徒然なるままに。

徒然に小話を載せたり載せなかったり。

菓子か悪戯か

2007年10月24日 | 金色のコルダ
※会話のみ



「月森くん、今日は何の日か知ってる?」
「今日?」
「うん、今日」
「今日…は、ああ、ハロウィンだな」
「当たり~」
「ハロウィンがどうかしたのか?」
「うん、だからね、trick or treat!」
「…………………、は?」
「だから、trick or treat?」
「あ、ああ、悪戯かお菓子か、お菓子、………」
「………」
「…………(悩)」
「…………」
「………あの、香穂子。今お菓子の持ち合わせがないんだが」
「うーん、じゃあ悪戯?」
「悪戯、………………」
「…………」
「…………」
「…………」
「………その、何をすれば良いのだろうか」
「何って、うーん月森くんがしたいこととか?」
「俺がしたいこと…?」
「うん、どうぞ?」
「………(赤面)」
「……どうしてそこで赤くなるの(つられて赤面)」
「いや、その……ところで香穂子」
「ん?」
「trick or treat?」
「え。何、反撃!?」
「そんなところだ」
「えーとえーと、あっ、はい飴玉!」
「………」
「………」
「………月森くん?」
「…いや、その。有り難く頂こう(ちょっと残念そう)」




えーいこのバカップル!(笑)
2設定だとハロウィンはスルーなので、無印で。
そしてよく考えたら逆だということに気がついた。
まあ月森だからいいや(いいんか)。
どうせ月森はハロウィンをよく知らないに違いない。

月森×香穂子@金色のコルダ

感傷的なワルツ

2007年09月14日 | 金色のコルダ
 本日は晴天、実に良い天気。ヴァイオリンがよく響きそう。
 今日はどこがいいかな。
 屋上、正門前、それとも森の広場?

 HRが終わってすぐに、鞄とヴァイオリンケースを手にする。

「香穂ちゃん、今日もヴァイオリン?」

 近くの席の友達が、目敏く聞いてくる。

「うん、良い天気だしね」
「でも、日差し強そうだよ~。日焼け止め、ちゃんと塗らないと後悔するよ!」

 う。それを言われると、ちょっと辛い。
 夏休みが終わって、始まった2学期。
 それなりに高校生らしく遊んだ夏休みだったけれど、ヴァイオリンは毎日欠かさず弾いていた。
 休みの間、学校だったり、近くの公園だったり、臨海公園だったり、森林公園だったり、場所は色々だったけれど。
 学校の練習室以外でも、そんな色んな屋外で弾いていたから、今年の私は結構日焼けしている。もちろん、ちゃんと日焼け対策はしてたけれど。

 ほんとうに、音楽家が併設されている学校の普通科に通っている、ただそれだけの、普通の女の子だった私。
 それがこの春、大きく変わってしまった。
 音楽の妖精、ファータを見てしまったから。
 少しもこれっぽっちも、触ったことも弾いたこともないヴァイオリンを渡されて、校内コンクールというある意味『戦場』に、私は放り出されてしまった。
 渡されたのは、『誰でも弾きこなせる』『画期的な』魔法のヴァイオリン。
 更にファータたちは、技術の足りない私に、色々なアイテムをくれた。つまりはドーピング。
 私は、まるきりのど素人。ヴァイオリン初心者。だからハンデが必要。
 ――ほんとうに?

 ……冗談じゃない、それが最初の感想だった。

 だって、ヴァイオリンは難しい。
 ピアノだって、チェロだって、トランペットだって、フルートだって、クラリネットだって、みんなそう。
 楽器を弾きこなすには、それなりの努力と、年月が必要なんだ。
 そうしてはじめて、『演奏』は得られる。
 ど素人だって、初心者だって、それくらいわかる。
 そして、私以外のコンクール参加者は、それなりの努力と、年月を積み重ねてきた人たちなんだ。

 それなのに、魔法のかかった、ドーピングした、ヴァイオリンを弾く私が同じステージで演奏する。
 これほど、彼らに失礼なことはない。

 だから嫌だと、そう言ったけれど。
 ……結局、コンクールに参加することになってしまって。
 ならば、と私は腹を括った。
 魔法のヴァイオリンを使うことも、ドーピングすることも、罪悪感はあるけれどコンクールで演奏するためにはそうするしかない。
 だからその代わりに、一生懸命練習しよう。
 魔法がかかっているけれど、ドーピングしているけれど、それでも私自身は賢明に練習したんだと言えるようにしよう。
 セレクションは計4回、これを頑張って乗り切って、終わらせよう。

 そう思ったけれど。

 コンクールが終わっても、私はヴァイオリンを終わらせることはできなかった。
 もう、音楽を手放すことはできない。
 音楽を、ヴァイオリンを――私は、こんなにも好きになっていた。


 HRが終わって人でごった返す廊下をぬけ、エントランスへ向かう。
 今日は練習室の予約を取っていないから、必然的に練習は屋外で、ということになるのだけど。
 どうしようかな。
 一応屋内の練習場所には音楽室や講堂というテもあるのだけど、やっぱり日陰のある森の広場がいいかな。音楽室はオケ部がいるし。
 エントランスを抜けて、外に出る。
 うん、森の広場に行こう。

 足を踏み出しかけて、止める。音楽科校舎、桜館を振り返った。

「日野? どーしたんだ、そんなところに突っ立って」
「うん、ちょっと……」

 これから部活のクラスメイトが、不思議そうに通り過ぎていく。
 構わずに私は桜館を――正確にはその桜館の一番上、屋上を睨む。

 音が、する。
 孤高で、研ぎ澄まされた、遥か高みを目指す音。

 ――行き先変更。
 私は一直線、桜館を目指した。



 桜館の階段を駆け上がって、屋上の扉の前で、深呼吸。息を整える。
 ノブを手にかけ少しだけ、ほんの少しだけ、音を立てないように開ける。
 それだけで圧倒的な音が流れ込んでくる。その音と、少し開けた隙間から、その音の発生源を探る。ここから見える範囲には、いない。
 もう少しだけ開けてみる。いない。
 慎重に屋上へ踏み出して、ドアを閉める。
 上を仰ぐ。
 音は上から響いている。そっと伺って、私は屋上の2階(という表現も変だけれど)で陰になっている場所を探して、座り込んだ。

 ヴァイオリンの旋律が、大空に吸い込まれていく。
 私の好きな音。
 彼の、ヴァイオリンの音。

 コンクールが終わっても、私はヴァイオリンを弾いている。
 まだ、明確な目標とか、そういったものがあるわけじゃない。
 将来はヴァイオリンで食べていけたらとか、付属の音大に行きたいとか、そういうのも全然考えていない。
 今はただ、ヴァイオリンを弾いていたい。だから弾いている。
 気に入った曲を練習している。
 気楽だけど、でもさしたる目標のない練習は実はちょっとだけ、つらい。
 だから彼が屋外で練習している音が聞こえたときは、なるべく聞きに来ることにしている。

 彼のヴァイオリンは、私の憧れであり、理想であり、目標だから。

 あんな風になりたい。彼のように、ヴァイオリンを弾きこなしたい。少しでも彼に近づきたい。
 だからこうして、彼の音をこっそりと聞きに来る。
 自分の目指すものを、確認するために。

 切ないメロディ。
 悲しみに身を切られるような、そんな「感傷的なワルツ」。
 彼の好きだという曲。
 そういえばコンクールの時に、「『感傷的なワルツ』位は弾けないと話にならない」と言われて、それでムキになって練習したんだっけ。
 それで私の「感傷的なワルツ」を聞いた彼が、驚いた顔をしていたのを覚えている。
 「君の解釈も悪くない」、そう言って、微かに笑ってくれたのも。

 ……久しぶりに「感傷的なワルツ」、弾こうかな。
 彼の音の補給も済ませたし、森の広場で練習しよう。
 私は立ち上がって、ドアに向かう。
 ドアノブに手をかけたところで、ふいに、音がとぎれた。

 ――え?

 思わず上を振り仰ぐ。
 コツコツと足音がして、私の顔に影が差した。

「――――、日野?」
「月森、くん」

 下をのぞき込んだ彼が私を見つけて軽く目を見張った。

「ええと。どうしたの?」
「その、人の気配を感じたような気がして――、君だったのか」

 人の気配を感じたくらいで、彼が演奏を止めるなんて。
 邪魔にならないように気をつけているつもりだったけど、悪いことしちゃったかな。

「ごめんね、邪魔しちゃったみたいで」
「いや、君が気にすることではない。――そういう君は? 練習しに来たのか」

 だったらすまない、こちらこそ邪魔をしていたのだろうか。
 私の手にしたヴァイオリンケースに視線をやって、知り合った頃に比べて大分棘の減った口調で、彼は言う。

「ううん、その、天気が良いから、来たくなっちゃって。
 そしたら月森くんがいたので、演奏聞かせて貰ってました」
「――そうか」
「それで、月森くんの『感傷的なワルツ』聞いてたら、私も弾きたくなっちゃって。
 森の広場で弾こうかな~、と思って、行こうとしたところに」

 月森くんが。
 一応、嘘は言ってない。言ってない部分も、多々あるけど。
 私を見下ろした月森くんは、何かを考えるように視線を彷徨わせた。

「……弾くのか? 『感傷的なワルツ』」
「うん、そのつもり。あ、でも月森くんの邪魔はしないから、安心してね!」
「――いや」

 うん?
 否定の言葉に、首をかしげる。

「良かったら、ここで弾いていくといい」
「え。で、でも……」

 邪魔はしたくないのが、本音なんだけど。

「いいんだ。――それに、久しぶりに君の『感傷的なワルツ』が聴きたい」

 私はあまりにも間抜けな顔をしていたらしい。
 月森くんが思わずといった風に吹き出した声を聴いて、我に返る。

「確かに、君の技術はまだまだだし、君の解釈と俺の解釈は違うが。
 ――だが、君の『感傷的なワルツ』は、悪くない。弾くというなら、俺は聴きたい」

 ……………。
 憧れのヴァイオリニストにそこまで言われて、弾かないなんてどうして言える?

「――つ、月森くんが、いいなら」

 精一杯、弾くまで。

 ふ、と微かに微笑んだ彼の笑みに顔が熱くなるのを感じながら、私は階段を上った。









未森の書く日野ちゃんは、
負けず嫌いのようです(笑)
この月森とは、1でのEDを迎えてません。
日野ちゃんの方は完全に月森が好きで、
月森の方は結構意識してる、みたいな感じ?


月森←日野@金色のコルダ(1と2の間)

散髪

2007年09月06日 | 金色のコルダ
「……よければ、土曜日――明日、一緒に練習しないか」

 帰り道、いつもの交差点。
 分かれ道であるそこまであともう少しというところで、月森が言った。

「うん、月森くんがいいなら、もちろん!
 『五度』のね、月森くんが言ってたハーモニクスが、やっぱりどうも上手くいかなくて……。よかったら、もう一度教えてくれる?」
「ああ、わかった」

 放課後2人で練習したのは、ハイドン作曲の「管弦四重奏曲『五度』第4楽章」。
 文化祭のコンサートで演奏しようと思っている曲の一つだ。
 ハーモニクスとは、通常の奏法よりも弦上に指を軽く触れさせて出す音である。
 春の校内コンクールからヴァイオリンを始めた香穂子は、表現力はあるものの、運指などの基礎的な技術がまだ追いつけていない。
 そのため、香穂子は同じヴァイオリンである月森によく教えを請うていた。
 音楽科の教師に聞いても良いのだが、アンサンブルに同じ楽器がいるのだから、練習しながら教えて貰えれば一石二鳥だ。それに、月森のヴァイオリンの技量は並大抵のものではない。師事を仰ぐにはぴったりの相手だった。
 ……もちろん、それだけが理由ではないのだが。

「月森くんに注意されたあと、一人で練習したんだけど……上手くいかないんだよねえ。
 こればっかりは地道な練習あるのみだっていうのは、判るんだけど………あ」
「どうした、日野?」

 思わず立ち止まって、香穂子は視線を彷徨わせた。

「………、ええと。ごめん、なんでもないの」
「そうは思えないが……何か気にかかることがあるなら、言って欲しい」

 真摯な表情の月森に、香穂子は困って眉根を寄せた。
 先ほど約束をしたばかりの土曜日に、用事があったことを思い出したのだ。だが別にその日でなくても構わない用事で、それを何やら心配してくれている月森に言うのは躊躇われた。

「……日野」
「ええと、あのね? ……その、美容院に行ってこようかなって、思ってたの、思い出して。
 別に、土曜日じゃなくてもいいから、いいんだけど」
「美容院に?」
「うん、そう。ちょっと、髪切ってこようかなーって」

 言うと、月森がそれは珍妙な顔をして、香穂子の長い髪を見つめた。

「…………切るのか?」
「切るって言っても、3センチくらいだよ。そんな、ばっさりとは切らないよ」
「……そうか」

 あからさまにほっとした表情で息をついた月森に、思わず笑みがこぼれる。
 ちょっと、嬉しい。

「そういえば、月森くんって、髪はどうしてるの?」
「どう、とは?」
「うーんと、例えば、美容院とか、床屋さんに行って切って貰ってる、とか」

 ああ、と合点がいったように頷く月森の横で、香穂子は遠い目をした。

「………自分で言ってなんだけど、床屋に行く月森くんって想像できない……」

 思わず呟くと、月森が微かに笑った。

「確かに、俺は床屋には行かない。……髪は、祖母に切って貰っている」
「へえ、そうなんだ」
「ああ。少し伸びたな、と思った頃に、声をかけてくれるから」
「そっかあ、いいねえ」
「ところで」
「ん?」
「その……どうするんだ? 俺は、別に構わないのだが」

 月森は、優しい。
 周囲からは色々と思われている彼だけれど、それは自分の不器用さを、傷つかないために、彼が貼り付けた盾で。

「ええとね。……じゃあ、美容院には午前中に行くから、午後からでもいいかなあ?」
「ああ、わかった」

 ……ほんとうは、人を気づかうことのできる、優しい人だ。
 そして。


 たどり着いた、交差点。

「それじゃあ、また明日ね、月森くん」
「ああ、また明日。……少し髪の短くなった君を、楽しみにしている」

 ……自分の気持ちを、まっすぐストレートに、言葉にする人だ。
 嬉しくて気恥ずかしくて、香穂子は顔を赤くして手をふった。






山なし落ちなし意味なーし。
書きたかっただけ!(爆)
お互いに片思いな2人。


月森→←日野@金色のコルダ2