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牛丼3社の集客戦略その2

2013年05月01日 16時59分43秒 | 学習支援・研究
前回の続き。

大手3社の価格とカロリーを比較
「ミニサイズ」の有無は意外に重要


(2)メニューのサイズ

3社とも、主要メニューの牛丼(牛めし)については、
3サイズ以上を展開している。
しかし、女性客の集客に必要なのは
「ミニサイズがあるかどうか」(笹木氏)という。

3社の牛丼(牛めし)サイズについて、
価格とカロリーを比較すると次のようになる。
(各社のHPから引用)

吉野家 牛丼
並盛 280円/674kcal
大盛 440円/849kcal
特盛 540円/1016kcal


写真:吉野家の並盛り

すき家 牛丼
ミニ 230円/476kcal
並盛 280円/634kcal
中盛 380円/694kcal
大盛 380円/817kcal
特盛 480円/944kcal
メガ 610円/1124kcal

松家 牛めし
ミニ 230円/518kcal
並盛 280円/743kcal
大盛 380円/984kcal
特盛 480円/1348kcal

「自分もターゲットなのだ」という認識を持たせ、女子の抵抗感を薄める

「並盛」があればそれで充分ではないか、という気もするが、
女性の中には「並盛」でも食べ切れないという人もいるだろう。
カロリーを気にするのであれば、
400kcal台のすき家のミニサイズは魅力的だ。

また、量自体の問題だけではなく、
メニューの中にミニサイズがあるだけで、
女性客や子ども連れ客、シルバー層にも
「自分もターゲットなのだ」という認識を持ってもらえる。
席について結局並盛を頼むにしても、
店に入る前の立て看板で「ミニサイズ」を目にすることで、
店内に入ることへの心理的な抵抗感は薄まるだろう。

女性用メニューやスプーンを提供
「小さな気遣い」に女子は惹かれる


(3)女性用メニューの設定

同じように、女性客に「自分もターゲット」と
気づいてもらうきっかけとなるのが女性用メニューの設置だ。
女性用メニューについて、
重盛氏は「女性は値段が安いことよりも、
メニューの彩りやバラエティに惹かれる人が多い。
たとえば、丼物に紅ショウガを添えるかどうかといった小さな違いが、
女性客の集客にはポイントとなる」と分析する。
この点で一歩先を行くのがすき家だ。

「すき家は、メニューのラインアップが豊富。
現在、期間限定で『やきそば牛丼』(並盛=390円)を販売しているが、
子連れの母親にはうれしいメニューなのではないか。
子どもが小さければ、
『焼きそばを子どもに食べさせながら牛丼をお母さんが食べる』
というシチュエーションも想定できる」(重盛氏)

ゼンショーホールディングスによると、これ以外でも、
とりそぼろ丼が女性に人気だったという。
そこで、並盛・大盛のみだったラインアップを見直し、
女性用の並盛サイズを設定、
「新とりそぼろ丼」として並盛の価格を480円から280円に値下げした。

また、女性は牛丼を食べる際にかきこむ食べ方をしないため、
スプーンで食べたいという要望が多く、
これについても対策を取った。

「カレー用のスプーンしか用意していなかったため、
丼とのバランスが悪く、
『ちょっと大きすぎる』といった声が寄せられました。
丼とのバランスを考えて、大きすぎず、
女性が大きな口を開けなくても食べることができる
細身のスプーンを独自に開発し、
今ではカウンターの箸の隣にご用意しております」
(ゼンショーホールディングス)。
女性客集客には、細かな気配りが求められるというエピソードだ。

笹木氏は、すき家のデザートメニューに言及する。

「すき家では、デザートメニューも豊富。
明らかに女性客を狙っている。
また、おもちゃ付きの子ども向けメニューを出すなど、
すき家はターゲット層の拡大に力を入れている印象が強い」(笹木氏)

すき家では昨年6月から、
「すき家から120円の贅沢」と銘打った
「SUKIYA SWEETS」の発売を開始。発
売当初はプリン、杏仁豆腐、バニラアイスの3品だったが、
現在は宇治抹茶アイス、みかんゼリーなども販売している。

もちろん、吉野家、松屋でも女性客をターゲットにしたメニューはある。
各社とも女性客集客は「重要な課題」(吉野家)、
「もっと増やしたい」(松屋)と考えているという。

吉野家では、一部店舗で実験的にみそ汁や小鉢2品をセットにした
「小町セット」(490円)を提供。
夏期限定メニューの「焼味ねぎ塩ブタ丼」(並盛=390円)も、
彩りや細かな味の違いにこだわる女性向けのメニューだ。
松屋では「デミたまハンバーグ定食」(580円)や
「ビビン丼」(並盛=430円)、
夏期限定の「フレッシュトマトカレー」(並盛=330円)などが、
女性をターゲットにしている。

安さではなく「ワクワク感」を提供
求められる付加価値は変わりつつある
 こうして、各社が女性客の集客を目する中で気になるのが、笹木氏のこんな指摘だ。

「少し前までは、ラーメン店も女性が1人で入りづらい店でしたが、
そのイメージは薄くなりつつある。
若い女性のラーメン評論家も、メディアに登場しています。
ラーメンと牛丼、違いは色々ありますが、
価格の違いは大きい。
牛丼は280円ですが、ラーメンは700円前後。
牛丼はマクドナルドのセットメニューより安いです。
女性は食事について安ければいいわけではなく、
むしろ安すぎるものを食べること、
また、その様子を誰かに見られることへの抵抗感があるのでは」(笹木氏)

女性も価格には敏感だが、
一般的に特に敏感になるのは、
価格の高いものが割引されているとき。
女性はよく、「自分へのご褒美」を求めると言われるが、
もともと価格の安い食事を率先して選ぶときに、
少なくとも「ワクワク感」「幸せ感」を感じることは少ないのではないか。

安さを特徴とする牛丼店に、
この点についての解決策はないのか。
「ワクワク感」「幸せ感」を感じるもののヒントとして、
重盛氏はこう言及する。

「松屋が定食をサラダ付きにしてヘルシー志向を追求したり、
すき家がメニュー数を増やしたり、
メニューの更新頻度を高めて、
『今度行ったらどんなメニューがあるのかな?』と
消費者を飽きさせない工夫をしているのは、
良策ではないかと思います」(重盛氏)

ワンコイン以下の食事でも、
消費者は「幸せ感」を求める時代。
ターゲット層が女性、ファミリー層、
シルバー層と多様化することで、
求められる付加価値は変容しているようだ。

吉野家は値下げしなくてもよかった?
女性取り込みのために持つべき価値観


新たなターゲット層へ向けての開拓が進むなか、
100円値下げに踏み切った吉野家が強調したのは味についてだった。
「吉野家史上、最高にうまい牛丼」と言うその理由は、
米国産牛肉の輸入規制が緩和されたことにより、
これまでの月齢15ヵ月に対して月齢30ヵ月までの牛肉を
輸入できるようになったこと。
吉野家が目指す品質を叶えるために、
素材の調達が整ったというのだ。

女性客やファミリー層への訴求では、
すき家に一歩引けをとった感のある吉野家だが、
味の強化で吉野家ブランドを再度高めていきたいところだ。
重盛氏はこう提言する。

「うまいことに自信があるならば、
100円値下げせず、据え置きでも良かったかもしれませんね。
あえて100円値下げしたのは、
味にそこまで自信がなかったからなのではないかと、
実食して感じてしまった。
歴史ある吉野家の味を愛する根強いファンは多いです。
私も吉野家の味が好きな1人として、
エールを込めて、『さらに美味しいものを』と言いたい」

「安くて美味しい」は当たり前。
いまだはっきり出口の見えないデフレ経済の中で、
消費者が低価格の商品に求める価値は、
むしろ高まりつつある。
味、バラエティ、店内環境など、
あらゆる面において各社の奮闘は続いて行く。

その際に、最重点課題の1つとなるのが、
女性客をはじめさらなる幅広い顧客層の取り込みであることは、
おそらく間違いないだろう。

http://diamond.jp/articles/-/35251より


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