(きのうの続き)。
大蔵も打ちわらいて、
「さては盗人どのか、
これはよくぞ出会いしものかな、
博打に打ちふけり、その果てがかく山里にさ迷い来たる我が身なり。
博打打つも盗みも罪あるは同じとかや、
博打ならひとたび負け色となりては力わざも通じぬが、盗みなら腕ひとつならん、
これはよかろうぞ。」
とて、よろこぶ。
「さて肝(きも)ふときヤツなり、
さては近ごろ聞きし 伯耆(ほうき)の国の父兄殺しとはおのれの事か」と問う。
大蔵、悪びれた風もなく、
「それなり、」と認め、
続けて、
「このまま里にて人交わりしていくでは安き心も無し、
御手下に付きて、
野山に伏し賊稼ぎする事こそ我が身に合いたり、よし、よし、」
とてうれし気なり。
その大蔵を見て、盗人の男が、
「こよい、この道を通る旅人あり、
馬の背に重げなる荷積み、
付き添うは足軽ひとり、老いぼれのほかには邪魔する者とてなし、
荷の中には大金ありと見たれば良き稼ぎぞ。
馬子めとともに打ち殺して、奪いとらん。
まずは手初めにして見よ。」と云う。
大蔵、図太くうなずき、
「それ位の事ならば、たやすき業(わざ)なり、
その前の力づけに、ふもとにおりて、酒を飲ませられたし」。
大蔵も打ちわらいて、
「さては盗人どのか、
これはよくぞ出会いしものかな、
博打に打ちふけり、その果てがかく山里にさ迷い来たる我が身なり。
博打打つも盗みも罪あるは同じとかや、
博打ならひとたび負け色となりては力わざも通じぬが、盗みなら腕ひとつならん、
これはよかろうぞ。」
とて、よろこぶ。
「さて肝(きも)ふときヤツなり、
さては近ごろ聞きし 伯耆(ほうき)の国の父兄殺しとはおのれの事か」と問う。
大蔵、悪びれた風もなく、
「それなり、」と認め、
続けて、
「このまま里にて人交わりしていくでは安き心も無し、
御手下に付きて、
野山に伏し賊稼ぎする事こそ我が身に合いたり、よし、よし、」
とてうれし気なり。
その大蔵を見て、盗人の男が、
「こよい、この道を通る旅人あり、
馬の背に重げなる荷積み、
付き添うは足軽ひとり、老いぼれのほかには邪魔する者とてなし、
荷の中には大金ありと見たれば良き稼ぎぞ。
馬子めとともに打ち殺して、奪いとらん。
まずは手初めにして見よ。」と云う。
大蔵、図太くうなずき、
「それ位の事ならば、たやすき業(わざ)なり、
その前の力づけに、ふもとにおりて、酒を飲ませられたし」。