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小規模多機能物語6

2006年10月10日 | 日本生活介護
(2)「小規模多機能型居宅介護」という新しい施設③-みんなの思っていたことと違う

 このように、厚生労働省は施設の入所を抑制する機能として小規模多機能事業所に着目したのであるが、宅老所の実態は、施設に行かなければならない人を努力して支えてきたという方が近いであろう。施設の整備が不十分で入所できないから、あるいは施設のケアの質が悪いから何とかして在宅で頑張ってきたのであり、その努力にこそミッションがあると理解されてきたのである。つまり、小規模多機能事業所は目の前のニーズに即して対応するというサービスのスタイルに意義があったのであり、決して在宅と施設を繋ぐ機能として意識はされてこなかったし、そのような役割を自らに課したものでもなかった。
 私はこのような両者の決定的な違いがどうして制度化の過程で生じてくるのか少々不思議に思ったものだ。通常制度化に伴って様々な利害が表面化することは一般的であり、それを当事者たちと調整することを通じて、つまり、「現場の声を届かせる」ことによって制度がよりよいものに変更されるといった道筋をたどる。とりわけこの制度が既存の宅老所を規制するための制度化ではなく、育成していくための制度化であればなおさらのことだ。しかし、実際は少しもそうはならなかった。
 今回の小規模多機能事業所の制度化にあっては、そもそもそうした議論の痕跡が見当たらない。つまり、当初より厚労省の関心は「入所の抑制」機能以外にはなかったのだと言ってよい。
 かくかあらぬか、批判の大勢は、よりよい制度を作っていくための注文というよりは、これまでの宅老所の実践を邪魔しないで欲しいといったネガティブなものに終始する。このことはこの制度がうまく機能しないのではないかという印象に妙なリアリティを与える。一体に、このような硬直化した制度設計であっても制度は間違いなく実行されるはずだという厚労省の確信はどこから生まれたものなのだろうか。
(続く)