日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - タキギヤ

2015-06-29 21:47:27 | 居酒屋
帰り道に呑む習慣も途絶えて久しい中、珍しく荒木町にやってきました。
酒にかけては一年中で最も半端なこの時期、何故に一杯やって帰る気になったかといえば、旅の暮らしが一段落し余裕が出てきたのが一つ。職場を早めに引けたのが一つ。そして何より決め手になったのは、梅雨時とは思えないほど心地よい夜風でした。暑からず寒からず心地のよい風が吹く晩、玄関から吹き込む風を感じつつ、一献やれれば最高だろうと思い立った次第です。
かような観点からすると、自分の中でいの一番に浮かぶのが荒木町です。昔ながらの日本家屋で、玄関は開け放たれているのが望ましく、縄暖簾ならなおよしといったところでしょうか。そして、帰り道に呑むのも半年ぶりということになると、選択肢は当然ながら勝手の分かった店に限られます。その結果選択肢が「おく谷」か「タキギヤ」に絞られる中、「タキギヤ」がまさしく狙い通りの状況だったため、昨秋以来となる暖簾をくぐりました。

語弊を恐れずにいうなら、先週訪ねた浅草の「ぬる燗」に近いといえば近いかもしれません。もちろん、必要最小限のこと以外口にしないあちらの店主と、一見客にも懇切丁寧なこちらの店主は好対照です。しかし、明かりもまばらな裏路地の店構え、盛大に飲み食いするより酒をしみじみ味わうのに適した献立、そのことをわきまえた常連客が三々五々訪れる店内の雰囲気などが、実によく似通っているのです。この日もカウンターと小上がりは常連客であらかた埋まっており、だからといって賑々しいわけではなく、裸電球のほどよい明かりに浮かび上がった店内で、皆静かに酒を酌んでいます。
このような店だけに、黒板の品書きに必ずしも華やかさはありません。しかし、数種の刺身と、冬瓜、南瓜、茄子、甘唐辛子といった夏野菜中心の品書きに季節が感じられ、その一方で酒は数種ある冷酒を除いて燗酒に向き、味わいの希薄な夏酒が幅をきかせる今日この頃、酒本来の味わいをしみじみ楽しむにはおあつらえ向きです。玄関で風に揺れる縄暖簾にも趣があり、この時期に来てよかったと実感する今回の再訪でした。

タキギヤ
東京都新宿区荒木町7 安藤ビル1F
03-3351-1776
1700PM-2330PM(LO)
日祝日定休

長珍・群馬泉
お通し二品(山芋・苦瓜白和え)
鮎風干し
とうがん煮
茄子揚びたし
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