NHK Eテレ 2022/2/3
今年も、恒例の「ニューイヤーオペラコンサート」(第65回) が1月3日に東京芸術劇場で
行われました。
コンサートのテーマは特別編「それでも人は歌い続ける」(出場者名・・・敬称略)
司会者は久保田祐佳アナウンサー・檀ふみ・黒田博。
管弦楽は、阪哲朗指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
阪哲朗は、あまり馴染みがないけれど、ヨーロッパで活躍するオペラ指揮者。
今回は放映されたオペラの曲目のうちから13曲を掲載しました。
■ オープニング
ヴェルディ作曲 歌劇「椿姫」から乾杯の歌「友よ、さあ飲み明かそう」
冒頭にふさわしい名曲である。
アルフレードの笛田宏昭が華やかに歌い始める。
続いてヴィオレッタの歌を森麻季が歌い、合唱となる。
プログラム前半
■ ヴェルディ作曲 歌劇 リゴレットから「あれかこれか」
ヴェルディの歌劇の中でも女好きの代表マントヴァ公爵の歌を若手テノールの宮里直樹が伸びやかに
歌い上げてくれた。
■ ドニゼッティ作曲「連隊の娘」から「みんながごぞんじ」
連隊の兵士の憧れのマリーの歌うコルラトゥーラ・ソプラノの歌声が素晴らしい。高橋維は「魔笛の夜の女王」も歌うとのこと。
ただ「連隊の娘」に「さあ来た、コノヤロウ、ほら来た、コンチクショウ」などというセリフはあったかなあ。
■ ロッシーニ作曲「セビリアの理髪師」から「陰口はそよ風のように」
ロジーナを恋をしているアルマヴーヴァ伯爵を追い払おうとする音楽教師ドン・バジーリオの歌。
オペラの中では聞き逃してしまいそうな曲だが、ロッシーニらしい軽やかな曲である。
妻屋秀和のバリトンらしい渋い声が魅力的である。
■モーツアルト作曲 歌劇「魔笛」から「恋を知るほどの殿方には」
ハパゲーノ 黒田博、パミーナ 砂川凉子
パミーナを歌う砂川凉子のソプラノは柔らかい声で聞きやすく、とても魅力的。
舞台に「魔笛」の雰囲気はないが、それはそれでモーツァルトらしい曲である。
■ モーツアルト作曲 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から「みんな楽しくお酒を飲んで」
このオペラ、無類の女好きのドン・ジョバンニは憎まれ役となっているが、この曲はテンポも良く印象的。
大西宇宙が好演し、とても楽しめた。
■ ビゼー作曲 歌劇 歌劇「カルメン」から セギデテーリャ「セビセリアのとりで近くに」
歌劇「カルメン」の中でもおおいに酒を飲み、歌い、踊りが盛り上がるカルメンの仲間達の居酒屋。しかし、カスタネットを叩き、
フラメンコのリズムで踊らなければカルメンの個性が残念ながら出てこない。
■ 歌劇「カルメン」から闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」
背景に闘牛の牛が映し出されて動くなど迫力十分。
闘牛士の服装で歌うのも素晴らしい。
実際のオベラでは歌の場所は、リーリャス・パスティヤの店の中なので背広で歌ったりすることも多い。
やはり闘牛士の服装の方が雰囲気は出る。取り巻きの女性達が闘牛士を前に黙ってはいられない様子が描かれる。
この演奏会の方が背景が実は「闘牛士の歌」にふさわしい。
プログラム後半
■ コルンゴルト作曲 歌劇 「詩の都」から「私に残された幸せ」
後期ロマン派、ウィーンの作曲家コルンゴルド。弱冠20才の時の作品だという。
マーラーを彷彿とさせるとも言われる管弦楽に乗って、森麻季が熱唱し伸びやかで美しい歌唱を聞かせてくれた。
本コンサートでも印象に残った曲のひとつである。
■ ワーグナー作曲 歌劇「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」
やはり、このコンサート、ワーグナーの歌は欠かせない。聴き応えのある曲である。
イタリア・フランスオペラ役が得意という村上敏明がジークムントの歌を堂々と歌う。
■ プッチーニ作曲 歌劇「トスカ」から「星はきらめき」
司会の檀、黒田両名が話題にした悪役スカルピア(警視総監)は唖然とするほどの悪役ぶりだが、
両名はこのオペラを、演じるとすれば、スカルピア役をやりたいとのこと。
実際の社会では起こることがまれだからとのこと。ちょっとびっくり。
そのスカルビアのために死に至るカヴァラドッシの生への執着を福井敬が切々と歌う。背景は星がきらめき美しい。
※ 2018年のニューイヤーオペラコンサートでスカルピアの「行けトスカ」が青山 貴によって合唱「テ・デウム」とともにうたわれている。
■ プッチーニ作曲 歌劇「蝶々夫人」から花の二重奏「策の枝をゆすぶって」
蝶々夫人 小林厚子 スズキ 山下牧子
三年ぷりのピンカートンの船が沖合に来たことを知り、喜びに溢れる蝶々夫人、聴き応えのあるスズキとの二重唱だ。
■ レオンカヴァレッロ作曲「衣装を着けろ」
カヴァリレア・ルスティカーナとともにヴェリズモ(写実主義敵な)オペラの傑作。
旅芸人一座のカニオは妻に裏切られてもなお道化を演じ、舞台で妻を殺害。
実話を元に作られたオペラの劇的な緊張感に溢れるアリアを 笛田宏昭が見事に歌う。
■ フィナーレ
ヨハン・シュトラウス作曲 喜歌劇「こうもり」から 「ぶどう酒の燃える流れに」
出演者全員
指揮者の阪哲朗は指揮が軟らかで見ていて安心感があった。節目、節目の動作もリズミカルで合格点である。
今年はコロナ禍ということもあって会場には観客が入場制限のため、まばらであった。
来年は、もっと賑わいのある舞台となることを願っている。
(了)