池田信夫さんの記事を読んで、アナログ放送が来年7月に終了するということを思い出した。
デジタル放送が本格化した2006年頃は、まだあと5年先、と思っていたけれど、もうそんなに経つのかぁ。
で、日本では、こんなことが行われてると知った。
(以下記事より引用)
きょうからアナログTVの画面の上下に黒い枠を出す「レターボックス」の放送が始まった。これはHDTVの横長の映像を左右を切らないでアナログTVに出すもので、「アナログ放送はもうすぐ終わる」と知らせるためのいやがらせ放送である。さらに来年4月からは、下のように放送画面の全体に「デジタルに買い換えろ」という表示が1日中出る予定で、7月に電波が止まる前にアナログ放送を見ることは事実上不可能になる。
■デジタルテレビ・チューナーが買えない家庭はどうすればいいのだろうか・・・
こういう記事を読むと、私はどうしても、家に古ぼけたアナログテレビが一台しかなくて、
お母さんが一生懸命働いて、子供をなんとか養っているような家のことを勝手に想像してしまう。
そういう家では、一体どうするんだろう?
ずっと使ってたテレビ、急に見られなくなっちゃうよね。
でもうちお金ないから、そんな高いテレビすぐには買えないよ。
あ、デジタルチューナーっていう7000円くらいのを買えばデジタルテレビ見れるって。
でもどこに買いに行けばいいんだろう。
7000円もお金かかるの、うち、すぐに買えるかな。
と、忙しいお母さんに代わって子供が一生懸命考えるところとかを、勝手に想像して悲しくなる。
一応この記事によると、生活保護世帯約260世帯にデジタルチューナー無料配布することは議論されてるようだが、
上記のような、ワーキングプアな家庭とかで生活保護受けてない家庭とかどうなるんだろう?
記事でも言われてるように、ちゃんとこの人たちへ財源あるんでしょうか・・・心配。
でも、全て国の財源でまかなうってのも問題だよね・・。
ネットの時代でも、こういう家庭こそデジタルデバイドで、まだまだテレビが重要な情報源なわけで、
緊急時の情報とか、テレビで見るわけだ。
そういうところから、情報を得る権利を奪う(またはアップデート代を取る)ということに
一庶民として違和感を感じてしまう。
新しい放送始めるのは良いけど、何で前のを皆一律でやめちゃうのか。
そこには、無料アナログを続けて、こういう家庭の視聴率をとる、という自由競争すら無いわけだ。
私は、新しい技術を普及させることには常に前向きだけど、それは技術が人々の生活を変えるからだ。
この場合、技術というより、社会的弱者を置いてきぼりにしてしまう制度の問題なわけで、
そこにははっきり問題意識を持っている。
■技術普及の理論からも、5年で切り替えをするこの計画はかなり無謀と思われるが・・
こういうことを言うと「世の中は変化するのが当たり前で、弱者に合わせていたら進まない」という人がいるだろう。
しかし、5年-10年っていうのは、技術の切り替えには一般的に短すぎるスパンだと思う。
先日家電製品の普及についての記事を書いたが、
例えば、アメリカではカラーテレビが9割の世帯に普及するまでに25年かかっている。
日本は通常普及速度が速いので恐らく20年くらいで済んでいると思うが、でもそのオーダーだ。
他の技術を見ても、だいたいそのくらいの時間がかかっているのは分かると思う。
(追記:日本ではカラーテレビ発売から約10年で9割の世帯に普及しています。こちら参照)
技術の普及っていうのは技術への慣れの問題だけでなく、社会の経済格差の問題もあるため、
どのような技術でも、「ほぼ全世帯」に普及するのはだいたい20年程度かかるわけだ。
(日本はこれが早くて10-15年のオーダーですが)
それなのに、本格的に移行してからまだ5年しか経っていないのに、前の技術を終わらせてしまう、
というのは、技術普及の理論から見ても、そもそも無理がある計画だったのではないか?
「そんなこといまさら言うな」と言うかもだが、
いずれにせよ、日本のデジタルテレビの家庭普及率は昨年時点で50%以下。
ってことはまだデジタルテレビが無い家が2500万世帯あるということ。
私の思うのはアナログ放送停止を先延ばしにする、というよりも、
アナログ放送を続けたい放送局は残して、自由競争にする、という選択肢は無いんだろうか、ということ。
だって「そんなことするなら、もうテレビ見ないよ」って人も世の中にはいますよ。
テレビ見ないひとと、テレビ見られないひとばかり増えてしまったら、
困るのは誰なんだろう・・と思います。
追記:
で、政府としても当然弱者を置いて完全移行するってわけには行かないので、
今一番困ってるのは、やり始めたものの、思ったように普及が進まない政府の方でしょう。
現実的な解としてはデジタルチューナー普及に向けた予算を確保して、普及させるしかないんでしょうね・・・。
アメリカでは、デジタル化と共に急激にアナログテレビの中古価格が下がったような気がしています。
引っ越す前に20インチのオンボロテレビを上手いこと20ドルで売り、32型の大型ブラウン管
テレビを25ドルで買いました。1インチあたり40セントで大型化です。
今は、デジタル・ケーブル放送をチューナーをレンタルして映してます。
お得な買い物ではありましたが、次に引っ越す時どうやって運ぶんだろう?
と途方に暮れています。
悪意で古いデーター持ち出したのか、気が付かなかったのか?どっちにしろひどい
最終的にチューナー配布で世帯普及率8%はカバーできるし、エコポイントも延長されたし・・・
年内に普及率80%確保は手堅いですから、後は無料チューナー配布と、3000円チューナーでOKでしょうね。(来年には3千円チューナー出ますよ)
カラーTVの普及に20年って、ソースあるのですか?
電波再編やデジタル技術の進化を考えれば、5年の猶予期間は長すぎる位ですよ。
(地デジの仕様は既に時代遅れですから。。。46インチで見ると、ブロックノイズ多すぎで汚い~)
余談ですが、アナログ終了が2011/07だと思ってる人が多いですが、その三ヶ月前から実質的に視聴できません。
去年1年で普及率20%以上増加ですから、今年はペース半減したとしても、80%は達成確実(去年同様のペースなら90%達成)
それに現在5000円で買えるチューナーが、今年の末には3000~4000円まで下がる事を考えれば、年内90%達成できるペースかな
アナログを捨てることを与件とするならば、その選択肢はないでしょう。(先延ばしも良くはないけど。)ネットワーク外部性の典型例でしょう。
>本格的に移行してからまだ5年しか経っていないのに、前の技術を終わらせてしまう、というのは、技術普及の理論から見ても、そもそも無理がある計画だったのではないか?
白黒テレビでもカラーは受信できたので、政府の補助でもない限り、スイッチングに時間がかかったのは当然でしょう。もしも政府が金銭的な補助も出来るならば、そしてそれが合理的に設計できたならば、無理はなかったかと思います。恨むべくは、そこらへんの制度設計を5年の間に出来なかったことでしょう。
(ところで、「技術普及」の理論といったときには、クリティカルマスに到達するまでのプライシングとかは含まないのでしょうか?)
>一応この記事によると、生活保護世帯約260世帯にデジタルチューナー無料配布することは議論されてるようだが、
上記のような、ワーキングプアな家庭とかで生活保護受けてない家庭とかどうなるんだろう?
USのようにチューナー限定(HDTV等への補填は不可)のクーポンにしたほうがよかったでしょうね。ケーブルを払う金のない我が家はそれでなんとかデジタル化に間に合いました。(USがnonresident alienでさえもクーポンを配っていたのは、外部性の観点からすれば合理的で感心しました。)まあ、USの場合はケーブルが大きなシェアを占めてるので、デジタルへの移行は日本ほどは大きな問題ではなかったのでしょうが。
そうすると、ますます未使用周波数帯が減るのでだめでしょうね。
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/change/index.htm
>5年-10年っていうのは、技術の切り替えには一般的に短すぎるスパン
ところが同じく電波を利用する携帯では、これぐらいのスパンでどんどん切り替わっています。
ユーザ側で比較的混乱がないのは、キャリアがユーザに対して逃げられないように保護策を打ち出しているというのもあると思います。
VHF帯には既に携帯電話の新サービスが開始予約をしてしまっているし
既に国費を1兆近く注ぎ込んでいる総務省(旧郵政省)としては
延長の声明を出した途端地デジ用の機器は売れなくなるので
例え延期があるとしても相当差し迫ってからでしょう。
「世帯普及率」なんて数字を出すところがギョーカイのオッサンって感じですね。
今年2月にNHKが発表した数字では、地上波デジタル受信機の普及台数は7千万台といいますから、日本にあるテレビ全体が1億3千万台前後(NHKによる)の半分強に過ぎないのは事実じゃないですか。(Lilacさんの「家庭普及率」という言い方が正確でないとしても)
あなたも悪意で「世帯普及率」なんて数字を持ち出したのか実際の普及率に目をつぶったのか知りませんが、全くヒドイとしかいいようがありません
また「共同受信施設(共聴施設)に限れば、地デジ対応は25・8%と、10年3月末の目標値50%の半分にとどまっている。毎日新聞(2010年3月10日東京朝刊)」という点を全く無視して「年内90%達成」なんてノーテンキなことを言ってる人には、Lilacさんの書いているごくフツーの感覚などわかりっこありません。彼女は感覚はフツーですが、博学才頴、汗牛充棟の人、ギョーカイのオッサンとはレベルが違います
地上波デジタル化の一番の問題は、5年が長いか短いかじゃなくて、政府や放送局それにギョーカイ人が自分に都合のいいことばっかり言いまわるので、フツーの人たちが疑いの目で見始めたことじゃないでしょうか。
秋
へえ、これってアサヒっぽいんだ・・・。
私にとっては実は左右関係なく普通の感覚ですよ。
アメリカに来てからも、ホームレス生活支援のボランティアとかやってるし。
記事中にも書いたのですが、こういうものが放送局同士の自由競争にならないのは何故なんだろう、ってとこが疑問でした。
貧困層がそれなりの大きな市場になるアメリカでは、貧困層を置き去りにしてこういうのが進むってことはそこまで無いですからね~。
@だいきちさん
>カラーTVの普及に20年って、ソースあるのですか?
と言われて調べてみたんですが、こんなのありました。
日本は本当に立ち上がりが早いですね。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2280.html
カラーTV発売開始から約11年で9割に達していますね。
総中流ってこのことだなあと思いました。
>電波再編やデジタル技術の進化を考えれば、5年の猶予期間は長すぎる位ですよ。
前の記事にも書いたように、普及の速度は国によって差はありますが、時代によってそこまでの差はありません。
だからカラーテレビ普及に10年かかったなら、こちらも10年かかるでしょう。
これは国民の新製品への慣れの速度と経済格差を反映するものだからです。
@バッキンガムさん
確かにプライシングは技術普及に影響ありますが、
これは、アメリカでは薄型テレビはカラーテレビより2倍くらいの速度で下がってるんですが、
日本ではそこまでの差が無いんですよ。
チューナークーポンっていうのは確かにそうかなと思いますね。
やり方って重要だと思います。
@dannyさん
まあ2G廃止ってのも、個人的には日本すごいな・・と思いましたけどね。
キャリア間はまだ競争があってまともってことだと思ってます。
@alphaさん
政府としても、思ったようにデジタル対応テレビ普及が進まない状況には業を煮やしてるでしょうね。
@趙秋瑾さん
お褒めの言葉?どうもありがとうございます。
そうそう、何かどっちの立場っていうより、普通の消費者の感覚で書きました。
業界にどっぷりつかっても、そういう感覚は忘れないでいたいです。
現実に戻ると、いずれにせよ言い出してしまったことなので、いまさら見直し、というのは難しく、
何とか財源を見つけてデジタルチューナーの普及を高めていくしか解は無いんでしょう。
政府もバカではないので、弱者をおいていくってことはありえず、こんな記事書かなくてもにっちもさっちも行かなくなってる状況ということは想像されます。
そういう視点で書いても良かったんですが、今回はこういう書き方で。
皆さんが鋭い読み手でよかったです。
>日本は通常普及速度が速いので恐らく20年くらいで済んでいると思うが、でもそのオーダーだ。
>他の技術を見ても、だいたいそのくらいの時間がかかっているのは分かると思う。
単に、その技術に置き換えることについて、明確なメリットが
あるかないかというだけの話かと。
「テレビのデジタル放送って何かメリットがあるの?」ということです。
消費者にメリットがあれば、カメラがデジタル化されたように、
テレビも速やかにデジタル化されるはずです。
メリットが何もないから総務省が必死になって普及させる必要があるわけで。