バリ島、オベロイホテル前のビーチ。
夕陽が沈む頃、あちこちから人が集まってきて、延々と続くこの海岸を歩く。
体のすみずみに、水がひたひたと行き渡る。
3年9か月ぶりのバリ島は、紙幣が切り替わり、空港は近代化し、物価は急上昇。
と、すいぶん発展していたけれど、一歩、街と海に出れば、たちまち懐かしさで心がほどけていった。
初めて来たのは13年前。
一目海を見てからチェックインしようと、ホテルの向かいに伸びる細い路地を抜けた。
そこには、陽の傾いた白浜が広がっていて、遠浅の青い海にくるぶしあたりまで水に浸かりながら、大きなバックパックを背負った欧米人の男性がひとり、歩いていた。
その光景は、言葉にならないほど美しい「気さくなあの世」に見えた。
以来、縁あって、ホームステイ、友人の紹介してくれた海辺に建ったばかりのアパート、知人のホテル、それぞれの島の友人たちの家、ヴィラ・・・と、回を重ね、これで10度目くらいの滞在になる。
またこの夏は、国内の旅好きな父が、いつか海外も!と、10年パスポートをとってから、とうとう8年目に決起した、初めての渡航先にもなった。
そのため、日程は8日間。
旅のテーマは、
1 初海外でも安心できる「確実な宿」
2 大好きな「海」を満喫
3 できるだけバリのいろんな顔を見る
に絞って、組み立てることに。
あれこれ検討した末に、前半のホテルは、友人の薦めと、旬のパワーを感じたアヤナ リゾート&スパ、後半は、伝統的で、落ち着いた味わいのジ・オベロイ・バリに決定。
オベロイホテルは、メールでお部屋の詳細について尋ねると、すぐに温かい返答が戻ってきて、予約した当日から、気持ちの置き所が整えられたようだった。
飛行機は、いつもは成田からだけれど、今回は中部国際空港発なので、直行便はなく、シンガポール航空を手配。
これで旅の軸はOK!
あとは、この滞在の間に、お寺の住職をされている大学の先輩つながりで知り合ったバリ在住の方とお会いすることになり、そのためのメールのやりとり。
彼女との共通点は、実家が徒歩圏で、お互いに気に入ってバリの滞在先に選んでいた場所が、同じ、比較的静かな海辺の街、サヌールだったこと。
またその場所で会えるのも、うれしい。
さて、父は、長時間フライトや食べ物はだいじょうぶだろうか。
なんでも初めてには、ドキドキとワクワクが入り混じる。
これまでの旅を振り返ると、そこで出会った感動は、出かける前と後とで、体の周波数を変えてしまうものだった。
まだそのことに気づかなかった頃は、旅の終わりが、さみしくてたまらなかった。
一緒に気持ちの高揚やしあわせ感も、それまでよ。と、途切れてしまうようで切なかったのだ。
でも、少しずつ心の受け皿がしっかりしてきた頃には、終わりのさみしさはあっても、その効能は、ずっと持ったままでいられると思うようになった。
たとえ帰ってきてからの日常で、気分がマイナスに傾く時があっても、体で覚えたその感覚は、いつでも揺り起こせば再現されて、好ましい波長に切り替えてくれたから。
そう。 つながっているから、素晴らしい体験は、できるだけしたほうがいい。
今回も、そういう、自分のものになる旅をしてこようと思った。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/