むすんで ひらいて

すべてが帰着するのは、ホッとするところ
ありのままを見て、気分よくいるために

恋する犬

2015年01月14日 | 日記

先週ヴィラの門を開けると、白いおとなしそうな犬がこっちを見ていた。

なにか言いたげな目だったので気になったが、そのまま外出し夜帰ってきて門を閉めると、今度はその下から白い足が覗いていた。

その後も何度か出かけようとすると、扉の隙間から遠慮がちに鼻先を見せていることがあって、「大通りのノラ犬に比べると物腰が優しげだし、もしそうだとしても、どうしていつも中をうかがってるのかな

」と、ふしぎに思っていた。

そしたら昨日、庭のプールの脇からニョッと現れて、おどろいた。

おどろいたけど、彼は顔色を変えず、静かで真っ直ぐな目をしていたので、「ま、そのうち帰っていくかな」と思って外出した。

いつも出がけに、「ミャー!ミャーミャー」と言いながら足元にすり寄ってくる猫のヴィスパは、この日いなかった。

 

 

夜、ヴィラのオーナーにその話をすると、

「ああ! そうなんだよ、びっくりしたよ。 

彼はプティ(インドネシア語の白という意味)っていって、僕がここに引っ越してくる前の家の隣に住んでて、よく遊びに来てたんだ。 

それで今、プティは僕がここにいることを知ったんだね。 

今日、部屋を出たら彼がいて、敷地の中で見たのは初めてだったから、びっくりして『おー、プティー!』って呼んだら、もう顔いっぱいに笑って『クゥーンクゥーン』て何か話してるんだ。 ハハハ」

オーナーは半年前の5月、200メートル先の家からここへ越してきた。

プティは隣のバリ人宅に棲んでいたけれど、家族の残り物しか食べていなくて栄養が足りず皮膚が荒れていた。

そこで、遊びに来たら時々、脂肪とビタミンの入ったごはんをあげていた。

すると毛艶が出てきて、げんきになった、ということである。

 

 

プティは、この辺りにある幾つかの犬のグループのボスで、しばしばすごいうなり声でケンカしているという。

わたしの見た彼は、とても気弱で思慮深そうだったので、そんな一面もあるんだとおかしくなった。

オーナー曰く、

「他の犬とケンカしてる途中で名前を呼ぶと、こっちを向いて満面の笑顔になって、すぐまた向き直って『ガルーッ』ってすごく怖い顔でうなるんだ。

あんなに表情が豊かに変わる犬は、見たことがないね。 

一緒にいる時に他の犬が寄ってきても、そうやって威嚇して家族とか親しい人を守ろうとするんだよ。

 

ある時なんか、夜中になわばり争いをして、翌朝遊びに来たら耳から血を流してることもあったね。

バリのボス犬も、人間や犬のグループや、あちこち守る責任があってタイヘンなんだよ。 ハハハ」

 

そういえば、プールサイドの君の耳は、しなやかで大きな三角をしていて、風になびいてスナフキンのマントみたいに見えた。

繊細なところが、弱みになることがある。

そんなプティが、何かを守るために闘いながらも、好きな人を追って遠慮がちに何日も門前で待ち続けていたことを想うと、わたしが犬だったら惚れるなと思った

 

だけど彼は猫を追っかけるので、ヴィスパはこの間、屋根の上に避難していたらしい。

オーナーがプティを帰すと、さっそく大きな目で「ニャ~!」と訴えながら降りてきたそうだ

プティもしっとしたりするのかな。


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