Colors of Breath

★オリジナルソング・絵・詩・写真・猫・心ブログ('07.11.4開始)★『Breath』音楽活動('11.9.4開始)

COLORSも16年目。

◆私のオリジナルソングを公開しています。(ヘッドホンorイヤホン推奨)◆世界に於ける日本の役割は原発技術を広めることではなく、自然エネルギーの活用技術を広め世界を牽引することじゃないのかと思う。◆イジメとジサツと…イジメがなければその子がジサツしない可能性は?限りなく100%に近いと思う。

エピソード2『底なし沼』(2)

2008-06-26 18:26:23 | 22.思い出物語


エピソード2

『底なし沼』(2)



(『底なし沼』へのご案内も併せてどうぞ)
(『底なし沼 』(1)も併せてどうぞ)


頭の中では自分に都合よく、自分の村まで真っ直ぐに繋がる道を勝手に作り上げている。ところがそんな空想はすぐさま覆されて、道はほぼ直角に、大きく左へ折れていた。(え?これじゃあの知らない村を、来た道を後戻りするのと同じじゃないか。全然近道じゃないかもしれない…)そんな不安がよぎった。今さら後戻りするのも得策とは思えず、不安なまま進んだ。

道はやがて一層、手や足で、絡みつくツル状の草を掻き分けながらの獣道に変わり、くねくねと蛇行し方向感覚が崩れそうだった。正しいかどうかは分からないが、不安ながら自分の村の方へ少しずつ近付いている気はした。まだ陽は落ちず、明るいのが救いだった。

子どもの感覚だから、何分歩いたか、どのくらいの距離なのかなんてわからなかった。思い返してみると、獣道に進み入って10分程度のような気もする。突然目の前から一まとまりの木が消えて、その中心から奥の方にどんよりとした水が見えた。道はその淵を回るように続いていた。淵と言っても、朽ちた倒木や、大きく引き裂かれたように折れた枝が覆いかぶさって、水と地面の境目がどこなのかわからないような状態だった。

いちいはどこかで耳にした底なし沼の話を思い出した。(底なし沼って、本当に底がないんだろうか。)素朴な疑問だった。良からぬ危険な匂いのする好奇心が頭を擡げた。すぐさまその辺に覆いかぶさり絡まっている枝から、できるだけ長そうなものを選んで、引っ張り出した。あちこち絡まった枝は、山の主に囚われているかのように、そう容易くは思い通りに取り出せない。少しぬめっとした、変な草や茸が生えた不気味な枝を力一杯引っ張った。きしむように引きずり出される枝は時々乾いた音を立てて折れながら、ずずっと、そしてやがて諦めたようにするっと足元に横たわった。

いちいは、横から出た細かい枝を払い一本の棒状にすると、足元に気をつけながら、澱んだ水に近付いた。そして、その枝の先端を、恐る恐る澱みの中に差し込んだ。木の棒はするすると、おそらく半分ほどが水の中に手応えもなく吸い込まれていった。恐怖からか好奇心からか自分では分からないが、少しぞくぞくした。更にこちらから向こう側へ棒は45度程の角度でずずっと沈んでいく。腕をいっぱいに前へ突き出して棒の端ギリギリを持ち、更に押し込んだ。もう棒を押し込む力が作用しない状態になっていたが、棒は水面からまだ1m位は出ていた。2.5から3メートル近くあったと思うその棒だが、今思うと、斜めに突き刺さっていたから、随分沈んだように見えていただけかも知れない。でも好奇心でわくわくしているいちいの脳にそん冷静な判断ができる筈もなく、ただもうその先を確認したいというその思いばかりに囚われていたのだった。

「もう少し…、もう少し…。」足先は無意識のうちにじりじりと、地面とも水面とも区別のつかない沼の際ににじり寄っていた。つま先にぐっと体重が掛かり力が入った瞬間だった。突然足元がぐらりと不安定に揺らいだ。いちいはとっさに飛び退いた。ふんわりとした腐葉土とは明らかに違う、その飛び退いた足跡には、じんわりと水が滲みていた。はっと冷静になると手に棒はなく、驚いた拍子に思わぬ力が加わったのか、さっきまで握っていたとは思えないほど離れた所にひょっこりと突き刺さっていた。もはや到底手の届きそうな距離ではなかった。本当に不思議なことだが、ついさっきまで持っていたと思えないほど離れた場所だった。

(次回につづく…)
 



 

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空37

2008-06-26 18:23:53 | 12.写真(空・雲・鉄塔)


空37






弧を描いて流線型に拡がる雲
広大な自然を両手で包み込んでいくよう…


気分は北海道かオーストラリアの大自然の上空




ほんとはよくある普通な町並みが
ちっぽけに忙しく存在してるんだけどね
それはそれで可愛い景色
人の一生懸命がとても純粋に思えてくるから



[Tsuyu no melody *9]
 

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エピソード2『底なし沼』(1)

2008-06-26 18:22:55 | 22.思い出物語


エピソード2

『底なし沼』(1)



いちいは幼い頃から、野山の探検が大好きだった。小学校に上がるまで、主に祖父母と生活していたせいで、自然に身に付いた習慣でもあったと思う。自然や植物に親しみ多く、そういうものを使った手仕事に長けていた祖父と共に、材料探しに山に入ったりするのが日常だった。
小学校に入ってからも、事情あって日中は祖父と生活を共にしていたこともあり、山に対する怖いもの知らずな行動はさらに磨きがかかった。たかだか7、8歳の子どものくせに、獣道さえあればさほどの恐怖も持たず踏み入って行くくらい、山歩きが平気な子どもだった。

集落の周りには人の手付かずの自然があちらこちらにあった。小さいのは1キロ四方から、広くなれば5~10キロ四方に及ぶ湧き水の湧くような山地もあった。学校から帰ってくるとランドセルを放り出し、弟や近所の幼馴染みの男の子や女の子2人3人と示し合わせ、村はずれの密林探検に繰り出して行った。

ある時、いちいは一人でふらふらと気の向くままに探検に出た。この先には何があるのだろうと、いつも気になっていた道があったからだ。その道は、高台にある自分の村から南へ坂を下り、大きな木がトンネルのように覆いかぶさって日光を遮断するように続いていた。暗いが、車が通れるほど広いみちで、ちっぽけないちいは、吸い込まれるようにその坂を下っていった。

間もなく、左手側に地形が明るく開け、数件の民家がある、隠れ里のような村落が現れた。あまり人気のない東西に長いその村の道を東へ歩いて行くと、北へ(左手側へ)向けて少し薄暗い山の中へと続く上り坂に出くわした。そろそろ陽も落ちる頃の帰巣本能ともいうべきか、この道を上って行けばきっと、以前自分の村で新しく見つけた細い道(その道は、村から明らかにどこかへ続いていたが、どこへ辿り着くかは、まだ未確認のままだった。)に繋がって、近道になっているに違いないと思った。根拠のない確信に導かれて、薄暗い山道を上り始めた。

(次回につづく…)





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