漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

日にちぐすり

2011年04月12日 | 言葉遊び
リンゴの好きな我が同居人ドノが、
「今年はリンゴがもうひとつ」とボヤキながらも毎朝食べている。

昨夏の猛暑の影響が有るのか、今年はリンゴの甘さが今ひとつ、

その代わりかどうかは知らないが、
デコポンや清見オレンジと云った晩柑類の糖度が高い。

おまけに輸入モノのネーブルオレンジまで甘い。

しかも酸味が殆どないから、
日ごろ余り果物を食べない私も今年はよく食べているが、

昔、晩柑と云えば、
夏みかんや八朔(はっさく)のように、
「スッパイのが当たり前」だった時代を知る者にとっては隔世の感が有る。

果物は甘いほど腐りやすく、
酸味が強いほど貯蔵がきくと云う性質を持つから、

甘いミカンは、高値のつく正月前後までに出荷して、
酸味の強いものは囲っておき、二月ごろに遅らせて出荷した。

柑橘は月日を置くと、酸味は急速に抜けていくが、
甘味の方は、ゆっくりと落ちていくから、
貯蔵しておいたミカンの印象としては、スッパイみかんが甘くなったように感じる。

正月も過ぎて、甘いみかんが腐りやすくなった頃が、
酸っぱかったみかんの貯蔵モノの出番、

と云う分けで、
昔の生活の智恵、スッパイみかんにもそれなりの利用価値があったのです。

先日の新聞コラムに「時薬(ときぐすり)」と云う言葉が紹介されていた。

どなたかの造語のようで、
「時間の経過によって、つらい記憶も少しづつながら癒やされて行く」と云うような意味なのだとか。

その時は、
別に新語を作らなくとも、
昔から「日にちぐすり」と云う言葉が有るではないかと思ったが、

どうもこの言葉は関西だけの言葉らしい。

大きな病気や怪我をして、
治療は一応終わったが、
まだ体力が回復せず痛みも残るときなど、

「あとは日にち薬やなぁ」などと使う。

長年連れ添った連れ合いを亡くされた方にも、
「今は淋しいやろうけど、まぁ、あとは日にち薬しかないナァ」などと、

なぐさめの言葉にも使ったから、
新語の「時薬」と同じような意味も有ったことになる。、

先日、若い時トゲトゲしていた人が、
長年見ぬ間に、ずいぶん当たりのやわらかい好々爺に変わっていた。

スッパイみかんも日にち薬で甘くなる、
あれも、日にち薬の効用のうちなのだろう。






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