ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【団地】難波先生より

2013-04-27 12:21:17 | 難波紘二先生
【団地】昔、「向こう三軒両隣」という言葉があった。確かNHKラジオの番組があって、その主題歌にもあったと思う。おぼろげな記憶では巌金四郎が人力車の車夫の役をやっていた。WIKIを見るとタモリのテレビ・ヴァラエティのことしか載っていない。


 で、あれは路地を挟んで向こう側の3軒と自分の家の両隣が、「隣組」でお付き合いをしていた範囲。下町だと、お砂糖や醤油の貸し借りをしたり、お裾分けをしたりと、準家族的な付き合いをしていた。これは高度成長以前の町の暮らしだ。


 その頃は「団地」はなかった。官員さんとか一流企業社員には官舎とか社宅があった。そこに暮らすか郊外の高級住宅地に暮らすかが普通のサラリーマンの夢だった。が、一流企業社員になるのも、郊外の高級住宅地に家を買うのも、まず無理だった。
 高度成長経済が始まり、10年位すると実際に所得が倍増し、田中角栄『日本列島改造論』(日刊工業新聞社, 1972)が出た頃、土地ブームが起き、広島市周辺でも大いに団地開発が行われた。50坪くらい土地に建て売り住宅を建てたものだったが、ローンが普及していたので若い世代によく売れた。
 たいてい公共輸送機関が不便なところにあったが、自家用車が普及していたから、居住してもあまり不便さがなかった。


 官舎や社宅だと、夫の職場での身分が妻のご近所づきあいにまで影響するから、そういう煩わしさから逃れて、より自由に暮らしたいという願望もあっただろう。
 が、総じて見ると、「団地族」は団塊の世代の少し前から、1960年生まれくらいまでの、ある世代に集中している。いま団地で定年を向かえている人は、1953年生まれか。1945~1950生まれが主体だとすると、いま68~63歳であろう。


 その団地の住民の高齢化、過疎化が進んでいるというので、地元紙が「連載特集」をずっと組んでいる。住民が定住していて、家の売買がないのだから、高齢化と過疎化が進むのは当たり前だ。育った子どもは団地に戻ってこないし、便利な都心のマンションに住む。
 団地の良いところは、庭付きで、人間関係が希薄なところにあったので、下町の「向こう三軒両隣」のようなわが家の台所事情までさらけ出すようなお付き合いはしない。今のアパートだと相互の付き合いもなく、孤独死はまれでない。団地だともっとひどいだろう。だからといって、団地を50年前の昔に戻すことはできない。


 欧米にも団地に似た住宅地はある。しかしそれは日本のように碁盤目のような区画になっていない。広いメインストリートとそれに続くわざと曲げて車のスピードが出ないようになった、個々の家の前を通る生活道がある。この道路から家の前庭を通り、玄関につながる歩道と、車庫につながる道路が分かれている。車庫には内部に入口があり、ドアを開くとキチンに通じている。車庫には大型の冷凍冷蔵庫が置いてあり、牛の半身を買ってきて丸ごと入れてある。


 家の後ろにも広い裏庭があり、観賞用や果物用の樹が植えてある。バードフィーダーなんかも下げてある。
 道路は曲がっているから自動車にはねられることはない。車道の脇には散歩や自転車用の歩道が付いている。


 住宅の敷地は300坪はあるだろう。建物も広く、かつ耐用年限が長い。家は2階建てだが地階があるから、建坪で70坪くらいある。100年前の住宅を見せてもらったが、ちゃんとダクトスペースがあり、水道、下水管、ガス管、電線、電話線はここを通るようになっていた。配管をやりかえるのは、非常に簡単である。また100年経っていても商品価値があまり落ちない。


 もっと高級な団地では、住宅地全体がフェンスで囲まれていて、メインゲートにはガードマンがいる。不審者は侵入できないようになっている。
 日本の団地も造るときに、先の先まで考えておけばよかったのだが、当時の購買層から見て300坪の土地付百年住宅は、とても売れなかっただろう。



 しかし、「団地再生」には団地そのもののグレードアップが必要不可欠のように、私には思われる。
 宅地の面積を3~5倍にひろげ、道路にカーブをもたせ、車道と歩道をわけ、生活道とメイン道路を区別する。
 家の前後に広い庭をもうけ、家庭菜園がやれるようにする。家は耐久性があり、メインテナンスに費用がかからないものにする。こうすれば団地は高級住宅地に一変するだろう。
 しかしこれはマンションの建て替えと同じで、(まだマンションの場合は、法律があるからよいが)、団地で住民の合意を取り付け、一時立ち退きして、土地そのものから再開発するとなると、実行は非常に困難だろうとも思う。
 しかし、小手先の対策では衰退を免れないことも確かだ。
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