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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【民族意識】難波先生より

2012-10-08 14:23:18 | 難波紘二先生
【民族意識】月曜日の「中国」に、西安にある阿倍仲麻呂の記念碑がペンキで汚された、という記事が写真入りで載っている。
 仲麻呂は770年に72歳で中国に没した遣唐留学生だ。玄宗皇帝に寵愛され、日本に帰してもらえず、南支那の地方長官までやっている。717年、19歳で唐に渡って、それからずうっと中国に住み、李白、王維らの文人と交わり、中国のためにつくしたのに、死後1,200年経ってもまだ「日本人」として憎まれるとは、仲麻呂が可哀想だし、この仕打ちは常軌を逸しているというしかない。


 「自意識」というものは他人と対峙して産まれるもので、相手がいなければ嫉妬したり、劣等感を抱いたりすることもない。「民族意識」とは国民の自意識であり、それは他国と対峙して初めて産まれる。
そういう意味では韓国も中国も、経済的に豊かになり、近現代史上初めて、日本とまともに渡り合えるようになって、間違っているとはいえ「民族意識」が産まれたのであろう。


 日本の場合、「唐ごころ」に対して「やまとごころ」という言葉が生まれたのは、10世紀末、菅原道真による遣唐使廃止の頃だろう。12世紀、平安時代の中期になり、「今昔物語」と「大鏡」にはじめて出てくる。中世温暖期が続き、食糧生産も増加し、国内の治安も向上して、死刑が実質廃止になった時代だ。まあ、平安時代のほとんどは鎖国に近い。


 つぎに民族意識が高揚するのは鎌倉時代、「蒙古襲来」の時だ。この時のアジテーターが日蓮である。
 それから幕末の民族意識の高揚がある。この高揚期がおよそ40年続き、そのピークからの反動期が1905年から45年までの40年間である。


 韓国の場合、李承晩独裁が終り、朴正煕大統領の時代に経済成長に入り、民主政治を実現して、およそ40年である。まあ、今が民族意識高揚のピークだろう。
 いまG20に入れたとか1人あたりGDPが日本についだとか、有頂天になっているが、いまが一番危ない。15年ほど前のアジア通貨危機では、国家破産して、IMFの管理下におかれた屈辱はもう忘れているようだ。
 そのうち厚かましくも「独島を買ってくれないか」と言ってくるだろう。


 中国の場合、毛沢東が死んで小平の時代に入ってから、およそ30年である。まだ民族意識は高揚するだろうが、「一人っ子政策」による人口構成のひずみ、急激な都市化による無戸籍都市下層民(二億人ともいわれる)、共産党一党独裁など、構造的な大問題を抱えている。海外資本の撤退やバブルの破裂がいつ起こるか知れない。あと10年が山だろう。この乗り切りに失敗したら、クラッシュ・ランディングするだろう。


 日本も、1,000兆円の国債残高を抱え、その利払いのためだけにでも新規国債を発行なければいけない状態だ。政府財政は、租税収入が予算のたった20%しかないというありさまで、昭和20年、敗戦の国家予算構成と同じ状態だ。来年、消費税を3%あげれば、消費は冷え込み、不景気はさらに悪化し、小規模店は資金繰り悪化で倒産が続発するだろう。


 景気が良くなるということは、基本的には通貨の回転速度が速くなるということである。1万円のお札が365日間に365の個人または企業間を動けば、365万円の取り引きになる。各自が手元に10日間おいて、使い道を考えていたら、36万5,000円の取り引きにしかならない。国全体ではGDPは1/10に縮小する。通貨供給量を増やしてインフレを起こしても、将来に不安があるかぎり、個人消費も設備投資も増えない。
 だから小手先の金融政策や財政出動や公共事業には、ほとんど意味がないのである。ケインズ経済学の時代はもう終わっている。対処するには、思い切った社会改革が必要だ。


 ローマはローマ市民に無料の食糧配給、公共浴場と見世物の提供を行った。いわゆる「パンとサーカス」である。それが可能だったのは、たえず領土を拡張し、奴隷を確保し、食糧を入手できたからだ。当時の輸送の限界まで帝国が拡張したとき、このシステムは機能しなくなり帝国の崩壊が始まった。この時、ローマ市民の50%は国家による「生活保護者」だった。
 ロムニー候補が「アメリカの中間層の47%は税金を納めていない」とそれ自体は正しい事実を指摘したが、政治的発言として問題になった。税金を納めない中間層は「大きな政府」による社会保障を求めているからだ。


 日本でも税金を納めていない人、医療費が無料の人、生活保護などの公的扶助を受けている人は、調べてみると意外に多い。私は71歳だが、税金も納めているし、医療費も3割自己負担をしているし、何とか通院回数を減らして、医療費を削減しようと努力している。が、多くの人はそういうコスト感覚がないように思う。国家というものをドラえもんの「なんでもポケット」かアラジンの魔法の壺のように考えているようだ。
 ある政党など、自系列の病院と結託して、生活保護の認定を推進し、それで一票をえているという。けしからん話だ。


 新左翼は、労働者から見放されて、行き場を「障害者解放運動」に求めた。「青い芝の会」を立ち上げたのは彼らである。そういう小手先の運動が革命運動になるはずがない。今の某政党は、解放同盟から見放され、労働者からも見放され、そういうところに議席維持の基盤を開拓しているようだ。
 いま、日本で所得税、住民税、固定資産税、健康保険料、介護保険料という税金をすべて払っている成人人口はいったい何パーセントあるのだろうか?
 印象では半分以下のように思われる。


 30年前、香山健一は「日本の自殺」を書いて、ローマ帝国の崩壊原因を分析し、日本もそうなる恐れがあると警告したが、その可能性が高くなりつつある。

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