ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【新聞溜め読み】難波先生より

2015-05-07 11:15:49 | 難波紘二先生
【新聞溜め読み】
 4/21(火)は良い天気で、遅いブランチ後に、クラス会で外泊している間に溜まった土日の新聞と今日の新聞の束を抱えて、バルコニーのテーブルに移動した。見上げると南の青空に、飛行機雲が一本あり、帯みたいに太く広がりながら、ゆっくりと東に流れて行く。
(写真1は十字を形成した珍しい雲)
(写真1)
 流れる雲を見ていると、ふっと心が吸い込まれそうな気がして、啄木が城跡で詠んだ2首を思い出した。
 「城址の石に腰掛け禁制の 木の実をひとり 味わいしこと」
 「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて 空に吸われし 十五の心」
 を組合せ、
 「ベランダの椅子に腰掛け行く雲の 空に吸われし 十五の心」
 とした方が、いまの私の心境に近いな、と思った。
 「空に吸われし…」以下の句は、啄木ならではの表現で、パラフレーズは困難だ。

 日曜日の新聞「読書欄」は私の情報源として重要だ。19日の新聞は珍しく、4紙で16冊も切り抜いて読むに値する書評があった。「毎日」の中村桂子など、
 E.O.ウィルソン『若き科学者への手紙』(創元社、1620円)
 大栗博司『数学の言葉で世界を見たら』(幻冬社、1944円)
と2冊も紹介してくれている。

 ウィルソンはハーバードの生物学者で、アリなど社会性昆虫の生態を「集団遺伝学」の方法を用いて研究し、「社会生物学」という新分野を拓いた人だ。
 その主著「Consilience: The Unity of Knowledge」は、角川から翻訳が出たため、『知の挑戦:科学的知性と文化的知性の統合』(角川書店、2001)というピンぼけタイトルになっていて、訳者の山下篤子が気の毒だ。
 ウィルソンは、「現在、進行中の知識の断片化とそれに由来する哲学における混迷は、現実世界の反映ではなく、学問のあり方による<人工産物(アーティファクト)>である」という、基本認識を示している。
 その上で目標とするのは、断片的知識を単に寄せ集めるのではなく、それに内在する論理や法則や蓋然性の高い仮説を枠ないし網として、自然科学の方法で、社会科学や人文科学の知識をも「統合」しようという壮大な試みである。
 ウィルソンは「統合(原語=コンシリエンスは<自然の秘密を共有するもの>の意)」の4つの柱の一つに「倫理学」を置いており、中村の書評では「労働倫理」がピックアップされているので妥当な書評だと思う。(他の3つの柱は「環境政策学」、「生物学」と「社会科学」)
 大栗は数学者で「父から娘に贈る数学」という副題が付いている。これも読んでみたい。

 ひと頃は、新聞書評で本の内容を紹介せず、著者を誉めたり、自説を開陳したりという下らない書評が多かったが、最近は影を潜めたようで、大いに結構だ。
「中国」は学生時代にお世話になった「三一新書」の元編集者が、
 井家上(いけがみ)孝幸『三一新書の時代』(論創社, 1728円)
という回想録を出したとインタビュー記事を載せている。これも読みたい。
 記事によると父親が徴兵で陸軍にいて、広島で被曝、高田郡向原町(現安芸高田市)の「陸軍病院向原分院」に収容されたという。
 当時、わが家は向原町に疎開していたのだが、陸軍病院分院があったとは知らなかった。

 浅田次郎『ブラック オア ホワイト』(新潮社)
 ミチオ・カク『フューチャー・オブ・マインド』(NHK出版)
と洋画のタイトルみたいに、本の題名が英語のカタカナ表記というのが増えてきた。
 「No Nukes」編集部編『No Nukes』(講談社)
 ウエブスター人名辞典で日本人作家・映画監督などの作品を調べると、例えば川端康成なら「Yukiguni」、「Izu no Odoriko」など、小津安二郎では「Umarete wa mitakeredo」、「Tokyo monogatari」などと、日本語表題がそのままローマ字表記で載っている。
 これが「国際標準」なのであり、そろそろ日本の出版社や新聞社も「横書き表記と現地音主義」にフォーマットを変えたらどうか、と思う。

 再生医療と人間のクローン生殖を扱ったアルダス・ハックスレー(著名な生物学者ジュリアンの弟)の近未来小説「Brave New World」(1932)など、日本語では「素晴らしい新世界」と訳されていて、原題を知らないと外国人と会話できない。
 H.G.ウェルズの「宇宙戦争」も同様で、「The War of The Worlds」(1898)が原題であり、宇宙で戦争が起こるのではない。異なった「世界システム」が地球上で衝突して戦争が起こるという話だ。

 重要と思った記事はすべて切り抜いて、A4クリアー・ホルダーに保存するが、A4サイズに納まらない記事が多くて、泣かされている。整理学の基本は情報媒体の規格化にあるのに、横幅が20cm以上あり、折らないとフォルダーに入らない記事が意外に多い。そのくせ上下には余白がたっぷりある。見出しが大きすぎて縦が29.5cm以上あり、小さくすれば、A4サイズに納まるはずなのに…、と思う記事も多い。

 4月初めは「新聞週間」だったが、「週刊新潮」4/23号を読んでいて、「“信頼度10%台“に蒼ざめた朝日新聞<社内報>」という記事があり、驚いた。ビデオリサーチ社の「全国新聞総合調査」によると、15〜69歳の一般個人を対象とした47都道府県の調査(調査人員数不明)で、全国紙5紙のうち、信頼度1位は日経で、朝日は昨年の2位から5位(10%台前半)に転落したというもの。
 この数値は公表されていないので、ネットで新聞ABC部数の変化をみた。以下の記事がそれに該当する。
http://www.garbagenews.net/archives/2141038.html
 2014年「後期」における各紙の販売部数と「対前期」の増減をみると、
 読売=926.4万部 (—3.11%=29.8万部減)
 朝日=710.1  (—4.47%=33.3万部減)
 毎日=329.9  (—0.85%=実減部数記載なし)
 日経=275.1  (—0.69%=同上)
 産経=161.5  (+0.27%=実増部数記載なし)
となっており、原発問題と慰安婦問題で朝日だけが凋落するといわれていたが、朝日だけでなく読売も部数を大きく減らしている。
 4/24「日経」は「電子版有料購読者数が40万人を超えた」と報じている。うち紙版との併読は約20万人だそうだ。幸島のニホンザルが芋を洗って喰うことを始めたのは、まず小猿に始まり次いで次第に親猿に波及したそうだ。日経は文書処理ソフト「エバーノート」と電子記事を連携させるサービスを3月から始めたそうだ。
 
 これも若い世代に紙新聞を読まず、ネットで情報を得たり、オンライン契約で新聞を読んだりする人が増えて、「紙新聞離れ」が起こっているためではなかろうか。
 私もiPADを使いこなしているある医師から、「先生、紙新聞はもう旧いですよ。iPADで自由に切り抜きと保存ができますよ」と言われている。エバーノートの使いかたもデモしてもらった。確かに、紙新聞は切り抜きと保存に不便だし、古新聞の始末に困る。

 前は、町営の「エコセンター」があり、そこへ持参すればいつでも引き取ってくれたのに、合併して「東広島市」になったら、指定日の指定時刻まででないと引き取ってくれないようになった。行政サービスが明らかに低下した。
 おそらく独身でアパート暮らしの若者も、おなじ悩みをかかえて、新聞を取らないのではないか。この分では、新聞切り抜きも今年いっぱいということになるかもしれない。
<付記=新聞販売店主にこの話をしたら、毎月、古新聞の束を引き取りに来てくれることになった。宅配制と古紙回収をセットにしたらどうかという、私の主張に同意してくれた。>
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