私の始めたデイサービス

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小規模多機能物語8

2006年10月12日 | 日本生活介護
(4)介護の産業化の進展-すでに実現した未来①-介護の産業化の始まり

 施設介護に入所することは「住み慣れた自宅を離れ、家族や友人たちとも別れ……これまでの人生で培ってきた人間関係をいったん失い、新しい環境の中で再び築くことを強いられる」ことであり、「心身の弱った人」にとって「大変な精神的負担を伴う」ものであり、「生活の継続性が断たれてしまう」。また、施設では集団的に行動するため、「自分自身で生活のリズムを決めることは難し」く、「このような生活の中で……自分の役割、存在意義を見失い、自立への意欲や人生に対する関心を失っていく」。だから「施設への入所は最後の選択肢」なのだ云々。(「2015年の高齢者介護」より)
「2015年の高齢者介護」においては、大規模施設はよくないものだと極めてネガティブに描き出されている。もちろんその意図は、施設ではなく在宅の魅力を際立たせるものだとしても、どこか一面的な印象を与える。ここには、在宅介護は家族に介護者がいて初めて可能であるという限界や制約を少しも論じることなく、施設は悪いもので、だから在宅はいいものという主張しかここには見当たらない。
 多分、ここでの施設の描き方はそうした「政治的な」意図があるからだろうと納得してみても、それでもなお妙な違和感は残りつづける。それは、ここで施設の弊害として描かれているものは、施設だからという問題よりも、むしろ介護保険導入以降急速に進んだ介護の市場化・産業化の姿のように思えてならないからだ。
(続く)