Merry Christmas!
バリ島の街のレストランでは、よくハエもごちそうに集まって来るけれど、ちょっと気の利いたホテルではそういうことがない。
どうしてかなと思っていた。
ある夕暮れ時、海辺のホテルの庭を歩いていたら、聞き慣れないごう音が近づいてきた。
そちらを見ると、真っ白な煙が五階の屋根をすっぽり包み込んでいる。
とっさにヒヤリ!として、踵を返した。
そばにいた人たちも、「おっと!」という反応で避けているけれど、どうやら非常事態ではないらしいので、殺虫大作戦かなと見当をつけた。
あんな光景を見たのは、初めて。
昨日は、友人と、ニューヨークから前夜着いたばかりの友人の姪っ子さん、彼女のボーイフレンドと4人で海辺のランチをした。
ボーイフレンドと言ってもマイクは職場の同僚で、純粋にフレンドらしく、彼にはインディアンの血を引く、れっきとした彼女がいるそうだ。
ふたりでほほ笑んでいる、雰囲気のいい写真も見せてくれた。
「えぇ! それで(27歳のかわいい友人の姪っ子さんと旅していて)、彼女はしっとはしないの? だいじょうぶなの?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。 彼女も今、コスタリカに旅行中だから」
と、目の前のふたりも笑っている。
へぇ
そういうこともあるかもしれない。
その夜、友人のヴィラでお茶を沸かしていたら、急にその地区一帯が停電した。
よくあることらしいが、モーターで汲んでいる水も出なくなる。
友人のジーンさんは、庭でも部屋でも敷地内は裸足なので、わたしもそれに倣っていた。
「真っ暗だし、なんか踏まないといいな。。」
と思っていた矢先に、チクチク、ジーン!と、両足に痛みが走った。
懐中電灯で照らすと、黒いツブツブ。 アリだ!
次第に、あちこちから痺れるような痛みが広がって、すぐにジリジリ痒みがやってきた。
こんな痛痒さは初めてなので、熱帯の虫はキケンじゃないかしらんと、焦りながら思い出した。
そうだ! ジーンさんはお医者さんだった。 頼もしいゾ。
電力会社に電話をかけようとしていた彼が手をとめて、
「それなら石鹸で洗って熱いお湯に浸すんだ! そうすると痒みが和らぐ!」
と、意外とナチュラルな処方をしてくれた
たしかに。
水洗いしてお湯に浸けたら、熱さで痒みが和らいだような紛れたような、とにかく落ち着いてきたので、仕上げに石鹸で洗い、流そうとしたその時に・・・水が止まった。
え・・・。
懐中電灯の光が、蛇口につたう滴を照らしている。
「OK! このお湯を使えばいいよ」
ジーンさんが、さっき足を浸けていたお湯と、お茶のために沸かしていた台所のお湯を持ってきてくれて、それがちょうど間に合った。
さて帰宅しようと門を出ると、街灯も消えた住宅街の上に星がくっきり浮かび、路地の先に停電を免れた地区の大通りが光っていた
と、今ホテルのテラスで書いているのだけど、ブォーンと低い不吉な音が聞こえてくる。
もしかしてあの、白い煙ではないかしら・・・と、塀の向こうの茂みを見ていたら、やっぱり!
ドライアイスのようなモクモクが、予告もなくプールサイドめがけてなだれ込んできた。
あっという間に、1メートル先が見えなくなった。
撤退しよう
・・・
ロビーにやってきた。
「あ~あ? あれね。 蚊をやっつけてるだけだから、問題ないよ。 蚊はデンジャラスだからね。」
プールを飛び出してきた水着の女性に、くっきりメイクをしたフロントの女性が答えている。
蚊もデンジャラスそうだが、モクモクもデンジャラスそうである。
あ、洗濯物、外に干してたんだっけ。
今頃、煙のまっただ中だ! もう間に合わない。。
だけど、別の意味で、ホワイト クリスマスだなぁ
これから、友人の通う教会のミサに。
どうぞ、素敵なクリスマスを。
From Bali
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/