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小規模多機能物語13

2006年10月26日 | 日本生活介護
(4)介護の産業化の進展-すでに実現した未来⑥-カルテにないことは起こらなかったことだ

 付け加えれば、昨今流行している第三者評価や介護情報の公表制度もまた、このような技術主義を中心的な柱を据えている。
 「入居者のカルテはナースステーションの背後の棚に区分けされている。それぞれの人のかるてには診断名、医療相談、処方、生命兆候、体重その他の身体計測値、行動等が書き込まれている。……彼らの存在の公的記録であるカルテのなかでは、彼らは日常の生存戦略の不可欠の一部である地域的脈絡性と関係から切り離される。彼らは書類の中で患者となり、病状によって識別される。……
 『カルテにないことは起こらなかったことだ』という科白は、看護助手に正確な記録を付けさせる大胆な方法にとどまらない。それはビジネスとしての介護のあり方を正確に捕らえた言葉なのだ。」(同上 ティモシー・ダイヤモンド)
 「最後の選択肢」としての施設(「2015年の高齢者介護」)、いわば、「入所してもろくなことがないもの」として描かれる入所施設を何とかして人間らしいものへと改善するものとして「標準化」や「マニュアル化」が力説されあるいは強制される。しかし、そのことがかえって「2015年の高齢者介護」が描くように、施設を「最後の選択肢」へと導いていくという逆説がここには存在する。
 と同時に、このような産業化のプロセスの導入こそが、小規模多機能事業所という自ら納得のいく手作りの介護の実践を指向する人たちを絶えず生みつづける広範な土壌を与えていることは容易に想像できることである。産業化された施設では職員は利用者の生活と対面しているのではなく、すでにシステムの一部にすぎないからである。
(続く)

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