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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

スペイン、労働市場改革法が成立 解雇規制など柔軟に

2010年09月15日 | 労働法
 『格差を縮小し、労働市場の流動性を高めるためには「解雇解禁」へ踏み出すべきだ』という考えを聞くことはあると思います。

 日本は厳格な解雇規制があります。
『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。』(労働契約法第16条)

 特に、諸外国との比較をすると、経営上の理由による整理解雇は、解雇権濫用の法理に基づいて、解雇回避努力を求められ、ハードルの高いものと言われています。

こんなニュースが、

【スペイン、労働市場改革法が成立 解雇規制など柔軟に】
          《日経Web 2010/9/10 19:17》より
 スペイン下院は9日、政府による労働市場改革法案を可決した。上院での修正を盛り込み、改革法が最終成立した。労働市場の規制緩和を促す内容で、雇用の流動性を高め失業率を下げるのが狙い。だが、労働組合は改革に反対しており、29日には全土で大規模なストが予定されている。

 改革案は労働時間や給与など従業員の待遇の柔軟運用や経済的理由での解雇をしやすくする措置などが柱。正規労働者の既得権は削られるが、企業の正社員採用を増やす効果を見込める。

 スペイン経済は2008年の住宅バブルの崩壊やユーロ不安の影響で低迷している。失業率は20%を超え欧州平均の約2倍。25歳以下の若年層では30%を超えている。硬直した労働市場が主因と考えられており、経済活性化にはまず労働市場の規制緩和が求められている。

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 日本でも雇用問題は重要な問題です。新卒者や非正規社員の問題も多く取り上げられています。
 新卒採用の制限であったり、既存社員の整理解雇であったり…。
 なかなか特効薬はないのが現実ですね。

 OECD調査では、解雇規制強度が強い国ほど雇用率が低い(=失業率が高い)という傾向が確認できると言います。厳格な解雇規制は労働生産性を押し下げ、企業の雇用吸収力を奪う可能性があると言われています。

 なかなか日本では、この論議に至るまでには相当時間がかかるような気がします。

 派遣法改正、厚生労働省の「有期労働契約研究会」の報告書の方が気になりますね。
 とある方は「前門の虎後門の狼」をたとえました。そうでしょうね…。

有期労働契約研究会の報告書

2010年09月13日 | 労働法
 10日、厚生労働省の「有期労働契約研究会」(座長:鎌田耕一東洋大学法学部教授)の報告書が公表されました。

□厚生労働省HPから
『報告書は、有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止するとの視点を持ちつつ、雇用の安定、公正な待遇等を確保するためのルール等について検討すべき、としています。具体的には、契約締結事由の規制、更新回数や利用可能期間に係るルール、雇止めに関するルール、有期契約労働者と正社員との均衡待遇及び正社員への転換等、幅広い論点について、課題を整理したものとなっています。』

 報告書(ポイントから)では、現状と課題として
1.有期契約労働者は労使の多様なニーズにより増加、多様な集団に
 ・自らの都合に合った働き方、正社員としての職を得られずやむを得ず就いた
 ・継続雇用される実態
 ・4つの職務タイプ
    正社員同様職務型(36.4%)、高度技能活用型(4.4%)
    別職務・同水準型(17.0%)、軽易職務型(39.0%)
2.雇用の不安定さ、待遇等の格差、職業能力形成が不十分等の課題
そして、
雇用の安定、公正な待遇等を確保するため、契約の締結時から終了に至るまでを視野に入れて、有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止するとの視点を持ちつつ、有期労働契約法制の整備を含め、ルールや雇用・労働条件管理の在り方を検討し、方向性を示すことが課題。
としています。

具体的には、
□1-1.締結事由の規制
 有期労働契約の締結の時点で利用可能な事由を限定することを検討。

□1-2.更新回数や利用可能期間に係るルール
 一定年限等の「区切り」を超える場合の無期労働契約との公平、紛争防止、雇用の安定や職業能力形成の促進等の観点から、更新回数や利用可能期間の上限の設定を検討(有期労働契約の利用を基本的に認めた上で、濫用を排除。稀少となる労働力の有効活用)。

□1-3,雇止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化
 定着した判例法理の法律によるルール化を検討。

 有期労働契約締結の「合理的な理由」の義務づけや、季節的・一時的業務への限定
 一定の更新回数や年数を超えた場合、無期労働契約とみなすなどの法的規制
 現在明確な規定のない契約期間満了後の雇い止めの規制
 …などが考えられることとでしょうか?

 次に、均衡待遇及び正社員への転換等については
 有期契約労働者のうちには、「正社員」と同様の職務に従事していても正社員に比較して労働条件が低位に置かれている者が相当割合存在。また、頑張ってもステップアップが見込めないことへの不満は高い。このため、パートタイム労働法も参考に以下の施策が考えられる、としています。
□2-1.正社員との間の均衡のとれた公正な待遇
□2-2.雇用の安定及び職業能力形成の促進のための正社員への転換等

 その他の課題として
□3-1.現行の大臣告示による明示事項(更新の判断基準等)の法定事項への格上げの検討。
契約締結時点で契約期間についての書面明示がない場合の一定の効果付与等の検討(その際書面明示を行うべき「時点」についても、紛争防止を念頭に検討)。
□3-2.現行の大臣告示による雇止め予告等の法定事項への格上げの検討。
予告手当あるいは契約終了時の手当の検討。
□3-3.1回の契約期間の上限(現行原則3年)については、労使からは延長する具体的ニーズは把握されず、上限維持が一つの方向。
1年経過後は労働者がいつでも退職できるとする暫定措置については、役割を終えたものと考えてよいかさらに議論。


2.検討に当たっての基本的考え方等
▼労働者の能力発揮等を図るため、「雇用の安定」「公正な待遇等」を確保。安定的雇用へのステップなど有期労働契約が果たし得る役割等に留意。
▼需要変動等に伴う経営リスクへ対応するといった「柔軟性」への要請があるが、労使間のリスク負担や正社員と有期契約労働者の間の処遇を含めた雇用の在り方の公正さにも配慮しつつ検討
▼「多様な正社員」の環境整備など有期契約労働者以外の形態の労働者との関係も視野に。
▼予測可能性の向上による紛争予防、施策の相互関係に留意しつつ適切な組合せ等を検討。


 この後は、労働政策審議会で検討が進められます。11年度中のルール作りを目指すようです。
 日本の有期契約労働者の雇用保護の弱さを指摘。新規雇用の抑制や企業の海外移転の加速などの影響が生じないよう配慮しつつ、規制内容を検討すべきだとしています。

労働者災害補償保険審査官

2010年09月06日 | 労働法
 一生懸命の姿は、人に感動を呼び起こします。それは特別な世界での出来事だけではなく、日常のあちこちに…。職場を見渡せば、まわりで真面目に働く同僚の姿は、美しい。
 でも、働き過ぎは…

【「販売社員は自殺」労災審査官、労基署判断覆し逆転認定】
            《asahi.com 2010年9月3日》より

 加工食品メーカーの販売担当だった男性社員(当時49)の自殺について、愛知労働者災害補償保険審査官が労災と認定した。遺族の労災申請を受けた名古屋南労働基準監督署は「仕事の影響は認められない」として退けたが、同審査官は月1千万円を超す営業ノルマなどが自殺につながったと判断した。(以下略)

   ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 こんなニュースもありました。

 グループ長(部長級)として大規模プロジェクトなどを任されていた男性(当時55歳)がうつ病を発症して自殺したのは、仕事上の重圧が原因として、60歳代の妻が国を相手に労災認定を求めた訴訟の判決が3日、神戸地裁でありました。矢尾和子裁判長は「業務上のストレスは相当強度だった」として、遺族補償年金などを不払いとした国の処分を取り消しました。

 過労ではなく、ポストの業務内容から労災認定した司法判断は珍しいということです。


 厚生労働省の発表から
 昨年度の精神障害事案の労災補償請求件数は、1,136件(初の千の大台)
 年齢別では、30歳代が最多(364件)、40歳代が続く(316件)…働き盛りの年代


 労災の認定請求は労働基準監督署へ出します。
 (記事の方の場合は、08年7月、名古屋南労基署に労災と認めるよう請求)
 労基署は請求に関して決定を出します。
 (「強い心理的負荷などがあったとは認められない」などとして昨年6月に請求を退けた)
 決定に不服がある場合は、決定を行った行政庁の所在地を管轄する都道府県労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官に審査請求をすることができます。
 (愛知労働者災害補償保険審査官が労災と認定した)

 遺族側代理人の弁護士は「過労自殺については、審査官や(再審査をする)国の労働保険審査会が追認した労基署の判断が裁判で覆される例はあるが、審査官の段階で決定が取り消されるのは珍しい」と話していました。

 さて、審査官の決定に不服があるときは?
 厚生労働大臣の所轄の下に置かれている労働保険審査会へ再審査請求をすることができます。
 そして、審査会の決定に不服があるときは、裁判所に訴えるになります

 難しい言い方ですが「審査請求前置主義」と言って、保険給付に関する処分の取り消しの訴えは、再審査請求に対する労働保険審査会の採決を経た後でなければ提起できないことになっています。

まとめると
 ▽労基署が労災と認めなかった場合
   →労働者災害補償保険審査官に不服の申し立て(審査請求)ができる。
 ▽審査官の段階でも結論が変わらない場合
   →国の「労働保険審査会」に再審査を申し立てることができる。
 ▽判断が覆らない場合
   →行政訴訟を起こせる。
となります。

不払い残業代:パスタ店とアルバイト男性が和解 東京高裁

2010年08月26日 | 労働法
【不払い残業代:パスタ店とアルバイト男性が和解 東京高裁】
         《毎日jp 2010年8月24日 19時50分》より
 パスタ店「洋麺屋五右衛門」でアルバイトをしていた男性が、運営会社の日本レストランシステム(東京都渋谷区)に「変形労働時間制」を不正に適用されたとして、不払い残業代の支払いを求めた訴訟は24日、東京高裁(一宮なほみ裁判長)で和解が成立した。「制度の要件を順守していない」とした東京地裁判決に基づき、同社が約12万円を支払い済みであることを確認し、会社側が違法な運用だったと認めることなどが条件。(以下略)

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 4月に東京地裁で、同社に残業代や付加金など計12万3480円の支払いを命じた判決が出ていました。同社では1か月単位の変形労働時間制を導入し、1日8時間を超えて働いた場合でも残業代を払いませんしたが、半月分の勤務表しか作っておらず、「労働基準法の要件を満たしていない」として、同社の変形労働時間制は無効とし時効分を除く残業代などの支払いを命じました。

 で、和解成立。

■付加金は?
 労働基準法第114条に「付加金の支払」があります。
『裁判所は、解雇予告手当、休業手当、割増賃金の支払い規定に違反した使用者又は年次有給休暇の賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。 』

 付加金は4つ限定です。通常の賃金は入っていませんよ(念のため)
 付加金は判決の確定によって初めて発生するものです。
 控訴していても、それが終わるまでに支払えば付加金を免れることができます。
 (これって、よくありますよ)

■変形労働時間制?
 労働基準法では週40時間、1日8時間以内の労働時間を基本としますが、変形労働時間制は、季節などによって忙しさに差がある場合などに適用でき、1カ月や1年など一定の期間について、週当たりの平均労働時間が法定労働時間以内(1日8時間、週40時間)であれば、特定の日や週が規制を超えた労働時間となっても、残業代を払わなくてよいことになっています。
 ただし、事前に労働日や労働時間を明示することが条件となっています。

 男性は事前に説明を受けないまま、06年3月~08年2月に変形労働時間制を適用されたとして、訴えていました。

 事前の説明、大切ですよ!
「ちゃんと説明した」「いや、そんなことは聞いていない」では水掛け論
 しっかりと文書に残しましょう!

厚労相、派遣法改正案の臨時国会提出に意欲

2010年08月20日 | 労働法
社会保険労務士試験日まで、あと2日 最後まであきらめないで下さい!
  負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと♪♪
  ダメになりそうなとき、それが一番大事♪♪


【厚労相、派遣法改正案の臨時国会提出に意欲】
             《日経Web 2010/8/19 20:57》
 長妻昭厚生労働相は19日、継続審議となっている製造業派遣の原則禁止などを盛り込んだ労働者派遣法改正案について「時間をかけて閣議決定したので、何とか通すようにやっていきたい」と述べ、秋の臨時国会に提出する考えを示した。同日視察した東京都八王子市の光学部品工場内で、記者団の質問に答えた

 派遣法改正案は、派遣会社に登録して仕事があるときだけ働く「登録型派遣」や、2カ月以下の短期派遣を原則禁止とする内容。野党や企業などから「規制が厳しすぎる」との声が出ている。参院で野党に多数を握られ法案が通るかどうかは微妙な情勢だが、厚労相は「野党の理解も必要だ。どういう対応をするかは今後考えたい」と話した。(以下略)

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 さて、どうなるのでしょうか?

 人材派遣スタッフの時給が上がらず、厳しい状況が続いているようです。
 リクルートがまとめた「派遣スタッフ募集時平均時給調査」から
▽20100年6月の3大都市圏(関東、関西、東海)の平均時給…1450円
  これは、前年同期比で0.5%減。24か月連続で前年実績を下回っっています。
  ただ、オフィスワーク系は2カ月連続で前年同月を上回る。
 ちなみに、
  エン・ジャパンの調査…全国の派遣社員募集時平均時給は1542円(0.1%減)
    同社の調査開始(07年12月)以来、過去最低
  ディップの7月の全国平均時給…1349円(0.7%減)

▽職種別では、
 オフィスワーク系(通訳・翻訳やデータ入力、金融事務など)はプラス幅を広げている。
 医療介護・教育系は10年5月にマイナスに転じ、その幅を広げている。
 クリエイティブ系(デザイナーなど)は2カ月連続で前年を上回った。
 IT・技術系は9か月連続で前年実績を下回っているもののマイナス幅を縮めている。

▽地域別では、
 3エリアとも前年同期比でマイナス。なかでも、東海はすべての職種で前年同月を下回った。

▽関西の平均時給…1,318円(前年同月1,345円、前月1,328円)
 関西全体の平均時給は16カ月連続で前年同月比マイナス。

▽関東の平均時給…1,519円(前年同月1,530円、前月1,513円)
 関東全体の平均時給は25カ月連続で前年同月比マイナス。

▽東海の平均時給…1,293円(前年同月1,326円、前月1,296円)
 東海全体の平均時給は、2カ月連続で前年同月比マイナス。


雇用環境は最悪期を脱した「需要は徐々に上向いている」との見方が広がってはいます。
 *業績の回復した企業に、採用意欲が高まった
 *貿易事務や国際会計などで、よりスキルの高い人材の求人が増えている
 *産休社員の代替要員や退職者の補充などの求人が戻ってきている
 とは、大手派遣各社の声です。

 募集状況が良くなり、次に、スタッフの時給改善??
 となると、まだしばらくはかかりそうですか?