「ハイ、餅入りサービス」と言いながら、
わが同居人ドノが、昼めしがわりのうどんをテーブルにドンと置いた。
ハンパな残り物で、処置に困っていたはずの薄い餅が一枚乗っている。
このごろはどこの店へ行っても、
メニューに「力うどん」となってるけど、
「むかしはカッチンうどんやったよな」と、
うどんをすすりながらつぶやいたら、
「ホンマやねぇ」と同居人ドノも不思議そうな顔をした。
これは知っていたので、
「カチンと言うのは、昔の宮廷に仕えた女房言葉、
“搗ち飯(かちいい)”のなまったもの」と胸を張ったら、
「じゃ、力は」と聞かれて詰まってしまった。
「う~ん、餅を食べたら力がでるからかな」と思い付きを言って誤魔化しておく。
“搗ち”は衝突する様で、
「かち合う」とか、相撲の「かち上げ」の「かち」、
“搗ち飯”は搗(つ)きこねたメシだからすなわち餅のこととなる。
「酒は酒屋に、餅は餅屋に」は、
昔はどちらも自宅で作れたものだが、
やはり専門家の作るものは素人製とは仕上がりが違うと云うことわざ。
「上戸に餅、下戸に酒」は、
男にケーキを出して、女性に酒を出すトンチンカンの類だが、
昨今ではその方が喜ばれるのかも。