ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【必要なことは表紙に書け】難波先生より

2015-06-23 18:38:36 | 難波紘二先生
【必要なことは表紙に書け】
 Amazonから大きなダンボール箱で10冊の本が届いた。ハードカバーは2冊で他は文庫をふくめてペーパーバックだ。ところがどの本も、表紙の上に全体を覆う紙カバーがあり、さらにその上に帯がある。しかも最近では幅45ミリの細帯から60ミリの広帯に変わりつつある。
 帯やカバーに書かれた文句や情報は、本屋で平積みにされないかぎり、意味がない。

 しかし、ほとんどの新刊書は本を置くスペースがないから、書棚に縦置きされ、カバー背表紙しか目に触れない。図書館では帯やカバーは破棄して、本来の表紙だけにし、背表紙にラベルを貼って書架に陳列する。だから本当に大事なことは表紙に印刷しておくべきだ。

 買う方の観点からすると、ブックエンドに挿んだ本の帯は邪魔になってしかたがない。本をラックに戻す時にたいてい斜め上から差し込むが、帯に引っ掛かって邪魔になる。ついうっかり差し込むと帯が破れる。
 左は河出書房新社の近刊。この黄色い細帯は邪魔者以外の何ものでもない。右は岩波の新刊。帯が邪魔して下の文章が読めない。(写真1)
(写真1)
 帯は折りたたんで表紙裏のカバーに挿むという人もいるが、そうなると本が厚くなり、収納スペースを食ってしまう。ともかくカバーと帯はムダだし意味がない。

 いずれも図書館に入るとこうなる。(写真2)
(写真2)
 こんな死に装束みたいな、白くのっぺらぼうな本や手垢ですぐ汚れる文庫を手にとって借り出そうという利用者がどれほどいるだろうか?

 その点、洋書のソフトカバー本はどうなっているか。(写真3)
(写真3)
 左はBJ ギブ「脳ガイド」の表紙、右はR コゥリー「”もしも”の軍事史」の表紙で、ビニール・コートしてあり、汚れたらウェットティシューで拭けばよい。デザインもチャーミングだ。

(写真4)
 写真4の左はバートランド・ラッセルの「なぜ私はキリスト教徒でないのか」、右はスチーブン・ピンカーの「ブランク・スレート」、真ん中はBJギブの「脳ガイド」のペーパーバック裏表紙だ。丸の内丸善で買ったギブの本は、本の紹介文の上に、無神経にも丸善の大きなラベルが貼られ、文章の一部が読めなくなっている。
 表紙が薄いから「ソフトカバー」本という。それにカバーや帯を付けることは、洋書ではやらない。図書館の司書も、棄てる手間ひまが省けて助かる。

 これらの洋書は、すべて詳細な文脈索引と大量の参照文献がリストアップされており、350~450頁で価格は英ポンド(ペンギンブックなど)で10ポンド、図版入り上質紙本で米ドル20ドル弱である。(P.ワトソン「The Modern Mind」など850頁で、たった19ドル。)

 良書は口コミで売れる。見てくれではない。6/10日経は、「2015年上半期のヒット商品番付」で、定価5,940円のトマ・ピケティ「21世紀の資本」(みすず書房)が14万部を突破し、「東の大関」だと報じている。書籍ではこれだけが幕内に入っている。

 洋書に比べて和書は、中身も裸身もみすぼらしすぎる。いたずらに厚化粧をして、値上げをするよりも、洋書ペーパーバックにならい索引・文献を充実し、価格を下げる努力をするべきだろう。本当の付加価値をつけて、本を売ってもらいたいものだ。
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