎本が反論したとはあまり聞かない。

人物評と云うのは、
一方の批判だけを載せるのでは不足で、
双方の功罪を、できる限り理性的に、並立させるべきだと思うので、

明日は「海舟弁護側の論」などを。




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