ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【テグスとクスサン】難波先生より

2017-10-17 12:26:19 | 難波紘二先生
【テグスとクスサン】今年の4月初め、「広島ペンクラブ」専務理事の吉村淳さんの三次市の実家で会合があり、トイレの窓の外の植木の枝に網俵状の大きなマユがあるのを見つけ、もらって帰った。それはこんなマユだった。(図1)
(図1=WIKI:クスサンより)
 中にはこんなサナギがいた。巨大な蛹で、いままで見たことがない。(写真1)
(写真1)
 体長の半分を占める巨大な羽根を見ると、かなり大きな蛾でヤママユガの仲間に属すると思われた。オオヤママユガ、ヒメヤママユガは我が家のダイニングの窓にも飛んでくるが、こんなマユは見たことがない。
 図鑑とネットを調べて、クスサンのマユであり「透かし俵」という異称があることを知った。俵状をしていて中が透けて見えるからだ。吉村邸でトイレの外の1本の植木なのに、数個の同じマユが認められ、不思議に思った。

 10/14「中国」が「広島県東部に大型のガ クスサン大発生、卵除去や食害に苦慮」と報じた。正確には中央北部だろう。自宅から北東約40キロの世羅町の「世羅観光農園」では栗の葉が幼虫に食い荒らされ、実がならなかったという。上下(じょうげ)町ではクスサンが乱舞し、商店街の民家壁や電柱に産卵するので弱っているそうだ。
 ああやはり大発生したか…と思った。全国他の地域でも同様の異変が起こっていることだろう。

 図鑑の記載をよく読むと、「幼虫は白く長い毛が密生しているのでシラガタロウと呼ばれ、栗毛虫とも呼ばれる」とある。これで思い出したが、クスサンの幼虫のことではなく「栗虫」と子供の頃に呼んでいた栗やクヌギの樹にいる青虫のことである。
 蝶の採取をやっていたので、昆虫図鑑はもっていたが、蝶や蛾の生態についてはまったく無知だった。小学生の頃、初めはクリムシを捕まえて釣り糸を手製で作っていた。栗の葉を啄んでいる青虫を捕まえて、頭部を潰すと糸を吐く「絹糸腺」が出て来る、これを引き出し薄めた酢につけ、引き出すと細い糸になり、そのまま待つと数メートルの透明な糸が固まる。これを「てぐす」といい、つないで魚釣りに使っていた。後にナイロン糸が出てきたが、子供はもっぱらてぐす糸を使っていた。
 「てぐす」は語源辞典を見ると「天蚕糸」と書き、「ヤママユガのテグスガの幼虫から絹糸腺を取りだし、酢酸溶液に浸け引き延ばしたものを乾燥させて製する」とあり、子供時代の製法と同じだ。テグスガというのは「蛾類図鑑」に載っていないので、ヤママユガの仲間「サクサン(柞蚕)」のことであろう。

 ナイロン糸が普及しても「天蚕糸(テグス)」という言葉が残ったので、てっきり英語由来かと思い込んでいた。サクサン(柞蚕)は明治期に中国から輸入されたもので、1940年代の終わりには、もう広島県中央の北部にもこのガは広がっていたのだ。


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