【ナッツ食】難波先生より

【ナッツ食】相変わらずケトン食を続けている。家内が用意してくれる食事の量が足りないな、と思う時は追加にカシューナッツか生クルミをオリーブ油に浸して食っている。これは炭水化物がほとんどなく、脂質とタンパク質が主体だ。マメ科のナッツ（ピーナッツなど）は炭水化物が多く、木の実のナッツとは異なる。

　で、ネットサーフィンをしていたら面白い情報を見つけた。
　ひとつは、＜ナッツ類に2型糖尿病の血糖コントロールを改善する効果がある＞というもので、2013年国際糖尿病学会での報告だ。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/wdc2013/201312/534107.html
　１日56gのナッツ摂取を３週間以上続けることにより、対照群に比べて血糖値、HbA1c値が対照群に比べ有意に低下することをメタアナリシスにより示したものだ。

　もう一つは、5/18ロイターの記事で、＜ナッツ摂取でガンの再発と死亡率が大きく低下、米研究＞というものだ。これはメタアナリシスでも症例比較対照研究でもなく、単に第３期結腸がん患者826人の食事内容をアンケートにより調べたに過ぎない。その結果、
「回答者の１９％が週に５７グラム以上のナッツを食べており、その全員が、食べていなかった人に比べて再発率が４２％、死亡率は５７％低かった。ナッツには、マメ科のピーナツとピーナツバターは含まれない」というもので、信頼性はあまり高くない。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170518-00000060-reut-int
　ロイターの記者は「ボストンのダナ・ファーバー・ガン研究所が、週に５７グラム以上のナッツを食べた結腸ガン経験者の再発率とガンによる死亡率が、食べなかった人よりはるかに低いとの研究結果を発表した。この量は、アーモンドなら４８粒、カシューナッツなら３６粒の量となる」と、ナッツにがんの再発や死亡を防ぐ特殊成分が含まれているような書き方をしているが、私はそうは思わない。

　ナッツの血糖値抑制作用とがん再発抑制作用は一元的に説明可能である。下表はカシューナッツと生クルミの成分組成表だ。総カロリーのうち糖質が占める割合は、カシューナッツで15.6%、生クルミでは0.5%しかない。

　クルミもカシューナッツも、コメの飯のように一気には食えないし、糖質含量が低いので、食後の高ブドウ糖血症は起こらない。血中ブドウ糖値が異常に高いと、ブドウ糖と血中タンパク質の非特異的結合（メイラード反応）が起こり、これが糖尿病その他の病を悪化させる。いわゆる「糖毒」の本体はこれだ。
　ナッツ食をした糖尿病患者の検査データが、そうでない患者に比べて有意に改善したという報道は、上記の理屈で完全に説明可能だ。

　「ナッツを食うと大腸がんの再発と死亡率が低下する」というロイター報道はこう解釈できる。患者は手術を受けており、第３期大腸がんがあったことは証明されている。再発は取り残したがん細胞の増殖か、すでにあった微小転移巣の増殖によって生じる。
　これらのがん細胞は低酸素状態でも生きのびることができ、増殖のエネルギーを主にブドウ糖を分解することにより得ている。従ってナッツ食は食後高血糖を防ぎ、空腹時血糖値を下げるので、がん細胞の増殖に不利に働き、結果として再発率を下げ、死亡率を低下させる。

　このようにナッツ食が２型糖尿病や結腸がんに有効という報道には信憑性があると私は思うが、ことが病気の治療に関わるだけにきちんとしたケース・コンとロース研究とその正式の報告が必要だと思う。続報に期待したい。


「記事転載は事前にご連絡いただきますようお願いいたします」