徒然なるままに。

徒然に小話を載せたり載せなかったり。

get into trouble (面倒なことを引き起こす)

2005年12月26日 | スレイヤーズ
 “トラブルメーカー”

 この言葉ほど、彼女を的確に表した言葉はないだろう。
 ……とはいっても、この言葉だってほんの一部にしかすぎないのだけれども。

 どんがらがっしゃん!

「てんめえ、なにしやがる!」
「それはこっちのセリフよっ! あんたちょっとどーしてくれんのよ、あたしの昼食っ! これじゃあ食べられないじゃないのよっ!」
「何言ってやがるっ! ンなこといったらオレの昼食だってパアだ!」
「あんたの昼食なんてどーでもいいのよっ! んっんっんっ、どー落とし前つけてくれようかしらっ!?」
「なんだとーっ!?」

 ……なんというか。
 私の感想としては、「ああまたはじまったなー」という感じだろうか。
 リナが席を立ったテーブルでは、これ幸いとばかりにガウリイさんが食べ物をつめこんでいる。
 私はと言えば、別のテーブルで優雅に昼食中。相席しているのはゼルガディスさん。同じテーブルでなかったから良かったものの、これが四人で同じテーブルに座っていたら、目立つのが嫌いな彼は今頃逃げ出していただろう。
 ところでやっぱり優雅に食べている場合ではないかもしれない。リナの喧嘩が激しくなれば食事どころではなくなるかもしれない。

「よし、表に出ろ!」
「望むところよっ!」

 ……どうやらその心配はなくなったらしい。
 店の外へ出て行くリナの後を心配そうについて行くガウリイさんを見送って、アメリアはコーヒーを飲み干した。

get in touch with~ (~と連絡を取る)

2005年12月04日 | 影の王国
 瞳に電話をかけるために階段を下りる。
 彼女の家の電話番号は既に覚えてしまった。
 そんなにかけているわけではないが、いちいち見ながらかけるのも面倒くさい――というのはまあ、建前と言えば建前だ。
 受話器を手に取ろうとして、月哉は躊躇する。

(月哉様?)

 影の中の飛葉が訝しげに問いかけてくる。
 瞳に電話をかけるのはいい。
 いいのだが――。

 迷いを振り切るように、月哉は受話器を取った。番号を押し、暫く待つ。
 出たのは瞳の義母だった。

『――はい、須藤でございます』
「夜分遅くにすみません、渡会と申しますが瞳さんを……」

 久江の声に笑みが混じる。

『ああはい渡会さんね、ちょっと待ってくださいねぇ』
「………………」

 瞳に電話をかけるのはいい、いいのだが、電話に出る彼女の義母の態度がからかうような笑っているような面白がっているような雰囲気なのは何故だろう。少し居心地が悪い。
 まあ女子の家に男の自分が電話をするのだから、当たり前の反応なのかもしれない。
 そういうことにして、月哉は瞳が電話に出るのを大人しく待つ事にした。

get by (何とかやっていく)

2005年12月02日 | 少年陰陽師
 彰子は昌浩の部屋に入ると、大きく息をついて座った。
 安倍邸に居候を始めて早数ヶ月、彰子は今までとは180度違った生活をしている。
 藤原道長の一の姫、ゆくゆくは帝の后がねにと、蝶よ花よと生活していた頃は――それはたった数ヶ月前までの事なのだけれど――もちろん朝餉昼餉夕餉の支度などしなかったし、掃除も洗濯もしなかった。
 居候の身ではあたり前の事だし、体を動かす事は思ったより苦ではなかった。
 むしろ今までのように人を使う立場にいるよりも、こうやって働いている方が性に合っている気もしている。
 だから今の生活はとても楽しい。安倍邸の人々は皆彰子に良くしてくれるし、それに何より昌浩が傍にいてくれるのは大きい。
 それはいいのだが、家の仕事をすると言う事がこんなにも大変だとは思わなかった、と彰子はもうひとつ息をつく。女房がいない安倍邸の家の仕事は全て昌浩の母の露樹が行っていたという。すごい、と彰子は思う。彰子は未だに一人では食事の支度もままならないというのに。
 頑張らなくては、と思う。
 多分彰子はずっと、この安倍邸にいる事になるのだろうから。
 もう、東三条殿には――藤原道長の一の姫には、戻れないのだから。

 彰子はもうひとつ息をついて立ち上がると、部屋の隅に隠されていた傷ついた衣装を引っ張り出した。
 昌浩が夜警のたびに破れたりした狩衣や袴たち。
 これらを隠した当の本人――隠されていたとはいえ彰子は簡単に見つけてしまったが――の昌浩は今、宮中に出仕していていない。
 安倍邸での生活は大変だけれど楽しい。
 今までの生活は失ったけれども、彰子は自分が幸せだと思う。
 昌浩は今頃陰陽寮で直丁として働いているのだろうと思いながら、彰子は針を手に取った。

end up doing (最後は~することで終わる)

2005年12月01日 | G.A.
「こンっっの、朴念仁っっ!!」

 突如響いた怒声に、フォルテは目を見張って立ち止まった。
 ミルフィーユがケーキを焼いたというので相伴に預かろうと思って来たのだが、その声は当の向かっていた部屋から聞こえた。
 一体何があったのだろうと首をかしげてから再び歩き出すと、問題の部屋のドアが開いて、顔を真っ赤にしたランファが飛び出していった。
 覗いた部屋の中には、途方に暮れた顔の上司と同僚。
「……いったい何があったんだい?」
「なんていうか………ランファを怒らせちゃって」
 言って、まいったなーどうしよう、と頭をかく上司。
「そんなのは見りゃ判るよ。あたしが聞いてるのは何でランファを怒らせたのか、ということなんだけど?」
「いや、それが――オレにはさっぱり」
 これでは朴念仁と罵られても無理はない。フォルテは息をついて、一緒にいたはずの小さな同僚に視線をやった。
「ヴァニラ、どうなんだい?」
「私は、よく判りませんが―――けれど」
「けど?」
 赤い瞳が静かにタクトを見やる。
「今のはタクトさんが悪かったと、思います」
「……だとさ」
「うーん……」
 がしがしがしと頭をかいて唸る。
 おそらくタクトは本当に何故ランファを怒らせてしまったのか判らないのだろうし、それでいて真剣に何故なのかと考えているのだろう。
 だからこその朴念仁、なのだろうが。
「なんか、いつも結局怒らせちゃうんだよなあ……」
「……まあ、よく考えてみるんだね」
 けれどもこの男の事だから、結局わからないのだろうけれど。