ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【海外渡航移植の問題 訂正版】難波先生より

2018-10-15 14:50:11 | 難波紘二先生
【海外渡航移植の問題】
 日本では心移植を受けるために「◯◯ちゃんを救う会」が億単位の募金を集めて米国に渡っている。これが可能なのは米国の大学や病院に多額の寄付をするからだ。
 米国は寄付文化の国で、メンフィスにある「セント・ジュード小児病院」は世界的に有名な小児病院で、外壁には寄付者の名前を書いた陶板がズラッと並んでいる。
 この病院は子どもの家族用のホテルを持っており、これも病院収入に貢献している。
 病理部長の給与は大学教授の3倍くらいある。

 昔「US腎」といって米国の余剰腎を日本に空輸してもらっていた時代がある。万波さんも別ルートで4例のUS腎を移植に使ったことがある。
 東京女子医大の太田和夫教授が日本ではその責任者だったが、弟子が「読売」に情報をリークし、大事件となり結局、太田先生は日本移植学会理事長と臓器移植ネットワークの代表を辞任した。
(木村良一「移植医療を築いた二人の男:その光と影」, 産経新聞社, 2002/8)
この事件以後、米国からの余剰腎の提供は途絶えた。
 この弟子はその後、日本移植学会の理事長になっている。

 暴力団の親分が大金を払ってUCLA(カリフォルニア大サンフランシスコ校)で肝移植を受けた話は、後藤忠政:「憚りながら」(宝島社, 2010/5)に本人が書いている。

 難病児の渡航移植の募金問題については、
筑波君枝「こんな募金箱に寄付してはいけない」(青春新書,2008/4)
が、米渡航移植について、よくレポートしている。

 スペインの死体臓器移植は40件/100万人ほどあるが、日本はその1/20しかない。これではとても「移植先進国」と言えない。
 根本原因は「和田心臓移植」が殺人であったことを日本移植学会が国民に謝罪せず、さらに「修復腎移植」を全否定したためだ。これが国民の臓器医療に対する不信の根源になっている。
 これらを謝罪しないと、日本の移植医療の前進はない。現に、臓器移植ができない日本では、「移植医」志望の医師数は急減している。現HPには会員3000名とあるが、これは「正会員」(年会費、12,000円)「正会員(コメディカル)」(同、5,000円)「賛助会員」(同5万円)の合計である。
2008年、「日本医学会」加盟の会員数は3,100人となっている。

 「認定医合格者」という表もある(これは医師の正会員しかなれない)が、県別実数や総数が隠されている。
 ちなみに中国地方のみをカウントしてみると、認定専門医数は
 岡山県=18
広島県=33
 愛媛県=13
香川県=14
徳島県=10
 山口県= 7
高知県=3
鳥取県= 3
 島根県=3
となっている。
 「瀬戸内グループ」4人の医師のうち、日本移植学会の会員で「認定専門医」になっているのは、もと呉共済病院泌尿器科部長:光畑直喜医師のみである。他は日本移植学会の会員ですらないはずだ。中には
 それでいて、愛媛県での腎移植数は中四国では常にダントツの一位をしめている。(学会誌「移植」による。
 肝臓と腎臓を足しても臓器移植の「認定専門医」数は、全国に2,500人いる「病理専門医」の数よりも少ない。病理解剖があり、総合病院である以上、病理医はほぼ全科の臓器・組織・細胞を検査・診断する。だから「病理専門医」の資格を認定しているのだ。
しかし、日本移植学会は「移植専門医」の申請資格として<必要な臨床経験数について、腎移植または肝移植領域10例があれば専門医の資格を出す」としている。
 肝臓か腎臓の移植しか知らない、外科医に出す「認定移植専門医」などという、世間をたぶらかすようなタイトルは即刻中止してもらいたい。それが社会的に責任ある学会というものだ。

 「病理専門医」は<20体以上の病理解剖経験、1000件以上の生検診断経験に細胞診の経験が必要>とされ、その上に筆記・実地の試験がある。現在の会員数は約5,000人、内1割が非医師だ。病理専門医の需要は増えており、それを目指すために医師会員数も増加している。
 これに対して、2008年に3,100人だった日本移植学会の会員数は、いま3,000人に減少している。(これは非医師会員数をふくめたインチキ数字)。現実は日本では移植ができないのを知り、学会に入会する若い医師数はもっと急減しているはずだ。

 日本移植学会は腎臓移植だけ、あるいは肝臓移植だけ、それもたった10例の経験しかない医師に「移植専門医」というインチキ資格を出していると、病理学会会員として専門医制度の確立に努力したものの個人意見として言明しておきたい。この虚偽を反省し、謝罪しないと国民の移植医療不信の解消はないだろう。

 臓器売買禁止の「イスタンブール宣言」を持ち出して、海外渡航移植を禁じても「需要があるところに供給が生じる」というのは、世の中の鉄則だ。暴力団がいまや中国での臓器移植あっせんに乗り出しているのは、衆知の事実であろう。

 これを防ぐには国内の腎臓提供数を増やすしかない。
その政策(ポリシー)として、優先順位別に、
1)修復腎移植の保険適用、
2)病理解剖死体からの腎臓利用、
3)ドナーまたは遺族への公的補助金支給
の3策が考えられる。

 今、葬式代を惜しんで「献体する」家族が増えている。大学では献体を解剖実習に利用された後、仮葬して遺骨を遺族に返してくれる。その経費はすべて大学持ちだ。(厚労省は未だに病理解剖への補助金を出していない。法医解剖も同様だ。)
 米国では病理解剖や死後臓器提供に対して謝金を払う州もある。

 臓器売買を伴う海外渡航移植は複雑な事情がからんでいるだけに、メイタスやキルガーなどの意見
D.マタス、T.トレイン:「国家による臓器狩り:中国の移植犯罪(State Organs)」(自由社 , 2013/10)
D.マタス、D.キルガー「中国臓器狩り」(アスペクト, 2013/12)
だけでなく、よりグローバルで複眼的な視点が必要だ。

私の臓器売買についての意見は
難波紘二 :「覚悟としての死生学」(文春新書 2004/5)
に書いておいた。

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