あるメーリングリストで小児科の先生より教えていただきました。
とても素敵なエッセイです。
作者のエミリー・パール・キングスリーさんは
ダウン症の息子さんをもつお母様だそうです。
★★★
Welcome to Holland オリジナルバーション
オランダへ、ようこそ
作 エミリー・パール・キングスリー 訳 伊波貴美子
私はよく障害を持つ子供を育てるって、どんな感じか聞かれることがあります。障害児を育てるというユニークな体験をしたことがない人が理解して、想像出来るようにこんな話をします。
出産の準備をするというのは、すてきな旅行の計画をすることに似ています。例えば、イタリアへの旅。旅行ガイドをどっさり買い込み、現地での行動を計画します。ローマのコロシアム。ミケランジェロのダビデ像。ベニスのゴンドラ。簡単なイタリア語を覚えるかも知れません。とても、わくわくします。
そして、何ヶ月も待ちに待ったその日がやってきます。あなたはカバンを持って、いよいよ出発です。数時間後、あなたを乗せた飛行機が着陸します。スチュワーデスが来て、「オランダへようこそ。」と言います。
「オランダですって?」とあなたは驚きます。「オランダってどういうこと?私はイタリアへ行くはずだったのよ!ずっと前からの夢だったのに!」 しかし、飛行計画が変更になり、オランダへ着陸したのです。あなたはそこに留まらなければなりません。
ここで考えて欲しいのは、あなたは不快で汚くて、伝染病、飢饉や、病に侵されたひどい場所に連れてこられたのではないと言うことです。ただ、ちょっと違う場所なのです。
あなたは、新しい旅行ガイドを買わなければなりません。そして、全く違う言葉を覚えなければならないのです。また、今まで会ったことのない人々に出会うことになります。
ちょっと違う場所へ来ただけなのです。イタリアに比べて、時はゆっくりと過ぎていき、イタリアのような華やかさはありません。でもしばらくここにいて、深く息を吸いこんで、周りをみわたすと…オランダには風車があることに気がつきます…チューリップも。オランダにはレンブラントの絵もあります。
あなたの知人たちは、イタリアへ行ったり来たりして、とても楽しい時間を過ごしたと自慢します。あなたは残りの人生、こう言い続けるでしょう。「私もイタリアへ行くはずだったの。そのつもりだったの。」
イタリアへ行けなかった痛みは癒えることはないでしょう。失った夢はあまりにも大きすぎるのです。
しかし、いつまでもイタリアに行けなかったことを悔やんでいると、オランダのすばらしさや、美しさを楽しむことは出来ないでしょう。
http://www.geocities.jp/misakidsjp/holland.html