ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【索引の効用】難波先生より

2013-01-16 12:58:00 | 難波紘二先生
【索引の効用】この間に買いこんだ本で、身動きがつかなくなった。そこで少し身の回りの本や積ん読の雑誌を整理した。
 奥の書棚を整理して、使わない本は箱詰めして重ね、空いたスペースに分類して本を移した。
 そしたら、かなりスッキリして利用しやすくなった。
 重い本も沢山あり、動き回ったので身体が熱くなった。

 これは熱力学第二法則でいうと、「書庫」という系にエネルギーを注入することで、エントロピーが減少して、「秩序」が生まれたことを意味する。整理とは秩序を生むことであり、その秩序は脳内にある情報(「このように配列する」という意図)が外に出たものだから、「エントロピーの減少」=秩序=情報なのである。

 そのエネルギーは筋肉収縮により生まれたもので、その際に余分な熱エネルギーが発生して「体温上昇」となる。
 「熱い」と感じるわけである。このように外部エネルギーを注入しない限り、「整理=秩序」はできない。
 作業は完全に「熱力学第2法則」に合致している。
 といっても、私が見たら「片づいている」ので、他人さまから見たら混沌であろう。

 すっきりしたところで、「ギリシア神話にある牛小屋の大掃除をする話」を思い出した。
 が、どこの話だったか、掃除人は誰だったか、さっぱり思い出せない。

 場所はクレタ島だったような記憶がある。これだけで探すのは困難だ。

 が、ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話』(角川文庫)には、索引があったのを思い出した。
 そこで「クレタ島」から、探したら時間はかかったが、
 「建築家ダイダロスがクレタ王ミノスのために作った迷宮があり、そこにミノタウロスという怪獣がいて、アテネ人はミノス王の命令で、この怪獣に捧げる生け贄を差し出さなければならなかった。
 そこへ英雄テセウスが怪物退治にやってくるが、ミノスの王女アリアドネ―がテセウスに恋をして、彼が怪物を剣で斬り殺したあと、無事に迷宮から脱出できるように、導きの糸を用意した」
 という話だった。

 「これは違ったな」と思い、索引をさらに見て行くと、ヘラクレスに眼が止まった。
 「これだったかも知れないな」と思い、ページを繰ると果たしてそうだった。
 「エリスの王アウゲイアスは3,000頭の牛を飼っていたが、その牛小屋は30年間掃除したことがなかった。
 英雄ヘラクレスは、アルペイオス川とペネオス川の流れをこの小屋に流し込んで、たった1日で掃除してしまった。」

 「ペネオス川」というのは、行ったことがある。ギリシアのペロポネソス半島にある川だ。
 「エリス」もぼんやりとした記憶があるが、はっきりしない。
 幸い、『誰がアレクサンドロスを殺したのか』(岩波書店)を書いたときに、ギリシア歴史地図と詳しい文脈索引を人名、地名、事項について作っておいた。
 そこで本を開いて索引を見ると文脈索引だから、本文を見ないでも答えがでた。
 エリス=「-平原、アルカディア西部、-戦場」とある。
 ペロポネソス半島西部のアルカディア地方にあった古代の王国だ。エリス平野は古代オリンピックの会場で、平野の北西部に古典ギリシア時代にはエリスという都市があった。

 ヘラクレスがアウゲイアス王のエリス王国を攻めた時に、双子の弟イフィクレスが戦死している。その遺体を兄が運んで埋めたところ(火葬だったかもしれない)がペネオスだ。ペネオス川はその近くを流れている。
 その後で、ヘラクレスは王の牛小屋を掃除したのだ。(私の書庫の片付けとは大違いだった!)

 中村勘三郎と同じ病気であっけなく死んだ友人のT君が生きていれば、ギリシア語に堪能だったから電話一本ですぐわかることを、時間をかけて調べた。(中村勘三郎がん治療の妥当性については、「文藝春秋」2月号で、慶応大病院の近藤誠が詳しく論じている。)

 自画自賛になるが、このように文脈索引は、検索の手間を大いに省いてくれ、辞書としても本が使えるのがよい。
 「著者だから、書いたことは覚えているだろう」といわれるかもしれないが、半年したら何を書いたか忘れる。
 だから索引が重要なのである。今回これを使って読みなおしてみると、実に錯誤が多い。初版の時には時間がなく、索引をたどって文を点検するというところまで、手が回らなかったからだ。

 東京から電話があり「血液型と性格」(仮題)の原稿が、出版社編集者のレベルをクリアしたそうだ。だが、中学の同級生に原稿を読んでもらったら、「難しくてよくわからない」というから、かなり書き換える必要があるだろう。竹内久美子、藤田紘一郎批判も、トーンダウンしないといけない。
 索引は事項、人名を「文脈索引」として整備し、引用参考文献は列挙しておく方針だ。また目次には小見出しと対応するページ番号をつける。(多くの本は目次にこれがないので、必要箇所にすぐにたどり着けない。)要するにネットで採用されている「ハイパーテキスト」(クリックすればすぐ目的の場所に移れる)のコンセプトを、紙本でできるだけ実現できないか、というものです。
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