「日本経済新聞」の夕刊に連載中の「プロムナード」で、作家の
冲方丁さんが「渉猟と分類好きは日本人の特性」(5月8日付)と記していた。
直後「江戸時代には、豆腐の食べ方だけで二百種類以上あったらしい。(中略)
そもそも豆腐とは何か、という議論を日本人は好まない。豆腐に添える
ネギとミョウガの違いを議論するのが好きなのである」と豆腐に触れ、
「普通は文化が食を限定するが、日本はジャンル認識が可能なもの全て、受容する」
と多少、大風呂敷を広げた感じの日本文化論につなげている
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元々、同コラムは、少女漫画家・萩尾望都さんの紫綬褒章から書き出し、
ディテールにこだわり、ジャンル内でマニアックに掘り下げる日本人の
心性を指摘したもの。豆腐を論じた内容ではなかったのに、日本文化論
らしきものを述べようとした際、自然と豆腐が比喩に使われたのが面白い。
それだけ、豆腐は日本という風土に密着し、日本という国を象徴する存在なのだろう
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今後TPP交渉などにおいて農業の面でも自由化が進行していく情勢にあれ、
もう一度、豆腐という食材を見つめ直すべき時期にあるのではないか。
世界の食品大豆の消費量(約1千500万㌧)の95%をアジアが占め、
日本は約7%。世界全体の約6割をも占める中国と比べたら……と言っても
中国は食品大豆については自給自足できており、中国の輸入大豆は基本的に
搾油がメーン。そこが、食品大豆のおよそ8割を海外産に頼るしかないわが国と
決定的に異なる。原料大豆をどう確保するかは一業者にしても死活問題だが、それは同時に、
わが国の食料安全保障および文化的アイデンティティーが問われているのである。