徒然なるままに。

徒然に小話を載せたり載せなかったり。

glance at ~ (~をちらりと見る)

2006年02月25日 | ゴーストハント
「…………」
 視線をモニターからちらりと移して見たものの有様に、麻衣はそちらに視線を向けたことを酷く後悔した。

 怖い。めっちゃ怖い。
 真っ黒な不機嫌オーラが今にも見えてきそうな勢いだ。
 しかも霊が出ているわけでもないのに、心なしか寒い。絶対に気温が下がっている。
 いつもは何の感情も移さない秀麗な顔が、今は唇に薄く笑みを貼り付けている――ただし、口元だけ。目は勿論笑っていない。
 それが、余計に……怖い。

 麻衣はさりげなく、本当にさりげなく、彼――ナルから一歩ずつ遠ざかった。
 触らぬ神ならぬ、触らぬナルに祟り無し。
 よほど先程の霊の態度が気にくわなかったらしい。ナルのプライドは富士山よりもエベレストよりも高い。

――なんで今ここ(ベース)には他に誰もいないんだっっ!

 心内で叫んでも、今は出払ってしまっているイレギュラーズが戻ってくる気配はない。
 普段機材の前に陣取っているリンは仮眠中だ。

 誰か、来てくれないかなあ……

 二人っきりなのは嬉しいけれど、でもこんな二人っきりは遠慮願いたい。
 ナルとは反対の方向に顔を向けて、麻衣は遠い目をしてみた。