日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

小春日和の九州へ 2018続編 - S.A.O

2018-12-21 22:58:54 | 居酒屋
「おはし」の跡取りによると、今夜が忘年会の峠だろうとのことでした。下旬の三連休の前日という暦を考えると、たしかにそうかもしれません。どこへ行っても混み合う中、しばし逡巡してから飛び込んだのはS.A.Oです。
電車通りの北にあった前の店が健在ならば、毎回立ち寄る店の一つとなっていたかもしれません。焼酎なら何でもござれで、肴についても充実しており、さらには猥雑な一帯から離れていて、遅くまで入れるところも貴重だったからです。ところが五年前、文化通り沿いの現在地に移転したことによって事情が変わりました。肴はごく限られたものとなって、純然たる焼酎バーに模様替えされたばかりか、店内の造りがいかにも安っぽくなり、わざわざ行く価値が乏しくなってしまったのです。それでも去年に続いての再訪となったのは、朝食に備えて胃袋を空けておきたいという事情によります。肴については一軒目だけでも十分満足できた一方で、焼酎が小鶴一本だったことから、今度はしみじみ酒を味わいたかった次第です。

移転した直後は、何とも安っぽくなったものだと嘆かわしく思いました。しかし、慣れてきたこともあるのか、今ではそれほどとも思われません。MOSを始め、飲食店の安普請がはびこるようになった結果、この程度では驚かなくなったということもあるのでしょう。
それよりも参ったのは、最盛期の狂騒に再び巻き込まれてしまったことです。まず、階段を下りていくと大歓声が聞こえてきました。この店ともう一軒の扉がいずれも開け放たれており、喧噪が筒抜けになっていたのです。カウンターに先客がいないのを一応確かめてから飛び込むも、後方のテーブルで大人数の酔客が二次会に興じているのに面食らいました。今更後に引くのも憚られ、手短にと割り切って臨むと、二杯目を空けたところで団体が去ったため、予定外の三杯目をいただいて締めくくるという顛末です。
そのようなわけで、心行くまで満喫できたとは言い難いものがありました。しかし、あれほど安っぽく思えたカウンターも、今では次第に慣れてきました。加えてよかったのは器です。湯割りとロック兼用の大きいグラスも、和らぎ水を注ぐ販促のグラスも、適度な厚みがあって手触りがよく、おかげで酒がなおさらうまく感じられます。酒を味わいたいという目的は、曲がりなりにも果たされました。

S.A.O
鹿児島市千日町8-14 貴剛ビルB1F
099-239-4461
1900PM-400AM


大和桜
玉露
突き出し(おぼろ豆腐)
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小春日和の九州へ 2018続編 - おはし

2018-12-21 20:59:23 | 居酒屋
一風呂浴び、さっぱりしてから天文館に繰り出しました。この暖かさなら上着どころか長袖さえ要りません。今夜は半袖シャツの軽装です。

「ぶんご」なき後、まず行きたい店はどこかと考えたとき、浮かんできたのは「菜々かまど」と「分家無邪気」の二軒でした。宿からの道順を考えると、まず「菜々かまど」を訪ねてみて、振られたら「分家無邪気」へ行くことにすれば無駄がありません。「菜々かまど」に振られた時点で、今夜は決まりと思いました。ところが一筋縄には行きません。忘年会の最盛期の金曜という条件にも鑑み、「分家無邪気」に振られたところまではやむなしとしましょう。足をすくわれたのはその直後です。電車通りを再び渡り、「味の四季」を目指してアーケードを歩いていくと、何故か明かりが見えません。よく見ると、店を含む一角が再開発とやらで根こそぎ立ち退いているというあるまじき事態が。隣にあった「一耕」も当然ながらなくなっており、二連敗の後に不戦敗が二つ続くという、まさかの結果となりました。しかし、それでもまだ次が出てくるのが天文館の偉大さでもあります。気を取り直して飛び込んだのは「おはし」です。

六年前に瓢箪から駒で実現した、鹿児島五連泊の最終日に訪ねた店の一つがここです。やはり「味の四季」を目指そうとしたところ、途中にあったこの店が目に留まり、閃くものを感じて飛び込んだのでした。店内の設えはごく平凡ながら、無骨な風貌の店主、それに女将と跡取りによる家庭的かつ大衆的な雰囲気が印象に残りました。その後は年に最大二泊までという状況が続き、再訪の機会を作れずにいたものの、今回意中の店に次々振られたことにより、図らずも機会が巡ってくるという顛末です。そしてこれは吉と出ました。
まず、「酒場放浪記」にでも出てきそうな、地元客御用達の大衆的な雰囲気が好ましく、常連らしき一人客が多いのも特徴です。これは、よいものを良心価格で提供していることの証でもあります。その見立て通り、目の前には艶やかに光った鰹、キビナゴ、鰯などが並んでいて、いずれも見るからにうまそうです。選びきれずに鰹と鰯を両方選ぶと、これは鰤かと思うほど脂の乗った鰹と、「安楽子」にも引けを取らない鰯の刺身が出てきました。名物らしき鰯の薩摩揚げも大ぶりで食べ応え十分です。酒は小鶴一本と潔く、大徳利で提供される前割の燗酒は、当地でいうところのだれやめに好適。こちらが記憶していた以上の名店です。

それにしても、天文館の名酒場が、再開発で二軒も失われてしまったのには参りました。この建物もかなり年季は入っており、建て替えの話が出ては消えるというのが店主の弁です。しかし、白いものが混じったとはいえ、店主はまだ働き盛りと見受けられ、それに加えて跡取りもいます。片隅にさりげなく置かれた、店を背にして腕組みする両人を収めた額が印象的です。この店が末永く守られていくことを願っています。

おはし
鹿児島市山之口町10-23
099-224-4676
日祝日定休

キリンラガー
小鶴
突き出し(ごぼう唐揚)
本ガツオ
いわし刺
イワシのさつま揚げ
きびなご汁
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小春日和の九州へ 2018続編 - 法華クラブ鹿児島

2018-12-21 19:39:08 | 九州
二時間弱の移動を経て鹿児島中央に到着。昨日眺めた月がさらに満ち、ほぼ満月に近付いてきました。暮れの風物詩となりつつある駅前の電飾を眺めてから電車に乗り、今夜の宿に入ったところです。
本日世話になるのはもちろん定宿の法華クラブです。しかし、アパホテルほどではないものの、法華クラブも混むときとそれ以外とでそれなりの料金差をつけるチェーンの一つです。鹿児島には連泊する予定ですが、明晩はあいにく連休初日に重なり、こちらの手が出る価格帯ではありませんでした。明日は穏当な値段のところに鞍替えするため、あのバイキングをいただけるのも一度限りということになります。今夜は無理に飲み食いせず、朝食をおいしくいただけるようにするのも一案でしょう。
それにしても、昨日に輪をかけて暖かくなりました。上着が要らないのはもちろんのこと、半袖シャツ一枚でも肌寒いとさえ感じません。重荷を担いで電車に乗り、混雑に揉まれるうちに汗をかいてしまいました。暖冬なのは重々承知していたものの、12月の下旬でこれかというのが本音です。夜になってもこの調子なら、明日はTシャツ一枚で乗り切れるかもしれません。
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小春日和の九州へ 2018続編 - さくら415号

2018-12-21 18:06:28 | 九州
今回も鹿児島まで直通する数少ない800系の運用を掴まえました。沖縄への往路以来二月ぶりの乗車です。
「ソニック」から乗り継ぐ場合、一本前にも800系の「つばめ」がありました。約20分後に出るこの列車が、熊本まで走る間に差を縮めるため、まず「つばめ」に熊本まで乗り、そこからこの列車に乗れば、博多での無駄な待ち時間がなくなるばかりか、所要時間が違う分だけ800系に乗れる時間も長くなり、一石二鳥ではあったのです。実際去年はそうしました。しかし、帰宅時間に重なるためか、熊本からの乗車が思ったよりもはるかに多く、一部区間で通路側に回らざるを得ないという経験をしました。平日だったことを考えると、毎日同じ現象が繰り返されている可能性は十分にあります。その結果安全策を採り、博多から「さくら」で行くことにした次第です。
そのようなわけで待ち時間は延びてしまいました。しかし、その代わりにささやかな発見がありました。博多口の玄関に門松と注連縄が飾られていたのです。今朝松江城でも門松を見ました。まだクリスマスも終わってはいないものの、暮れもいよいよ押し迫ったと実感する光景でした。

★博多1718/さくら415(5415A)/1853鹿児島中央
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小春日和の九州へ 2018続編 - ソニック38号

2018-12-21 16:32:59 | 九州
腹ごしらえを済ませたところで移動再開です。博多までは「ソニック」に乗車します。
「さくら」にあのまま乗り通せば、鹿児島まで直通できるところでした。しかし、博多を境に分断された割高な料金を、そのまま払うのも面白くありません。乗るなら800系にしたいという考えがありました。ただし、博多まで新幹線に乗ってしまうと、あちらで一時間半という中途半端な間合いが空きます。そこで閃いたのが、小倉から「ソニック」に乗り換えるという案でした。これにより、博多での無駄な待ち時間を「ソニック」の乗車に回せるだけでなく、小倉のかしわうどんをいただけて、料金の合計額もわずかとはいえ安くなるため、一石二鳥、あるいは三鳥という寸法です。

★小倉1605/ソニック38(3038M)/1647博多
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小春日和の九州へ 2018続編 - かしわうどん

2018-12-21 15:57:15 | B級グルメ
わずか20分足らずの乗車で小倉に着きました。品川を挟むとはいえ、東京から新横浜の所要時間が18分です。それとほぼ同じ時間で山口から北九州まで行けるという感覚は、俄に信じ難いものがあります。
小倉からは「ソニック」で博多へ向かうことにしますが、列車を待つ合間にいただきたかったのが当駅名物のかしわうどんです。大分行に乗る場合、必然的に列車が発着する7番線のうどん屋となりますが、博多方面へ行く場合は事情が異なります。列車が発着する4番線のうどん屋は、たしか博多駅と同じJR系の業者による経営です。それは先月いただいたため、北九州駅弁当のうどんがよいという事情がありました。その結果、今回は1番線の店舗を選択。これにより、一月弱の間に北九州駅弁当、東筑軒、中央軒のかしわうどん御三家を一通りいただいたことになります。
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小春日和の九州へ 2018続編 - さくら557号

2018-12-21 15:19:24 | 中国
遅れは一時11分に拡大するも、その後は次第に縮んでいき、新山口には定時の到着となりました。これで予定通りの列車に乗り継ぐことができます。しかし、平日の半端な時間帯だけにがら空きかと思いきや、ホームに上がるとかなり長い列ができているのに面食らいました。辛うじて窓際の空席に滑り込んだものの、窓側は三列席、二列席とも完全に埋まり、通路側も半分以上は埋まっています。自分が知る限り、「みずほ」など比較にならない乗車率です。「かがやき」よりも「はくたか」の方がむしろ混むようなものでしょうか。
江津が近付く頃から雲が出始め、益田までの間に曇って、山口との県境を越えてから予報通りに雨が降ってきました。しかし、鹿児島で降っていた雨は既に上がったとの情報が入っています。好車窓が続く区間は晴れ、それほどでもない区間で雨が降り、目的地に着いたときには止むという、理想的な流れとなってくれそうです。

★新山口1506/さくら557(557A)/1525小倉
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小春日和の九州へ 2018続編 - スーパーおき3号

2018-12-21 11:33:52 | 中国
10時半を回ったところで切り上げ、宿に戻って荷物を引き取り、発車の10分前という頃合いの時刻に駅へ乗り込みました。ところが、とうの昔に出ているはずの「やくも」が停車中でした。ようやく発車した後で分かったのは、あの霧の影響だったということです。こちらが乗る「スーパーおき」は4分遅れで来たものの、単線区間で対向列車が遅れれば、波及するのは避けられません。果たせるかな隣の乃木で運転停車し、今のところ6分遅れとなっています。
こうなると、9分しか間合いのない新山口での乗り換えが気になってくるところではありますが、今日のところは鹿児島まで移動できればそれでよく、一刻を争う行程ではありません。万一間に合わなくとも後続列車に乗るだけです。細々したことはさておき、久々となる松江以西の乗車を楽しむことにしましょう。

それにしても、日が出てからたちまち暖かくなってきました。そうなることを見越した上で、半袖シャツの上に雨合羽を羽織って宿を出たものの、結果としては始めから半袖でよかったとさえ思えてきます。上空には雲一つない一方で遠景は霞み、小春日和と形容したくなる好天です。
俄に信じがたいのは、この好天が夕方から雨に一変すると予想されていることです。しかし、夕方からということは、少なくとも新幹線に乗り継ぐまでは持ちこたえるということでもあります。的中してくれることを願いたいものです。

★松江1110/スーパーおき3(3003D)/1457新山口
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小春日和の九州へ 2018続編 - 松江城

2018-12-21 10:21:13 | 中国
九時が迫ったところで次第に霧が晴れてきました。こうなれば遅かれ早かれだろうと見て、宿に不要な荷物を預けて出ました。松江城まで歩いていくと、ほぼ完全に晴れるという経過です。
昨晩訪ねたときに気付いたのは、紅葉がまだ残っているということです。立派な石垣と、その上に建つ櫓が照らし出される中、櫓の脇にある楓が絶妙な点景になっていました。少なくとも、暗い中ではまだ見頃のように思われたため、翌朝晴れれば再訪するしかないと思っていたのでした。
果たしてこちらの目に狂いはありませんでした。紅葉する時期が遅すぎたこともあるのか、鮮やかさこそ11月の最盛期には及びません。しかし、城址へと登っていく石段の途中から眺めると、石垣から突き出た楓が逆光気味に差し込んでくる朝の日差しに映えていました。しかもよかったのは、観光客が一切来ない、穴場というべき一角だったことです。これが今年最後の紅葉かと、しみじみ鑑賞させてもらいました。
列車が出るのは11時過ぎです。そこから逆算すると実質的な残り時間はもうなく、天守については遠巻きに眺めるのがせいぜいです。ただ、一本遅らせようにも次の列車は四時間後となってしまいます。以前同じく快晴の条件下で腰を据えたことがあるため、今回さらに四時間かけて見ていきたいと思うほどの場所はありません。多少の未練を残しつつも、明るいうちに移動できる方を選ぶつもりです。

第一週に行こうとしていた時点では、松江の宿が全くとれず、やむなく米子に泊まろうとしていました。鳥取を直ちに出て三時頃松江に着き、七時か八時頃には出て米子へ移動し、翌日帰るというのがそのとき考えていた行程です。つまり、鳥取の滞在時間はさらに削られ、松江についても申し訳程度に寄って終わるところだったのです。それではあまりにお粗末と考え、先週末に一旦延ばしたわけなのですが、その時点では松江に泊まった翌日が雨になるところでした。延期に次ぐ延期により、暮れも押し迫った12月下旬に持ち越されはしたものの、結果としては正解だったことになります。
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小春日和の九州へ 2018続編 - 出発

2018-12-21 08:54:32 | 中国
朝食をいただき、身支度を整え、一息入れたところで出発します。四千円台のビジネスホテルをむざむざ見送り、あえて選んだ旅館でしたが、結論からいうと奮発した甲斐はありました。繰り返す通り、建物には年季が入っていて、京都の「ホテル杉長」と比べても大差はないと思います。それでも古さを感じさせないのは、然るべきところに手が入っているからに他なりません。特に、壁紙の使い方には感心させられました。客室だけでも壁、襖、床の間、洗面所に色、模様、風合いがそれぞれ異なる壁紙が使い分けられていて、それは館内全体に貫かれます。おそらくデザイナーを入れて作り込んだのでしょう。和を基調としつつ斬新さを併せ持っているという点で、大胆に例えるならば九州新幹線の800系に通ずるものを感じました。
それに加えてよかったのが朝食です。六等分された折に小皿をはめた盛りつけが美しく、大きめのお椀に満たされたしじみ汁にも土地柄が感じられました。当然ながら、品数は法華クラブのバイキングに及ばないものの、あちらはどうしても慌ただしくなりがちです。和風の小洒落た食堂で、ピアノの調べを聴きながらいただく優雅さを含めて考えれば、互角といえるものでした。大橋川の流れを見渡す展望風呂も上々で、これならビジネスホテルとの価格差に見合った価値が十分あります。
元々の収容力が小さい松江の宿泊事情を考えると、この手の宿に再び泊まれる可能性が高いとはいえません。しかし、再び閑散期に重なったとすれば、宿代を少し奮発してみるのは一案でしょう。
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小春日和の九州へ 2018続編 - 二日目

2018-12-21 07:46:11 | 中国
おはようございます。昨晩は宿に一旦退却後、風呂に浸かってから出直し、割子そばをいただいて締めくくりました。出直す余裕があったというより、早々と切り上げるのが惜しまれて、つい無理をしてしまったのが真相です。再び戻った後は前日からの疲れが吹き出し、気付いたときには六時過ぎでした。しかしなかなか布団から抜け出せず、七時を回ったところでようやく起床。只今朝風呂から上がったところです。
布団から出られなかったのは寒かったからでもあります。季節外れの暖かさだった日中から一転、夜が更けるに従い気温が下がり、煌々とした月夜に変わっていきました。ところが、今朝目覚めたところ驚きました。濃い霧が一面に立ち込めていたのです。現在地からの眺めでいうと、大橋川の対岸の様子はもちろんのこと、100mほど先でさえ街灯、信号の灯りが分かるに過ぎません。
昼過ぎまでは晴れるというのが最新の予報です。つまり、この霧が晴れれば日が射してくるということになります。しかし、霧に煙った松江の町も情緒があってよさそうです。晴れるかどうかにかかわらず、宿の周囲を散策してから出発します。
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