ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】山田風太郎「エドの舞踏会」/難波先生より

2016-02-08 15:40:41 | 難波紘二先生
【書評など】
1)エフロブ「買いたい新書」の書評にNo.307:山田風太郎「エドの舞踏会」(ちくま文庫)を取り上げました。東京医大在学中から推理小説を書きはじめた風太郎は,1950年代に「くのいち忍法」シリーズで忍者ブームを巻き起こし,流行作家となった。その後,実在の人物を登場させる「魔界転生」など江戸もの,室町ものに転じた。
 実在の人物について,徹底的に資料調査を行い,登場人物の年表を作って歴史の空白を見つけ,そこに「あり得たかも知れない」つながりを設定する「明治もの」は80年代,彼が還暦をむかえる頃に始まった。
 本書は「明治もの」の代表作と言ってよいにもかかわらず,表題の「エド」のため江戸ものと誤解されてきたフシがある。(仏海軍士官P.ロティの旅行記「秋の日本」の章名に由来することは結末で明らかにされる。)私も題名から「江戸の舞踏会」という訳のわからん本だと長年誤解していた。
 明治18年,伊藤博文内閣の外相井上薫が主導して,東京日比谷に大社交場「鹿鳴館」が創られた。西洋式の夜会や舞踏会を催して外国人を招き,踊ったり食ったりと外人と対等に付き合い,「不平等条約」の改正に応じさせようとしたのだ。晩餐会に夫妻で出席するのは西洋の原則。ところが明治政府の要人(元勲)たちの伴侶の多くは芸者とか妾出身が多かった。この小説の面白さは,「鹿鳴館外交」のため日陰の身から社交界の表舞台に登場せざるを得なくなった元勲の妻たちを描くことで「明治という時代」を逆照射し,立体化しているところにある。
 以下はこちらに、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1452228908

2)献本など=
★「医薬経済」誌2/1号の献本を受けました。厚くお礼申しあげます。
 この号で面白いのは「肝移植手術問題で三井物産に<誤算>」という、田中紘一がらみの「神戸KIFMEC病院」事件を詳報した記事だ。記事では「医療ツーリズム」の市場が年間13兆円にのぼると試算し、田中紘一とタグを組んだ三井物産の思惑が語られている。
 結果としては、「生体肝移植」の相談窓口であったシンガポール「生体肝移植クリニック」の閉鎖、「神戸KIFMEC病院」も9例の手術例のうち5例が死亡という惨憺たる成績の結果、閉院に追いこまれた。
 田中紘一のパートナー(プロテジェ)だった山田貴子副院長が身を引いたKIFMEC病院が再開するのは難しかろう。
 あと鍛冶孝雄「読む医療」が、安保徹「長寿革命」(実業之日本社)を取り上げていたのにつよい印象を受けた。免疫学者で新潟大学名誉教授の安保徹氏は、「胸腺外分化T細胞」の発見者として知られる。だが天才アインシュタインの言説が、物理学以外に当てはまるとは思えないように、免疫系を自律神経の作用とストレートに結びつける「安保理論」にも問題がある。
 私は免疫学における安保氏の功績を評価するだけに、同氏が学説を通俗化し、学問的厳密さを失っておられるとしたら、大変残念だと思う。
★★麻野涼「北からの使者」(文芸社文庫、2016/2)の著者献本を受けた。厚くお礼申し上げます。麻野涼は高橋幸春氏のペンネームで、高橋さんは実名でノンフィクションを、ペンネームで社会派ミステリーを書いています。(と思っているが、カバーの著者紹介によると後者もペンネームの可能性があるようだ。)実力のほどは修復腎移植と腎臓売買をテーマにした前作「死の臓器」がテレビドラマ化されたことでも明らかだ。
 「北からの使者」は朝鮮近現代史を背景に、「在日」の起源、集団帰国、日本人拉致問題、北朝鮮の現状なども書き込んである。「金正日暗殺事件」がテーマになっており、フレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』を彷彿とさせる、サスペンス・ミステリーになっている。あらためて「買いたい新書」で本格的書評に取り組みたい。
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