murota 雑記ブログ

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ニュートリノは光速より決して速くない。

2022年01月06日 | 通常メモ
 ニュートリノが光速より速いというのは間違いだった。アインシュタインの相対性理論の考え方に変化はない。小柴 昌俊氏は1987年、自らが設計を指導・監督したカミオカンデによって史上はじめて自然に発生したニュートリノの観測に成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した。ニュートリノというのは不思議な粒子だ。宇宙には数え切れないくらい星があるが、その星を分子から原子、原子から素粒子と究極までバラバラの粒子にして数えたら、すごい数になる。ニュートリノは、その1億倍の数もある。いわば宇宙には、ニュートリノが充満している。

 もともとニュートリノは1930年にオーストリアのパウリという学者が「ものすごく小さくて電気を帯びていない粒子があれば、物理学のつじつまが合うのだが」と仮に考えていた粒子であり、その本物が見つかったのは1956年のことだ。アメリカのライネスという学者が、膨大な数のニュートリノが生まれている原子炉のそばで見つけた。かつては全ての物質の最小単位が原子と思われてきたが、原子は更にクオークという最少粒子で構成されていることがわかった。また、最少粒子には、もう一つニュートリノもある。これは粒子でも現実の物質を作らないという変な粒子だ。ニュートリノがどうして現実の物質を作れないのか、それは電気を帯びていないからだ。他の基本粒子はほとんど電気を帯びていて、何段階にも階層をなして結びつき、物質を作ってゆくのに対し、ニュートリノはバラバラなのだ。

 ニュートリノは本当に小さい。高性能電子顕微鏡でも全然見えない。電気を帯びているのと多少の重さを除けば、電子はニュートリノと似ている。ニュートリノは、どんな物質の中も通り抜ける。太陽から地上にやってくるニュートリノは、1平方cmに毎秒660億個、膨大なものだ。その内で捕まえられるのは僅かだ。太陽から来るニュートリノを全部捕まえようと思ったら、水を40光年位の厚さに並べなければならない。ニュートリノには重さがないと考えられてきたが1998年に日本のスーパーカミオカンデが、ニュートリノの体重はゆらりゆらりと2つの重さの間で変化を続けていることを見つけ、これがニュートリノに重さがある決定的証拠となった。

 いくら高性能の光学望遠鏡で覗いても星の表面のことしか分からないが、飛んできたニュートリノによって、星の内部のことが分かる。いくら高性能の光学望遠鏡でも、暗黒星雲の向こう側は見えないが、ニュートリノは暗黒星雲も通り抜けて飛んでくる。ニュートリノなら超新星爆発だって望遠鏡より早く見つけられる。超新星爆発のエネルギーの99%を持ち出すのはニュートリノだ。太陽も、内部の核融合活動が表面に現れて輝くのに10万年かかるので、望遠鏡では10万年前の活動しか分からないが、ニュートリノは中心から飛び出してくるので、8分後には太陽の活動状況が分かる。ニュートリノは磁場の影響を受けずに何でも突き抜けてまっすぐに飛ぶ。飛んでいる途中で他からの影響を受けない。生まれたところの情報をそのまま持っている。ニュートリノの情報を集めれば宇宙や物質のことが分かる。ニュートリノはいろいろなところで生まれるが、エネルギーが弱すぎて捕まえられない。超新星爆発ではニュートリノが大量に生まれる。太陽などの輝く星からはいつもニュートリノがやって来ている。宇宙線が大気中に飛び込んだときもニュートリノが生まれる。原子力発電所でも生まれる。加速器で人工的に作ることもできる。

 カミオカンデが地下に設けられたのは、ニュートリノ以外の粒子の影響を避けるためだ。ニュートリノは物質を貫通する能力が高く、他の物質と反応することなく簡単に地球を通り抜ける。まれに他の物質と衝突する。このまれに起こる衝突を検出するためにカミオカンデは作られた。ニュートリノの衝突を検出するため、超純水をつかう。カミオカンデの内部には超純水がためられており、ニュートリノが水の中の電子に衝突したあとに、高速で移動する電子より放出されるチェレンコフ光は青白く発光し、壁面に備え付けられた光電子増倍管で検出される。チェレンコフ光を検出した光電子増倍管がわかると、どの方角からきたニュートリノの反応かも分かる。1987年2月23日カミオカンデはこの仕組みによって大マゼラン星雲でおきた超新星爆発で生じたニュートリノを世界で初めて検出した。この功績で2002年小柴昌俊・東大特別栄誉教授がノーベル物理学賞を受賞したのだ。

 ニュートリノの速さが光の速さより、ほんの少し速いことが実測できたとのニュースが流れたこともあったが、世界の物理学者達からは、実験結果を未だ素直には受け入れられていない。報道の中にはアインシュタインの相対性理論を根底から覆すかもしれないといった軽率な記事も出た。電気を帯びてない点では、ニュートリノも光も同じ。速さが光速とほとんど同じといっても不思議ではない。アインシュタインの相対性理論の考え方は納得できるものであることには変わりない。特殊相対性理論の中の「光速度不変の原理」と言うのは証明された訳ではなく、それまでの観測に基づいて出てきたデータだ。宇宙全体から見れば等速運動の特殊世界(例えば地球上)の中でのみ通用するのが“特殊”相対性理論。速度の変化や重力に関係なく宇宙全体に使える理論が一般相対性理論なのだが、アインシュタインが一般相対性理論を発表したのは1915年、その直後の1919年に日食があった。太陽はかなりの質量があるので、その周りでは、わずかに空間がゆがんでいる。
一般相対性理論が正しければ、太陽の向こう側にある星から来る光は、太陽の重力によってゆがめられ、実際の星の位置とは違う位置に星が見えるはず。普段は太陽が明るくて観測できないが日食の時なら観測は可能であり、実際に観測した結果、星の位置がわずかにずれている事が実測できた。本当にあるべき位置よりも少し太陽から遠い場所にその星が観測できた。一般相対性理論の計算通りに光がゆがんでいたので世界中が大騒ぎになった。

 物体が光速になれない理由は「無限大の力が必要だから」と説明してきた。公式E=mc2を思い出す。E=mc2この公式の持つ意味は「物体のエネルギーと質量は互いに関係している」と言う意味になる。物体が重くなれば重くなるほどエネルギーが増し、エネルギーが増せば増すほど物体が重くなっていく。ある物体Xを加速し光速を超えさせようとしたとする。初めは順調に加速を始めた物体Xだが次第に変化が現れてくる。加速させるためには後ろから押すなど何らかの力=エネルギーが必要になる。段々、加速させるために必要なエネルギーが増えてくる。速さが増すと言う事はエネルギーが増すことであり、同時に質量が増すこと。質量が増すと、その分、加速させるために必要なエネルギーは増える。段々と物体が速くなり、その速度が光速に限りなく近付くと加速に必要なエネルギーは莫大なものになる。理論上その物体を光速にするためには無限大の力が必要になる。「無限大の力」など存在しないので光速を超える事は絶対に不可能ということになる。

「物体の速度が増すとエネルギーが増す」という説明は正確ではない。「質量(重さ)のある物体の速度が増すとエネルギーが増す」ということだ。物体の持つエネルギー量は、その物体の「質量」と「光速の二乗」をかけあわせたものになる。もし「質量ゼロ」の物体があったら、ゼロは何をかけてもゼロのままだ。それが莫大な数字でも同じ。質量ゼロの物体はエネルギーもゼロだ。エネルギーがゼロと言う事は加速させるために必要なエネルギーもゼロだ。全ての物体が光速を超えられない理由は「無限大の力が必要だから」ということだった。光が光速になれる理由は「光には質量が無いから」だ。ここで言う「質量」とは「静止質量」の事を指す。静止質量とは止まっている状態での質量。動き始めたら質量があるかもしれない。 質量ゼロのはずの光にも「エネルギー」は存在する(「光エネルギー」と呼ばれる)。 電子レンジで物が温まるのも太陽の光が暖かいのも、リモコンでテレビが操作できるのも全ては光エネルギーのおかげだ。この矛盾を解決するために「静止質量」と言う言葉を使う。つまり「少なくとも止まった状態では質量は無い。しかし、エネルギーがあるのだから動き始めたら質量を持つかもしれない」と言うようなものだ。 「光には質量が無い」といってきたが、あるかないかはわかっていない。「光が光速になれる以上、光に質量がないと考えなければ理論的におかしい」ということにはなっている。


1 コメント

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不可思議な話ですね。 (S.T)
2021-03-24 09:13:42
「静止質量」と言う言葉、つまり「少なくとも止まった状態では質量は無い。しかし、エネルギーがあるのだから動き始めたら質量を持つかもしれない」と言うようなもの。面白い表現だね。
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