
友達と呑んでいて、昔語りの中、飼い猫が(一時期)失踪していた話を聞く。
――数年前だか、家猫を抱き抱えて、近所を散策していたらば、
何かの拍子に大きな物音がして、驚いた猫が友達の腕から逃げ出してしまった。
数週間、捜索を続けるも、猫は見つからず(当時、友達は新世界に住んでいた)。
貼り紙を出したり、飼い猫を見失った界隈の商店街の店主らに訊いて回ったとか。
野良猫として自活していけるようなタイプではなかったというし、
さらに、あの土地柄も正直ハードな環境ではある。もはや諦め交じりで
日々を過ごしていたところ、恵美須町の商店街の一店主から電話が入った。
早速、訪ねて行くと、街路樹の上に登り、怯えていた猫を引き取り、
預かってくれていたという。その猫は随分と怖がった挙げ句、
助けてくれた店主の腕も引っ掻いたようで、非常に申し訳なかったが、
とにかく愛猫が戻ってきて、感謝のしようもなかった――と友達は語る。
「あの豆腐屋さんは、本当に×××(猫の名前)の命の恩人なの」
「その豆腐屋さんの名前、覚えている?」と訊くと、「
高森商店」だと教えられた。