先日、興味深い番組をやってた。
日本に住んでる外国人がメイドインジャパンを祖国に持ち帰って紹介する番組だけど
家族を思う心がまず先にあって、それを手助けするのが日本製品みたいな感じ。
だから皆、かゆいところに手が届くような日本製品に驚いて感謝してはいるけど
一番嬉しいのはそれを持ち帰った人の「相手を想う心」で、それに動かされた感じだった。
その中で、私が特に興味深かったのは
孫がアメリカに住んでる認知症の祖母に会いに行くという話。
行く前に言われてた。
もしかしたら、祖母はあなたの事を覚えてないかもしれないと。
祖母は一度日本に来たことがあって、その時「こたつ」に感激していたので
それを持って行って、自分の事を思い出してほしいと願ってた。
でも、私はそれは難しいのではないのかなと思った。
私の家族にも似たような出来事があって
母が認知症みたいになり家族で交替で介護をしている時期があって
兄は仕事もあって頻繁には来れなかったけど、それでも協力してくれていたのだけど
ある日、母が兄に「あなたは誰?」と言った事があって
それが兄にとってはとてもショックだったらしい。
でも、私はそれは認知症だから仕方がないよと思ってた。
記憶を長く保存できない病気だから、たまにしか来ない兄は一番に母の記憶から遠ざかる。
昔から兄は実家にあまり来なくて、母は兄に来てほしいから
来れないのは嫁のせいだと文句を言ってギクシャクし
余計に兄は来にくくなり実家から遠ざかった。
思えば母が変わっていったのも幾分兄とも関係があって
介護で帰っている時に偶然母の日記を目にしたことがあって
「実家近くの道路を兄が歩いていると思って裸足で駆け出して
大声をかけたら違う人だったみたいで、
なんで自分はあんな事をしたのだろう?」と書いてあった。
それから、母は段々と変わっていった。
多分、母は兄に会いたくてずっと待っていたのかもしれない。
だけどたまにしか来ない兄を段々と受け入れられなくて心を閉ざしていったのかもしれない。
それが忘れるという結果になっていたのかな。
母は結婚して直ぐに自分の家族が東京に引っ越したので誰も知り合いがいなくて
友達にも裏切られたり、父の家族からも反対されての結婚だったのでいびられたり
子供だけが自分の心を癒す存在だったのかもしれない。
だけど私も長い間東京に住んでいたし、母はずっと寂しい想いをしていたのだと思う。
同じ頃に父の病気が発覚して、母は未来に孤独の不安を覚えたのかもしれない。
幸い、父は切らずに自分で大腸がんを克服して元気になったけど
母の容態は、悪化していった。
だから母の認知症については、家族みんなも関係していて
そうなる原因となる要素がそれぞれにあって、
最後に母の心の弱さが引き金を引いたのだと思う。
テレビの孫(アリスさん)も可哀そうだけど
2回しか会ったことがない孫の事を覚えてはいないだろうと思った。
13歳の少女に突き付けられた現実は、やはり厳しいもので
自分の事を解らない祖母が目の前にいた。
そのショックは、兄と似たようなものだったかもしれない。
でも彼女は頑張った。
滞在期間中になんとか思い出してもらおうと、天ぷらのお弁当を作ったり
日本を思い出すのでは?と学校の制服を着て見せたり、
自分に出来ることをいろいろとトライしてみた。
だけどそれでも覚えていない祖母の反応を目にしてくじけそうになるが
最後のこたつに望みを託した。
そしてもう一つ、この時彼女が動いた事があって、それが絵だった。
自分の記憶の中にある三歳時の思い出のシーンがあって
その場所を描いて探してもらったら、なんとか見つかった。
その景色を見てもう一度新たに絵に描きなおし、そこに付け足したものがあった。
それが記憶に残っている「祖母と母と姉と自分の笑っている風景」だった。
自分を抱っこしている祖母の笑顔。
それを見て思い出してもらおうと思った。
こたつに入って、足元が暖かくなり表情も柔らかくなった祖母。
そこでプレゼントした彼女の絵を見て、祖母はその記憶を思い出したのだ。
幸せで楽しかった頃の記憶。
彼女を「あなたはアリス。私の愛しい(孫)」と微笑んで言っていた。
最初にあった頃の祖母の表情とは違って柔和になっていた。
多分、アリスの自分に対する気持ちを一番に感じて
祖母は心が開いて行ったのではないかなと感じた。
人の心を動かす奇跡は「一生懸命に相手を想う暖かさ」なんだろうなと思った。
認知症だから会っていないと思い出せないと思い込んでいた私の心にも
そうじゃないんだと衝撃が走った。
どんな事ももう遅いという事はなく、最後は「心」が動かしていくのだと学んだ。
私だったら景色を写真に撮って見せていただろう。
でも彼女は時間をかけて自分で描いて、さらに過去の映像も書き足していた。
そこに込めた彼女の思いがヒシヒシと伝わってくる。
だから相手も心も開くことが出来たのかなと感じた。
それが一番印象深かった。
大切なものを思い出させてくれた13歳のアリスさん、ありがとう。