佐々木加奈子は、須藤瞳の親友である。
それは周囲の誰もが認めるところだったし、当の本人たちもそう思っている。
瞳は美人だ。あの今の渡会月哉の隣に並んで、唯一見劣りしないほどの美しさを持っている。
その容姿のせいで最初はとっつきにくい印象を与えてしまっているけれど、瞳自身は明るく屈託のない性格をしている。同性からの人気も高い。瞳に告白して玉砕していった男共は両の指を軽く越える。
そんな瞳にようやっと彼氏が出来た。
件の渡会月哉である。
去年の暮れ頃まではそうでもなかったのだが、急に瞳に負けず劣らず―――というか、それよりも凄まじい美貌の持ち主である。
だが、こちらもやはり、中身は普通だ。
月哉といるときの瞳はとても自然で、幸せそうに見えるので、発破をかけた身としては、ああよかったなあ―――と思う日々である。
それはいいのだが。
加奈子の思うところ、瞳にはなにか秘密がある。
瞳にというか、瞳と月哉の2人に、というのが正しいのかもしれない。
どうも、去年の秋にあった事件以来、2人はその「なにか」をきっかけに親しくなったようなのだ。
何か事情があるのだろうし、去年の事件はある意味衝撃的だったし、その「秘密」についてあれこれ訊きたいとは加奈子は思っていなかった。
ただ、問題は―――その「なにか」が原因で、瞳が前よりも少し付き合いが悪くなったことなのだった。
「ねえ、カナ。今度の日曜、暇?」
休み時間に瞳にそう誘われて、加奈子はもちろん頷いた。
月哉と会っているとかいうならまだ納得するのが、どうやら彼だけではないらしい。ちょっとジェラシーだ。
「なになに、どうしたの。久しぶりじゃん」
「ごめんねー、不義理してて。反省してますっ。―――あのね、カナに会って欲しい人がいるの」
「へええ? どんな人?」
瞳はにっこりと笑った。
「とっても素敵な人」
確かに素敵だ―――と、加奈子は引き合わされた人を見て思った。
「瑠麻、紹介するわ。こちら、私の親友佐々木加奈子」
「はじめまして」
瑠麻―――アルマデティアは、女でもその凛々しさと美しさにくらりときてしまいそうな笑顔で、にこりと笑った。
どうやら、最近瞳が付き合いが悪かったのは、彼女が来ていたかららしい。
聞けば彼女は普段外国に暮らしていて、久しぶりに日本へ来ているのだとか。
加奈子は一応、納得した。色々と疑問は残るにしても。
それにしても―――と、加奈子はちらりと、その場にいた渡会月哉を見やった。
「……何。どうしたの、佐々木さん」
「んーん。なんか、さあ……」
加奈子は声を潜めた。
「……なんか、あの2人見てると、『百合』とか『宝塚』って言葉思い出すんだけど、あたしの気のせい?」
「…………………」
月哉は沈黙でそれを返した。
「あの人、絶対女にもてるタイプだわ……」
確かに美人だけど。
密かにため息をつく月哉の背を、激励の意をこめて加奈子は軽く叩いた。
それは周囲の誰もが認めるところだったし、当の本人たちもそう思っている。
瞳は美人だ。あの今の渡会月哉の隣に並んで、唯一見劣りしないほどの美しさを持っている。
その容姿のせいで最初はとっつきにくい印象を与えてしまっているけれど、瞳自身は明るく屈託のない性格をしている。同性からの人気も高い。瞳に告白して玉砕していった男共は両の指を軽く越える。
そんな瞳にようやっと彼氏が出来た。
件の渡会月哉である。
去年の暮れ頃まではそうでもなかったのだが、急に瞳に負けず劣らず―――というか、それよりも凄まじい美貌の持ち主である。
だが、こちらもやはり、中身は普通だ。
月哉といるときの瞳はとても自然で、幸せそうに見えるので、発破をかけた身としては、ああよかったなあ―――と思う日々である。
それはいいのだが。
加奈子の思うところ、瞳にはなにか秘密がある。
瞳にというか、瞳と月哉の2人に、というのが正しいのかもしれない。
どうも、去年の秋にあった事件以来、2人はその「なにか」をきっかけに親しくなったようなのだ。
何か事情があるのだろうし、去年の事件はある意味衝撃的だったし、その「秘密」についてあれこれ訊きたいとは加奈子は思っていなかった。
ただ、問題は―――その「なにか」が原因で、瞳が前よりも少し付き合いが悪くなったことなのだった。
「ねえ、カナ。今度の日曜、暇?」
休み時間に瞳にそう誘われて、加奈子はもちろん頷いた。
月哉と会っているとかいうならまだ納得するのが、どうやら彼だけではないらしい。ちょっとジェラシーだ。
「なになに、どうしたの。久しぶりじゃん」
「ごめんねー、不義理してて。反省してますっ。―――あのね、カナに会って欲しい人がいるの」
「へええ? どんな人?」
瞳はにっこりと笑った。
「とっても素敵な人」
確かに素敵だ―――と、加奈子は引き合わされた人を見て思った。
「瑠麻、紹介するわ。こちら、私の親友佐々木加奈子」
「はじめまして」
瑠麻―――アルマデティアは、女でもその凛々しさと美しさにくらりときてしまいそうな笑顔で、にこりと笑った。
どうやら、最近瞳が付き合いが悪かったのは、彼女が来ていたかららしい。
聞けば彼女は普段外国に暮らしていて、久しぶりに日本へ来ているのだとか。
加奈子は一応、納得した。色々と疑問は残るにしても。
それにしても―――と、加奈子はちらりと、その場にいた渡会月哉を見やった。
「……何。どうしたの、佐々木さん」
「んーん。なんか、さあ……」
加奈子は声を潜めた。
「……なんか、あの2人見てると、『百合』とか『宝塚』って言葉思い出すんだけど、あたしの気のせい?」
「…………………」
月哉は沈黙でそれを返した。
「あの人、絶対女にもてるタイプだわ……」
確かに美人だけど。
密かにため息をつく月哉の背を、激励の意をこめて加奈子は軽く叩いた。