漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

江戸小話

2009年06月13日 | Weblog
江戸小咄です。

尚、
「九つ」は、深夜零時。

「ご新造(ごしんぞ)」は、若奥さん。

「癪(しゃく)」は、胸や腹のあたりに起こる激痛の総称。さしこみ。
 当時は、婦人に多いとされていた。

「南無三宝(なむさんぽう)」は、「それは大変」と云う時に発する言葉。
  
  ~~~~~~~~~~~~~~~

ある医者ドノの家
九つ過ぎの寝入りばな、

トントントン、

「ハテ、誰じゃイや」

「伊勢屋からにて、至急、至急、
 御新造が癪で引き付け、目をむいておりますれば」

「南無三宝」

羽織引っ掛け、
ひも結ぶもそこそこに、駈け出でて、

伊勢屋の玄関、
ズットはいれば、家内は上を下へ、

医者ドノ、
寝起きのうろたえ眼なれば、
いきなりに下女の手を取りて、脈を見る。

「アア、申し、私ではござりませぬ」

「ハテこんな時に、誰かれの差別はないてや」

  ~~~~~~~~~~~~~~~~


「南無(なむ)」は、
お釈迦さんの国、インドの古代語の漢字表記。
「あなたを信心しております」と云うような意味。

「三宝」は、仏、法、僧、を指す。

あわせて、

「日ごろから信心して、
 仏さん拝んで、お経もあげて、坊さんも大事にしてますさかい、
 どうぞ、助けておくんなはれ」 

と、云う処。





コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。