本の紹介・松谷みよ子著「学校」
ひさしぶりの本の紹介コーナーです。松谷みよ子さんの現代民話考シリーズに収められている、「学校」を紹介したいと思います。松谷みよ子さんのお話には、戦前戦後の色彩が大きく反映されています。そのためか、重く暗いイメージがどうしてもついてまわります。この「学校」も例外ではありません。ただ、どのような時代であれ、子どもたちの集まっている「学校」という場は特有な浮遊感が漂っているものです。この場だからこそ、怪談話が多く生まれる所以かもしれません。子どもたちが帰ってしまった「校舎」には、何が居ても不思議はないのですから。子どもたちも成長すれば、その校舎を後にする、先生にしても数年もすれば去っていく、行き過ぎる場だからこそ「ふりかえる」意識が芽生えても不思議はない。松谷みよ子さんの視線はあくまでも優しい、そこに住む集落の人々の心情に深く入っていく。この人の魅力は、その視線にあるのかもしれない、相当に残酷な出来事が背景にあったとしても、その眼は常に翻弄された人々に向けられています。
今年も、あの日がやってきました。暑い日になりました、ヒロシマ・ナガサキに繰り返し想うことがあります。わたしのアトリエには、松谷みよ子さんの「まちんと」があります。戦争は、大切なものをすべて失わせます。