星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

永楽館大歌舞伎(1)「弁天娘女男白浪」 観劇メモ

2009-08-13 | 観劇メモ(伝統芸能系)

公演名    永楽館大歌舞伎
劇場     出石 永楽館
観劇日    2009年8月9日(日) 11:30
座席     1階ろ列



三、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
  浜松屋見世先より
  稲瀬川勢揃いまで


弁天小僧菊之助/片岡愛之助     南郷力丸/市川男女蔵
赤星十三郎/中村壱太郎        忠信利平/坂東 薪車
日本駄右衛門/中村翫雀       ほか


呉服屋浜松屋に美しい娘とそのお供の若党が訪れる。ふたりは万引きし
たと見せかけて、店から金を強請ろうとする。実は、ふたりの正体は、
盗賊の弁天小僧(愛之助)と、仲間の南郷力丸(男女蔵)だった。
この騒ぎをひとりの侍が収めるが、その正体は白浪(盗賊)の五人男の
頭領、日本駄右衛門(翫雀)だった。
春雨の降りしきる中、日本駄右衛門を筆頭に鎌倉稲瀬川の堤に弁天小僧、
南郷力丸、忠信利平(薪車)、そして赤星十三郎(壱太郎)の五人が勢
揃いしたところを捕手に囲まれ・・・。
(歌舞伎美人のサイトより引用)


この顔ぶれでの白浪五人男というのは、ちょっと不思議。
普通ならありえないことが永楽館からの強い要望で実現したというから、
やっぱり出石マジック(しつこい!)としか思えない。

そして。ああ、今回は舞台の感想がまともに書けない~~~。
最前列で見た弁天小僧にハートをガッツリ引き抜かれたせいだ。
ただただ見惚れてしまい、大事なことはほとんど覚えていないんだもん。
観察するなら後方席に限るけど、見つめるなら前方席だわ♪
書けるかどうかは別にして、「夏祭浪花鑑」を見た時にこのひとの舞台
は書き残しておきたいと強く感じたことを思い出した。
だから私のは感想じゃなくて、備忘録。
今回も思いっきりダラダラ書きで残しておこう。
順序もヘンだけど、以下、「弁天娘女男白浪」編。



<浜松屋見世先>
花道からお浪(弁天小僧)と四十八(南郷力丸)が出てくると大拍手。
愛之助さん、振袖姿に赤いかんざしが揺れてラブリ~♪
おめちゃん、粋な風情がかっこいい!
お浪は今まで私が聞いたことのない(前髪の若武者よりも)高い声。
恥ずかしがってうつむいた感じが可愛らしく、客席からも声がもれる。
店先で番頭から贔屓の役者を言い当てられたときの「あいなあ」と照れ
る、うぶな素振りがなぜか笑いを誘う。
連れの四十八。江戸言葉がスッキリ響き、江戸の世話物だということを
実感させてくれる。

お浪ちゃん、楚々とした娘を演じながら、持参の裂を浜松屋の裂にそっ
と混ぜ、それを懐にしのばせるところをわざわざ見せるという段取り。
涼しい顔で店を出ようとすると呼びとめられ、店の者に取り囲まれ、
算盤で打たれる。お浪が白の手ぬぐいをあてながら振り返り、それをと
ると額に三日月形の傷が!

万引は濡れ衣。そのうえ顔に傷までつけられ、このまま屋敷に戻れない。
お前たちの首をはねて自分も切腹する!と詰め寄る四十八。
そこで店側は鳶頭を通じて金子を渡す。鳶頭役は松次郎さん。むずかし
い江戸弁をものにし、なかなかよう似合ってるやないのぉ~。

店が用意した十両を百両につり上げ、帰ろうとしたところへ、玉島逸当
と名乗る武士が店の奥から登場。翫雀さんだ。
う!藤十郎さんが若返って出て来られたのかと思った。お顔がそっくり。
逸当は娘はかたりであると言い放ち、二の腕の桜の刺青から、娘は男で
あると正体をバラす。

客席の視線を集めるお浪ちゃん、いや、弁天小僧。
さっきまでの高~い声から急転。野太い声で、もうばけちゃいられねえ、
尻尾を出しちゃうよ、と。
どなた様も「ごめんぬ」と手を添えてカル~く言っちゃったりして♪
もう、このギャップがたまりませぬ~!

こんな窮屈なもんは着ていられないと、黒の羽織を脱ぎ、帯を解き、赤
い着物の前を大胆に開けてパタパタ、パタパタ。
四十八にも脱げと促す。
娘、いや男。桜の刺青があらわになっている。てことはおみあしも。
(いや、私は見てないけどね~。)
ほんとにせいせいした感じが、その弾んで裏返った声からもわかる。
それから番頭のほうをじっと見て、煙草を貸してくれ、と。
あまりに堂々と頼む男に番頭おどろき、おそるおそる煙草を渡す。
番頭役の松之助さんは、おとぼけ味がいつもいい感じだけど、この役は
ほんとにいいわあ~。

男。弁天小僧。
ポンポンまくしたてる地の江戸弁と、七五調の芝居がかった台詞が入り
混じったようにしゃべる場面がすごく面白い。味がある。
軽さと古風な重さを行ったり来たりの台詞術にどんどん引き込まれる。
にしても、与三郎でも思ったけれど、愛之助さんの江戸弁はなんの違和
感もなく、実に心地いんだな~♪ こういう世話物では台詞から匂い立
つものがなくてはならないと思うのだけど、そのあたり江戸弁ネイティ
ブの人にはどう映ったのだろう?
古風な言い方で特に耳に残ったのは「役者気取りの女形」とか、「ほん
のただいまのおわれえぐさよ」とか。
「首はほせえが、肝はふてえや」(←ここ、突っ込ませて頂きました)。
うん、観客を飽きさせないよくできたお芝居だと思う。

その流れで「わっちらを知らねえのかい?」と。
待ってました!
着物の裾をめくりあげ、片肌脱いであぐらをかいたその格好に観客の
視線を引きつけ、引きつけ・・・
「知らざあ言って聞かせやしょう」
きゃあ~、いいねえ、いいねえ。
名台詞の出だしに期待も最高潮。
コン!と叩いた煙管をくるくるゆっくり回す男。
(以下、名台詞集より写し書き)
「浜の真砂と五右衛門が 歌に残せし盗人の 種は尽きねえ七里ヶ浜
・・・・・・・・・・・・
ここや彼処の寺島で 小耳に聞いた音羽屋の 
似ぬ声色で小ゆすりかたり 名せえゆかりの
弁天小僧菊之助たぁ 俺がことだぁ」
ひゃあ~~~!! 拍手喝采。
観客が♪ 私が♪ 永楽館が♪ 喜んでいる。
抑揚、テンポを変えながら、ゆっくりたっぷり味わい聞かせる台詞回し。
菊五郎さん直々に稽古をつけてもらったそうだけど、実に堂に入って、
特に名乗りの台詞にはシビレまくり。凄い迫力ありました~♪
いや~、贔屓の役者さんから聞く名台詞がこれほどまでにエエもんとは!
ありがたいね~。これが歌舞伎の大きな楽しみなんだなとあらためて思う。
おめちゃんはおめちゃんで、左團次さんの声そっくり。これまたじっくり
味わいながら聞かせていただいた。

弁天小僧と南郷力丸の引っ込み。
二人で花道七三に立ち、チャラチャラチャラチャラ掛け合い漫才のような
軽い口調で言い合う場面も楽しかった。
(額の傷は想定外だったのか・・・。)



<稲瀬川勢揃い>
鳥屋口のところに傘だけが見えている。いよいよだ。
あさぎ幕が落とされると、稲瀬川の桜の堤。
捕手が待ち構えている。

花道から一番に登場するのは弁天小僧。でも、私からは遠いの~。
傘をさしたまま、七三でくるっと背中を向け、立ち止まって待つ。
下手側の2階席のお客さんと目線が合うのか、皆さん、嬉しそうにニコニ
コしながらじっと見ておられる。羨まし~。
続いて、薪車さんの忠信利平。壱太郎さんの赤星十三郎。 
男女蔵さんの南郷力丸。最後が翫雀さんの日本駄右衛門。
次々と、2階席の人とコンニチワ(笑)。
振り返って、五人のツラネ。
キャア~♪ 弁天小僧、男前ーーーーーっ!!! 五人衆、カッコイイ!
客席からは凄い拍手。芝居小屋の一体感、サイコー♪
弁天は鬘を女から男の髷に変えている。
なんて艶っぽいんだろう。なんてええ男なんやろ~。
ドキドキ、ドキドキ。来るよ来るよ、舞台のほうへ。
あとは見つめているだけのただのアホになった。

目の前に立つ、白浪五人男。上手から翫雀さん、愛之助さん、 薪車さん、
壱太郎さん、男女蔵さんの順。
まずは翫雀さんの日本駄右衛門から。
「問われて名乗るもおこがましいが・・・」
この感じ、好きだなあ。風格があって、声も迫力あって、すごく大きい。
舞台にグッと重みと味わいが増す。
(先日NINAGAWA十二夜であんなことしてた人とはゼッタイに思えない。)

続いて愛之助さん。
稚児あがり・・・髷も島田に由比が浜・・・女に化けてつつもたせ・・・
見惚れている耳にそんな言葉が入ってくる。
ああ、稚児あがりねぇ、やっぱりきれいな顔してるわとか、つつもたせっ
て美人局と書くよね~、わかるわあとか、どうでもええことが頭に浮かぶ。
(あほの極致・・・以下、省略!)

薪車さんもすごくがんばっておられる。
壱太郎さんはゆっくりの台詞回し。
男女蔵さん・・・素敵やん。今回、今回の出演がうれしかった。
全員、盗賊の一味で、すべての糸を引いていたのは日本駄右衛門。
捕手との立ち回りの途中で全員の見得がキマル。
(幕切れ)

はあ~。ええもん見せてもらいました。
今回は土曜日が休演で日曜日にしか見られなかったけれど。もう1回観た
かったなー。でも、観られただけでもラッキーだったに違いない。

ーーーーーーーーーーーーーーーー---
先日の「NEWSゆう+」で、丁稚役の地元の小学生、松田のぞみちゃんが
取材されていた。オーディションや、片岡當十郎さんに稽古をつけてもらっ
ている場面や、家族ぐるみで稽古をしている映像とともに、舞台の様子も
少しだけ映った。
そして、愛之助さんのコメント。
「(のぞみちゃんは)いつも舞台に出てらっしゃる子役さんと変わりない
ぐらい。経験あるのかと思ったぐらいです。堂々としてとても嬉しかった
です。実は、おは~い、っていう、お茶もってくる子役、僕ね、昔やって
たんです。そういう意味では懐かしくて」。
私が見た日曜日の丁稚はのぞみちゃんだった。
お茶をかけられてアツイよーと引っ込むところ、うまかった~。
まさか女の子だったとは(笑)。


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2 コメント

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たっぷりと! (桜扇)
2009-08-13 18:23:14
堪能させて頂きました♪
いやぁ、実にいいですわぁ。
ムンパリさんの感動がストレートに伝わってきましたよぉ。
そんな前の席で弁天小僧を観たら魂を抜かれてしまいますよね。
菊五郎さん仕込みと聞いて益々観たくなりました。

首はほせえが…←いやいやと私もすかさず突っ込んでしまいました(笑)
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いつかまた・・・! (ムンパリ)
2009-08-16 01:34:53
桜扇さん、冷静を欠いた長文をお読み頂きありがとうございます。
芝居小屋の一体感が少しでも伝わったらいいんですが、
私のドキドキ感だけが伝わってしまったかも(苦笑)。
浅草で見た時は、愛之助さんの役は日本駄右衛門だったので、
同じ演目でも役によってずいぶんコーフン度が違うもんだと
自分でもあきれています(笑)。
「鳴神」が二度見られたように、この弁天小僧も封印することなく、
いつかどこかの舞台で見られるといいですね~♪

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