ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【献本などお礼】難波先生より

2014-08-11 13:08:39 | 難波紘二先生
【献本などお礼】
 Ⅰ. Googleニュースで「京都桂川の水位が危険レベルにまで上昇した」と報じている。鴨川は有名だが、桂川はあまり歴史に登場しないので知らない。京都の西は太秦の映画村までしか行ったことがないためだ。Googleマップで調べると桂川は鴨川と合流しても名前を変えず、琵琶湖から来る宇治川、伊賀から来る宇治川と(ちょうど広島県三次市で西城川、馬洗川、江川の3つが合流するように)合流して、以後、淀川と名前を変える。

 その桂川右岸(西京)にある「京都桂病院」の病理医(副部長)安原裕美子さんから、「病理解剖をさせていただいた遺族への病理医による病気説明」についての取り組みを報じた「読売」記事と専門誌に発表した論文の別刷3篇をお送りいただいた。お礼申し上げます。
 この病院には、血液内科があり専門医が5人いるから立派な総合病院だ。ベッド数は500床近くあるそうだ。「1人病理医」だそうだが、業務量を見て驚いた。
http://katsura.com/department/treatment-department/pathology.html

 2013年で、組織診断数8,300件、術中迅速診断数313件、細胞診件数9,300件、剖検18体、CPC(臨床・病理カンファレンス) 16件というのは、私が現役だった昔に比べて剖検数こそ少なくなっているが、大変な仕事量だ。
 1977年、私が米国留学を終えて復職した翌年の呉共済病院(約350床)「臨床病理科」の医師数は医長1、医員2(1人は研修医)の合計3名、技師数は技師長1,技師4の合計5名で、組織診断件数1,610件、細胞診件数約3,000件、術数迅速約100件、剖検数は多く112体もあった。CPCよりも外科系との「術前カンファレンス」を重視したので、遺族への剖検結果報告はしていなかった。まれに希望があれば、病理解剖に遺族の立会を認めることがあった。
 医師1人あたりの業務量はアメリカの大学病院なみだった(『呉共済病院七十五年史』)。

 あの頃は、病院長に「病理はもうからん」といわれ、「では院内通貨を発行して下さい。学会発表、論文のお手伝いなど病理科のサービスに対して、その都度、通貨を払って下さい。病理科が臨床科のヘルプを求めた場合、同じように院内通貨を支払います。年度末に病理科に貯まった通貨を現金に引き換えて下さい。病理単体だと黒字だとわかるでしょう。今の赤字は保険点数システムのせいです」と反論したものだ。
 2008年に「病理標榜科」が実現し、医療の品質管理における病理業務が保険点数上でも評価されるようになったから、「病理はもうからん」というような院長はもういないだろう。そうした時代の変化もあって、女性病理医が増えていると聞いた。
 桂病院では、「遺族への説明会」は解剖例ほぼ全例について、剖検直後と顕微鏡検査の終了後に2回おこなわれているそうだ。くれぐれもオーバーワークでダウンしないように気をつけてほしいと思った。

 Ⅱ.国立病院機構「呉医療センター」の谷山清己院長(病理医)から、「個人業績集」(2014/7)と著書(谷山清己・中西貴子)『乳がん患者の心を救う新たな医療:病理外来とがん患者のカウンセリング』(日本評論社, 2013/3)のご恵送を受けた。厚くお礼申し上げます。
 呉医療センターは旧国立呉病院で病床数700床(うち一般650床、精神科50床)だが、剖検体数は2013年で18体と京都桂病院と変わらない。他の数値は件数表示でなく「保険点数額」表示になっているので、他と比較できないのが残念。13年の総収入が1億7,000万円で、うち約1/3が病理医の「診断料」になっているから、まさに時代が変わった。
 谷山先生は、女医である奥さんが乳がんを患い「乳房温存療法」を受けられた経験もあり、本書の前半1/3「病理外来のあけぼの」は事実を元にした小説になっていて、とてもよくわかります。後半2/3は病理外来を受診してセカンドオピニオンを求めてきた事例17例について、これもわかりやすく紹介されています。
 巻末には非常にていねいで充実した「用語集」もついており、さすが「病理外来」のパイオニアである谷山先生の著作だな、と感心しました。「医者を選ぶのも寿命のうち」。お薦めの一冊です。
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