「神は一つの門を閉ざされると、もう一つ新しい窓を開けてくださる」
という、『サウンド・オブ・ミュージック』の一節が、今読んでいる本に引用されている。
バリ島のどこでこの本を手に入れたかというと、ラーメン屋さんだ
予期せず入ったそのお店は日本の方が経営されていて、壁一面に日本語の本がずらっと並べられていた。
「わぁ~!」
お腹も減っていたけれど、持ってきた本を数日前に二冊とも読んでしまって、どこかに日本語の本がないものかずっと探していたから、その時はほんとうに胸が高鳴り、「ミソラーメン」を注文するやいなや本棚にくぎづけになった。
まさか、(けっこうハデな)のれんの向こうで出会えるとは!
しかも元は、ひとりで行くには勇気のいる地元の市場で、友人とジャワ島の麺を食べたかったけれど、彼女と連絡がつかなくて代わりに入ったお店だったのに。
さっそく食後に一冊読み(ここにはコーヒーもあるのだ)、他に二冊を貸していただいた。
ラーメン屋さんを出ようとしたら大雨が降ってきたので、歩くのをあきらめ、この頃毎日顔を合わせているタクシードライバーのスヤディオノさんに来てもらうことにした。
彼に会ったのは、ある晩友人たちの集まりに出かけようと路上でタクシーを拾い、乗車前にメーターを倒すようにお願いしたら、メーターじゃなく通常の5倍!の金額を言われたので「ならいいです。」とやめたものの、その後なかなか別のタクシーがやってこなくて、とぼとぼ歩いている時だった
ようやく見つかった車のドアを開けると、そのドライバーさんは5倍の人とは打って代わって、親しみ深い笑顔で振り返り、日本語まで話すのだった!
しかも、5倍の人物の知らなかった、待ち合わせ場所の小さなお店まで知っている!
それ以来、わたしはできるだけスヤディオノさんに迎えに来てもらっていて、彼が運転席の窓を開け、「ハーイ!」とニコニコ手を振ってくれるのを見ると、とても心強くなる。
話しは戻って、今しがた本を読んでいたのは、このところ通っているベーカリーカフェだ
12年前、初めて友人に連れて来てもらい、それ以来気に入っていて、バリへ来る度にひととおり行きたいところへ行き尽くすと、ここに落ち着いてくる。
今日は、入国管理局でビザ延長手続きをした帰り道、ビザコンサルタントのアンナさんに送ってきてもらった。
彼女とも、ひょんな縁で知り合った。
日本を出る前のこと ― 。
宿探しをしていたら、クリスマス直前のバリは混んでいて泊まりたいヴィラが満室だったので、代わりにこじんまりした海辺の部屋を5泊予約した。
― なんと! わたしはパスポートを忘れて(家のコピー機に挟んだまま!)羽田空港のチェックインカウンターの前で順番が来たと同時に「あれっ?」と思い出したので、予定の便に乗れず翌日の便を取り直した。
それで結局、4泊になったのだけれど・・・
今まで何十回と飛行機に乗ってきて、その都度心のどこかに「万一、乗り損ねたら・・・」という不安がつきまとっていた。
でも、こうしてそれが起こってしまうと、一瞬ガク然としたものの、意外となんとかなるものだとわかり、むやみに恐れなくなったので、それはよかったなぁと思う ―
そんなこんなでたどり着いた宿の朝食時に、イギリス人と組み予約の管理をしているアンナさんと時々顔を合わせた。
博識そうな方だったので、ふとおしゃべりのついでに、30日の観光ビザを一度だけもう30日延長できるという、その申請方法を尋ねてみたら、
「あら、任せて。わたしの本職はビザコンサルタントだから」
と、たっぷりの笑み。
その場で、管理局へ行く日程を決めることになったのだ。
さらに、今ワンフロアーを借してもらっているヴィラのオーナーである友人が、後日薦めてくれた「親しい友人のコンサルタント」というのも、たまたま同じ彼女だった。
実際の手続きは、それまでネットや電話で調べていたまちまちの情報と異なっていて、下調べした宿の印象もそうだけれど、なんでもじぶんで来てみて、感じてみないとわからないなぁ。と、つくづく思うのだった。
思いのままにならないことはふつうだけど、目の前のドアが閉まっても、たしかに神様の窓はいつでも開かれている。
どんなに入念な下調べでわからなくても、キラクに窓を見ようとすれば。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/