漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

爆走する医学

2010年04月25日 | Weblog
昔、作家・小松左京氏の「日本沈没」が大ベストセラーとなり、
映画でもヒットしていた時、
小松さんに対し、
「どうしてこの小説を書こうと思いついたのですか」とたずねた人が居た。

その時の小松さんの答が、こんな風だったような記憶がある。

「学問は、発展や停滞を繰り返しながら進歩するものだが、
 いま、地球物理学は飛躍的に進歩している時期、

 そうなると、
 こちらの知的好奇心も大いに刺激されて、
 小説家としては書きたくなるのが自然なのです。」

その小松さん風に云えば、
いま、飛躍的に進歩しているのが「医学」なのだろうなと思う。
  
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  長男刺殺の母親に執行猶予の判決
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東京都内の病院で昨年7月、
自殺を図って、意識不明のまま入院していた長男(40)を、
刺し殺したとして、
殺人罪に問われていた母親(67)に対する、判決が東京地裁であった。

裁判長は、
「同情の余地が大きい」として、懲役3年、執行猶予5年の刑を言い渡した。

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自殺未遂した息子は、
すぐさま病院へ搬送され、意識不明のまま生命を維持していた。

自殺の場合は医療保険の対象外とされていて、
搬送されてから犯行まで、
わずか十日ほどの間で、その治療費は500万円以上にのぼっていた。

息子の嫁が、医師に対し、
「自分で生命維持装置をはずします」と言って泣き崩れるのを見た母は、

息子の一家をこれ以上は崩壊させられないと静かに決意し、
病室のベッドに横たわる息子の胸を、包丁で刺したのだった。

判決の中で裁判長は、
「決してあなたの行為を認めたわけではありません」と言ったそうだが、
しかし、では
「あなたはこうするべきだったのです」と云う一番大事なことは言わずじまい。

いや、言わなかったのではなく言えなかったのだ、

なにしろ、法律をいくら読んでみても、
そんなことは、どこにも書かれていないのだから。

法の番人としては、
「許したわけではありません」と云うのが精一杯の処だったろう。

医学が進歩して寿命が延びるのは結構だが、生命には限りがある。

医学が飛躍的に進歩しているのに、
生命に対する国民の合意や法律が追いつかない。

私の知っている中にも、
奥さんが植物状態になって十年以上と云う人がいる。

走り出した車はどこかで止めねばならないのだが、
では、その止め方をどうするのか、

人間の命もどこかで止めねばならないが、

ではそれは、家族がするのか、医師がするのか、
はたまた役人が処置するのか、法律的にどう処理すれば良いのか。

誰もがこの難題に戸惑うばかり。

子供を殺さねばならぬ境遇に陥るよりは、
子供に殺される立場の方が、まだ気が楽か、

と、あらぬことを想って、溜息をつくばかり。








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