ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【時代が変わる】難波先生より

2017-05-15 15:16:47 | 難波紘二先生
【時代が変わる】
 「燃えて散る間に時代が変わる まして女は なおさらに」
 隅田川の花火を唄った、昭和10年の流行歌「明治一代女」の歌詞を私は間違ってこう憶えていた。正しくは「時代」でなく、「舞台」だった。「昭和の流行歌」CD20枚セットがあり、392曲を一旦パソコンに取り込み、iTuneで再生していたのだが、いま使用中のAir Macにはこの歌が見あたらない。ファイルがどこかに紛れ込んでいるのだ。

 4/7(金)「日経」の「広告費、ネット初の首位。21年間頂点のTVと逆転:17年 世界市場予測」という記事には驚いた。英調査会社の予測では、今年中にネット広告(モバイルやSNCを含む)の売り上げがTVのそれを追い抜いてトップになるという。3位が新聞、ついで雑誌だ。
 ネット広告費は2050億ドル(前年比13%増)、TV広告費は1920億ドル(1%増)という。
日本の広告費の媒体別集計もやがて報じられるだろう。
 ネット広告の利点はターゲットを個人に絞って、情報を届けられる点にある。昔のTVコマーシャルのように「トイレ・タイム」に利用されることはない。TVコマーシャルは15分おきにあったから、学生の集中力が15分しか続かなくなった。

 そこで、「講義では15分ごとに、息抜きのジョークをいれろ」とか教授会で議論になったことがある。結局、100分授業を90分に短縮し、休憩時間を長くするという方向で落ち着いた。(国立大だから、全国的に90分授業が導入された。)「ゆとり教育」が花盛りの頃だ。
 だから今の大学生は、昔の学生に比べて40分も短い授業(4コマ授業の場合)しか受けていない。
 上映時間が4時間近い、超大作映画「風と共に去りぬ」(原作=マーガレット・ミッチェル)、「シンドラーのリスト」(監督:スティーブン・スティルバーグ、195分)や「人間の条件」(原作=五味川純平、監督=小林正樹、全6巻、9時間31分)を観通すことのできる大学生が、今いるだろうか?

 確かに最近はJRや市電に乗っても、若い人や中年の女性まで、みなスマホを読んでいる。新書や文庫を読むのは、いても年寄りばかりだ。駅の構内や電車に乗り換える際も、「歩きスマホ」は当たり前になった。息子がプレゼントしてくれたiPadは今どこかに紛れ込んでいるが、これを車中で使っている人も最近では見かけない。私もデジカメを持ち忘れた時には、ケータイのカメラで撮影し、よい写真をメールで自分のPCに転送している。

 同じ日の「日経」は宅配便最大手の「ヤマト運輸(クロネコ)」がアマゾンの「当日配達」から手を引くことにした、と報じている。代わりにアマゾンは当日便に関しては、日本郵便を利用するそうだ。理由は人手不足だ。「ドローンでの宅配」はまだ実用化していないようだ。
 これもネット販売のせいで、物流に大きな変化が生じるという予兆だ。
 イスラム国(IS)のテロ活動もネットなくしてはありえない。

 これに加えてAIの進化も著しい。もうチェスも将棋も碁でさえも、人間の名人はAIに負けてばかりだ。ロボットも掃除、介護、接客と次々に利用されつつある。「ナショナル・ジオグラフィック」は「ポスト・ヒューマン」の特集を組んでいた。

 ロボットという言葉は、チェコの作家カレル・チャペック(千野栄一訳「ロボット(R.U.R.)」岩波文庫)による。1920年刊行の原題は「ロッスムのユニバーサル・ロボット」だが、彼も、約100年後に世界が実際にそうなるとは、夢想もしなかっただろう。
 チャペックはある朝、郊外の電車に乗ったら通勤客が満員で「人間が、機械が並ぶようにぎっしりと詰まっていた」のを見て、「労働する機械」のアイデアを思いついたと書いている。昔、東京の国電で駅員が客の尻を押して、無理やり車内に詰めこんでいた。身動き出来ないのだから昨今多発する痴漢行為もしようがなかった。
 通勤ラッシュの「すし詰め」を見てさえも、日本の文学は新バージョンの「ロボット」を生めなかったのだと思う。
 
 チェコ語でrobotaは「労働」を意味する。英語のlabour(米:labor)に相当するのだが、両者間にはRとLの置換が起こっている。同じスラブ語族のロシア語でもrabotaと綴る。どうしてこの重要な子音の変換が生じたのかわからない。
 ともあれ、時代は大きく変わりつつある、と感じた。


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