以前の記事「今、米国MBAに行く意味はどれだけあるのか」の続きで、
じゃあ、どうやって、MBAに行く意味を高めればいいのか、という話。
最初に言っておくと、MBAをどう活用するかなんて人によって様々だ。
それを、全体を言及できるようムリに一般化すると、無意味な言葉の羅列になってしまうのが、この記事の難しいところだった。
でも、出来るだけVividに(明確に)、具体化もしつつ、皆に当てはまるよう一般化を試みてみた。
自分でも書ききれた気がしないので、上梓するのをためらっていたのだが、
いつまでも寝かしておいても仕方ないので、一応議論のたたき台として出して、
皆に叩いてもらいながら、後で更新していくことにした。
まあ、ブログなわけだし。
というわけで、私が特に大事と思う、6つのポイントを書いてみることにした。
今日はとりあえず最初の3つを書く。
1. 具体的な自己革新目標を持ち、その中に「今の自分を根本的に変える」ような破壊的な自己革新目標を含める
まず、将来自分が何やりたいのか、そのためにMBAという場がどう活用して、現在の自分をどう変革していくべきか、を明確に考え、目標を立てる。
クリステンセンの「破壊的イノベーション」と「持続的イノベーション」ではないが、私は自己革新には二種類あると思う。
一つは、英語力を高めるとか、ファイナンスのマスターになるとか、自分の性格とか根本的に変えなくても割と出来る、「持続的」自己革新。
もう一つは前のエントリに書いたように、将来自分が達成したいことに比べると、根本的に今の自分を変えないといけない、「破壊的」自己革新。
私の場合は「個人の才覚と瞬発力に頼らない自分になる」だったが、
逆に「人に頼らず、個人の力で人を引っ張っていけるようにする個人力をつける」でも、
本人がIt's high time to change...(もう変わんなきゃ潮時でしょ)と思うものなら何でもいいと思う。
まあ、せっかく仕事から離れて、2000万円以上の機会費用を払うことを考えると、
じっくり内省し、将来を考える時間があるし、人間関係でも時間の使い方でも色んな実験が出来るので、
破壊的に自分を変える目標を含めるのが理想的だと思う。
2. 持続的な自己革新目標は複数持ち、目標の「ポートフォリオ」を組み、
MBAで得られるリソースの状況に応じて更新する
それに加えて、それ以外の持続的な自己革新目標も、明確に持っておくべき。
2年間と2000万円の機会費用を投資することを考えると、
確実に何かを得られるように、両立可能な目標は複数持っているほうが良いと思う。
で、2年間という限られた時間を、何を優先させて、どのくらいの時間を使うか、考える。
言ってみれば「目標のポートフォリオ」を組むわけだ。
またMBAに来てから、色んなリソースがあることを知ると思うので、それに応じて、
自分の目標のポートフォリオも少しずつ更新していくのが良いと思う。
例えば、私の場合、優先順位順に、次の具体的な目標があった。
-イノベーションマネジメント分野では、研究の最前線も学び、日本に帰ってから何冊か本が出せるくらいの知識と人脈と考察を深めておく。
全米中のMBAに今いる人と比べても、自分がこの分野なら一番語れる、と思えるくらいになる
-完全英語環境でも、ある程度の規模の組織をリードできるだけの英語コミュニケーション力・理解力をつける。
特に複数のバックグラウンドを持った人の集まる組織で齟齬があったとき「あいつらわかってない」で終わらせず、
双方の考え方の違いを文化、歴史、背景知識を含めて理解し補足し、建設的に全体をリードできるような人になる
-基礎が無かった経済学、ファイナンスの分野で、英語でも業界の人とある程度話し、インサイトが出せるくらいの、一通りの基礎を身につける
-仕事してるときは行けないような旅行をたくさんして、ワインもたくさん飲み、それをきっかけに友達をたくさん作る
具体的に目標を持ったら、MBAの中のどういうリソースを使ってそれを実現するかを考える。
例えば、上の最初の目標は、最初、イノベーション関連の授業を大量に取りつつ、
論文などをたくさん読んで、自分も論文を書くってことかな、くらいにしか思ってなかった。
ところが、MBAで時を過ごすうち、それ以上にリソースがあることを知った。
$100Kビジネスコンテストの主催者が出来る、と知ったときは、授業が忙しいと分かっても飛びついて、
その結果、英語環境でも、自分の弱点は同じであることを知り、コミュニケーションの仕方を学んだ。
先生から、TAをやってみないか、と言われたときは、これはチャンス!と思って受け入れた。
実際に、それをきっかけに先生の弟子や知り合いの研究者をきっかけに、人脈も広がった。
修士論文を書く、という手があることを知り、それもやってみることにした。
得られるリソースによって、達成目標も少し変わることもあると思う。
上の目標は今でも変わらないが、このブログが有名になって、皆様にいただけるフィードバックから
(ネガティブなのも含めて)学ぶことが増え、
「日本語での発信の仕方を学ぶ」というのも、今の私の目標の一つに加わり、時間配分もかわっていった。
逆に「旅行」は、今後もいつでも出来るんだからいいや、と思えるようになり、最近はずっと旅行にも行ってない。
3.常に自分をUncomfortable Zone(つらいと思う状況)に置く
どこのMBAでも最初に習うと思うが、人は「Uncomfortable Zone」に置かれたとき飛躍的に成長する。
勉強が好きな人は、大してつらくもなく勉強を続けることで「持続的な成長」はある程度可能だろう。
しかし、上に書いた「破壊的な自己革新」が起こって大きく成長するのは、「つらい」と思うときなのだ。
つらすぎて燃え尽きてしまっては元も子もないが、「快適」と感じるところよりはストレッチする。
それを2年間意識して続けてる人と、そうでない人は、本当に、2年間で圧倒的に差が出る。
仕事では自然とストレッチさせられるが、学生は楽しようと思えば出来るから。
特に30代とか、割と年いってからMBAに行く人は、このことは明確に心に留めておいたほうがいい。
年をとると、どんな環境でも、自分が快適と思える逃げ場を作るのがうまくなる。
それをやっていたら、破壊的な成長は出来ない。
細かくは書かないが、私はかなり苦労して、自分の行動パターンもずいぶんと変えた。
このブログもそれを助ける一助となったと思う。コメントへの返答など。
自分を変えるとき、成長するとき、必ず「つらい」瞬間が続く。
それを受け入れて、頑張っているうちに、いつの間にか大きく成長するのだ。
持続的な成長でも、短期間に大きく成長しようとしたら、「Uncomfortable zone」に突入するのは必須だ。
例えば私は英語での発言になれるため、「授業では必ず1時間1回は発言する」というのも課した。
クラスの状況に応じて、達成しないときもあったけど、どんなに予習が間に合ってないときでも、
必ず何か意味のあることが言えるよう、頭をフル回転させて考えた。
楽はしないように心がけた。
人生二度目の修士論文を書くことに決めたのもそうだ。
TAを二つもやり、通常の授業をとりながら、論文を書く、というのが苦行であることは分かっていた。
でも、自分が本を書きたい、と常々思っているけれど、
「自分の考えをブログのような形で何となくではなく、きちんと完成させる」ことが苦手なのは分かっていたので、
敢えてやることにした。
こんなのもある。私の会社の先輩には
「毎週末、必ず同じMBAの学生が集まるバーに行き、ネイティブの学生に5人以上話しかけて、
1時間以上会話を持たせる、を目標に1年間やる」という目標を立てて実践した人がいた。
実際にやってみると分かるが、これは結構きつい。
無視こそされないが、英語のせいで話が進まず、
相手が飲み物を取りに行ってしまう(そして自分から去る)、ということも多々あり、心がめげそうになる。
しかし、その彼はこれを自分に課して、その2年間で相当流暢に英語がしゃべれるようになった
「安心できる快適な場所」に逃げ込まず、自分をUncomfortable zoneに置く。
仕事では常に求められるが、そうではない学生だからこそ、意識してやるのが大切だと思う。
の考え方に強く共感したのでコメントさせて頂きます。
この意識が難しいところですね。
初めは誰もが自分をUncomfortable Zoneに置こうとするのですが、その中でつらいことがある度に、徐々にそのZoneでの立ち位置が外へ外へと向かい、気がつけばその外に出てしまっているような気がします。
また最初はUncomfortable Zoneでも、慣れることで"Uncomfortable"でなくなってしまっている。それに気がつかず、新しく身を置くべき次のUncomfortable Zoneを見つけられていないこともあると思います。
この記事により、自分がUncomfortable Zoneに身を置けているのかを意識しなおすことができました。私の場合、Uncomfortable Zoneに身を置くようにしてきましたが、いつのまにか身を置いている"つもり"になっていたようです。
ダンス・パーティーなるものにつれていって
もらいましたが、何もできませんでした。
飲み物かって、さあ、せっかくだから誰かに
話しかけようかと思っても、動けない。
よくよく考えたらそんなこと日本でだって
難しいだろうに、まわり外国人だったら
そりゃそうよってことで。
そうですか、留学生の中にはそういう壁を
超えようと努力している人もいるんですね。
どう活用すべきかという視点がないと投資が回収できないということですね。
この前の記事も思いましたが「MBAを取りに行くこと自体」に
ほぼ価値がなくなったのは動かしがたい事実なのだなと感じました。
>「年をとると、どんな環境でも、自分が快適と思える逃げ場を作るのがうまくなる。」
これはどきっとしました。私も気をつけたいと思います。
論文頑張ってください!
MBA卒業までに就職活動は出来るのでしょうか?
また
卒業と同時に転職先へ就職する方は
どのくらいいるのでしょうか?
(例えば、全てを投げうってMBAスクールに行く場合や、
戻る会社が無い立場のフリーな人間の場合です)
ぜひ
ご指導お願い致します。
なるほど。
この前もお話しましたが、お若いときは意識しなくても出来ると思いますよ。
是非若いうちにご留学ください!
@とおりすがり関西人さん
おっしゃるとおりですね。
そしてそういう壁を越えようとしないと、価値がなくなって来てる、という厳しい現実だと思います。
@Willyさん
それはそうですね。
「卒業すれば価値がある」という時代は終わったと思います。
日本の大学もそうですよね。
あるべき姿だと思います。
@Wishさん
私の過去ログ参照してください。
各校の転職情報については、各校のURLで詳細なレポート出してますから、それをご覧ください。
天の啓示でもいいけど。ただ、天の啓示って、アメリカ大統領はみんな受けていて、あのブッシュ・ジュニアだって受けたらしいし。変な国だよね、アメリカは。
あと誰もやらないことをやるのが、本来のイノベーションだし、誰もMBAにいかなくなったら、挑戦するのもいい。
それと、イノベーションっていうのは、イノベーションのジレンマの方が主題であってさ、言葉の中心をつくと、MBAにイノベーションを求めると、イノベーションのジレンマにつきあたってしまうのだよ。
それでも、素敵な人と出会えて、友情がずっと続くならば、胸をはっていいよね。ただし、友情が続くならばだよ。で、友情というのは、自分が死んだら、泣き苦しんでくれる人だよ。
あと、一番重要なのは、アメリカがMBAできてくれとか、日本の組織や個人がMBAへいってくれというポジションを作ったならば、こちらは多いに期待していいよね。つまり、求められていないことをやっても、人間は無力な存在。はじめに戻るけど、天に求められたという錯覚でもいいから、これがないと、大統領はつとまらないのだろうね。
自分の「破壊的」自己革新は海外ではなく国内でやりましたが、本当に人間として脱皮したかなと思えるぐらいにはなりました。
とはいえ、道はまだまだ途上。お互い信ずべき信念を胸に頑張っていきましょう。
石川さんのコメントはいつも読むのが楽しいです。
これからも楽しみにしてます
@ツバメさん
恐縮です。
しかし余裕はないです。いまも論文書くストレスで大変です(笑)
独立したのでわかったのですが、サラリーマンやってるとほっといても仕事がある程度降ってくるので適当に能力も伸びますし、その分お金も入ってきます。
一方、起業・独立すると、仕事なんてまず降ってきませんし、仕事をこなせなくてスキル・キャリアが伸びないということも多々あります。何もしないと疲れないし楽ですが、やはりおっしゃるように忙しくしている人のほうが儲かるしスキル・キャリアもアップします。
私も独立して貯金を食いつぶし、そして前職の半分の給与でバイトしなければならなくなって、そのことに気づきました。なかなか高い授業料でしたね(笑)