次長課長の河本の母が、生活保護を受けていた問題がありました。自分の息子が次長なり課長なりしているのだから、母親は税金のお世話にならずに息子から援助を受けるべきでしたね(笑)
これについて、あまり民法的視点から論じているものを見ないので、少しばかり民法的観点から、お前を食わせる生活保護はねぇ!問題について今さらながら考えてみたいと思います。
民法では877条以下で、扶養義務について定めています。民法上、直系血族および兄弟姉妹は当然に扶養義務を負うものとされています。また、3親等内の親族間であっても、特別の事情が存在する場合には、家庭裁判所の審判により扶養義務を負う場合があります。
河本の場合、問題になったのは、子が老親を扶養する義務についてです(親族扶養)。この場合において子が老親に対して負う義務の程度は、生活扶助義務であるといわれています。これは、自分(子)の身分相応の生活を犠牲することなく、権利者(老親)の最低生活を支援すれば足りるという程度の義務のことです。
したがって、河本には民法上、自分の経済力をもって母親の生活を援助する義務があったということになります。
ここで問題になるのが、民法上の扶養義務(これを私的扶養といいます。)と生活保護等の社会保障制度(これを公的扶養といいます。)では、一体どちらが優先して適用されるのか、ということです。このことについて生活保護法4条2項は以下のように規定しています。
「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶養は、すべてこの法律(生活保護法)に優先して行われるものとする。」
すなわち、私的扶養が可能であればこちらが優先し、公的扶養は私的扶養が不可能な場合に限りなされるものであるということです。これを公的扶養の補充性の原則と言ったりします。
私的扶養が家族をはじめとした血のつながった者同士での扶養であるのに対し、公的扶養とは赤の他人の税金で生活の援助を受けるものなのだから、この原則は当然のものと言えるでしょう。
よって、河本は十分な経済力を有し、母親を支援することが可能であったのだから、河本の母は、河本との親子関係が絶縁状態であったなど特別な事情のない限り生活保護を受給する資格は本来はなかったのです。
したがって、彼女の受給した金銭は、いわば不当な利得として返還義務を負うべきであると、個人的には考えています。この場合、資力等を考慮すると、返還義務を負うのは河本本人ということになるでしょう。
また、河本の母親も、行政に生活保護を請求するのではなく、まずは息子に援助を頼むべきだったのです。これは民法上、扶養請求権として承認されていますし、扶養がなされなかった過去の分まで遡って請求することが可能と解されています。
このように、民法的観点から考えると、河本の母が受給していた生活保護は扶養のお金ではなくて、不要なお金だったということになり、生活保護と民法上の扶養義務との関係からして、不当な利得を得ていたということができそうです。
これについて、あまり民法的視点から論じているものを見ないので、少しばかり民法的観点から、お前を食わせる生活保護はねぇ!問題について今さらながら考えてみたいと思います。
民法では877条以下で、扶養義務について定めています。民法上、直系血族および兄弟姉妹は当然に扶養義務を負うものとされています。また、3親等内の親族間であっても、特別の事情が存在する場合には、家庭裁判所の審判により扶養義務を負う場合があります。
河本の場合、問題になったのは、子が老親を扶養する義務についてです(親族扶養)。この場合において子が老親に対して負う義務の程度は、生活扶助義務であるといわれています。これは、自分(子)の身分相応の生活を犠牲することなく、権利者(老親)の最低生活を支援すれば足りるという程度の義務のことです。
したがって、河本には民法上、自分の経済力をもって母親の生活を援助する義務があったということになります。
ここで問題になるのが、民法上の扶養義務(これを私的扶養といいます。)と生活保護等の社会保障制度(これを公的扶養といいます。)では、一体どちらが優先して適用されるのか、ということです。このことについて生活保護法4条2項は以下のように規定しています。
「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶養は、すべてこの法律(生活保護法)に優先して行われるものとする。」
すなわち、私的扶養が可能であればこちらが優先し、公的扶養は私的扶養が不可能な場合に限りなされるものであるということです。これを公的扶養の補充性の原則と言ったりします。
私的扶養が家族をはじめとした血のつながった者同士での扶養であるのに対し、公的扶養とは赤の他人の税金で生活の援助を受けるものなのだから、この原則は当然のものと言えるでしょう。
よって、河本は十分な経済力を有し、母親を支援することが可能であったのだから、河本の母は、河本との親子関係が絶縁状態であったなど特別な事情のない限り生活保護を受給する資格は本来はなかったのです。
したがって、彼女の受給した金銭は、いわば不当な利得として返還義務を負うべきであると、個人的には考えています。この場合、資力等を考慮すると、返還義務を負うのは河本本人ということになるでしょう。
また、河本の母親も、行政に生活保護を請求するのではなく、まずは息子に援助を頼むべきだったのです。これは民法上、扶養請求権として承認されていますし、扶養がなされなかった過去の分まで遡って請求することが可能と解されています。
このように、民法的観点から考えると、河本の母が受給していた生活保護は扶養のお金ではなくて、不要なお金だったということになり、生活保護と民法上の扶養義務との関係からして、不当な利得を得ていたということができそうです。