地球より遠く離れた星でも、
ちょっとした望遠鏡さえあれば子供でも観測できる。
ところが、これまた地上で昼と云わず夜と云わず、
星の数ほど繰り返されているであろう、
性行為やその性的嗜好について観測するのは容易ではない。
誰もがそんなものは見せたがらないし、
アンケートや聞き取り調査に応じてもらうのさえ容易ではない。
よし、せっかく苦労してデータを集めても、
応じてくれた人々が正直に答えたかどうかまでは分からない。
かてて加えて、
そんなことの研究にカネを出そうとする物好きな財団などないし、
それだけでなく、
「世間で思われているより同性愛者が多い」と云う、
画期的な研究成果を発表したキンゼー博士などlは、
宗教団体などから非難の集中砲火を浴び、
その精神的負担から早死にしたほどである。
こうして、人類生存の根源の問いであるはずの、
「性欲の研究」は長く放置され、
触れたこともない遠くの星や、
さわるのさえおぞましいゴキブリやゾウリムシの研究より立ち遅れ、
いまだに「誤解と迷信が支配する」世界でしかなかった。
処がここに、ネット社会と云う救世主が現れた。
匿名性の強いこの世界では、
人々は警戒心やタテマエを捨て去り、欲望を明け透けに覗かせる。
かくて、さほどカネもかからず、
しかも、かなりの信頼性がおけるデータを集め、
「四億の検索ワード、65万人の検索履歴、
数十万の官能小説、数千のロマンス小説、四万のアダルトサイト、
500万のセフレ募集投稿、数千のネット掲示板投稿を
最新のデータマイニングを駆使して分析。
神経科学と性科学の研究成果も加味してまとめた。」
と称する本が発売されたとあっては興味津々、
未開の荒野乗り込むような気分で手に取ったのが、
ボストン大学の研究者、
オギ・オーガムス、サイ・ガダム共著の「性欲の科学」。
その中の一部を紹介しようと思ったのだが、
いかにも長くなってきたので、続きは、また、あした。