HonuのMacDogMusic部屋

Macと愛犬と音楽を連れづれに

くろねこちゃんとベージュねこちゃん

2012年05月19日 | 演劇

 新進気鋭の谷賢一率いる演劇ユニットDULL-COLORED POPの仙台公演を拝観してきました。実は小劇団にありがちな独りよがりのドロドロでどぶろくちっくなのでは、とちょっぴり不安だったのですが、まさに『人間の最も暗くグロテスクな一面を、あくまでポップに描きたい、家族の輪郭を問い直す、ノラ猫どもの「戦う会話劇」』(パンフ)。いやあ、一般ピープルに寄り添うように、饒舌な心理葛藤劇薬として見事に進化してました。

『父が死に、母は見えない猫を飼い始めた。母・よし子、61歳。くろねこちゃんとベージュねこちゃん。煙草の匂いの消えた実家は発泡スチロールみたいに荒涼として、僕は知らない。僕は知らなかった、幽霊みたいな自分たちの正体を。妹と口をきくなんて、一体何年ぶりだっけ?・・くろねこちゃん、どこにいるの? ベージュねこちゃん、どこにいるの?母さんそれ猫ちがう、それ何だ、何だろうこの素敵な世界は!』(パンフ)

 2匹の猫がありがちな「天使と悪魔のささやき」役ではなく、軽く時制をワープさせ母親の演者とするりと入れ替わることで、見る者に心地よい混乱と視点の転換を与え、同一視サッカリンを取っ払ってくれる。「これってあるよね。ちょっと間違えば誰だって起こりえるし、たまたまうまくいったけど、そんな気持ちなった瞬間あるよ」などと疑い得ない現実なのだと錯覚させておいて、だから皆さん、どう考えますかと問題提起を垂れるのが、いにしえの演劇。
 ところが、今や現代人は、ぼくらの主観をドクサたらしめる仏壇の客観とか共同幻想から身を引いて、すっかりしょぼくれている。さても、どうやら、幕前の天国ホスピタリティに包まれた瞬間にくらっときた私にとっては、ビターな胎内回帰体験やら偽記憶を味わいたいそんなあなたに間主観性1000mg配合の精神安定剤なのか、こやつは・・の感しきりであった。

 高校のPTA講演会や演劇鑑賞会などにもどんどん滲出して教育関係者&当事者の皆さんを大いに、くらくらさせてやってください。思考と感情の閾のツボをきゅーと突いてくれた洒脱な主宰者&芸達者な団員さん方、今後益々の調略いや跳躍を期待します。
※観劇中、思わず下記役者さんがオーバーラップしました。
・高畑淳子風よろけがうまい母親・・平幹二郎
・リアル穂積隆信のように善人仕立てな述懐が得意な父親・・穂積 隆信
・カットボールを覚え立ての息子・・(人間の条件の)仲代達也
・疑惑シリーズぽい息子の妻・・夏目雅子
・一見直情径行のような娘・・(人間の条件の)中村玉緒
・田中美佐子似のキュートな猫・・10代の加賀まりこ
・何やらスパイシーな猫・・20代の野際 陽子
・もろKABAちゃんすぎる家政婦・・市村正親

http://www.dcpop.org/index.html



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